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かしまし少女、二人

女魔法使いがエルフに対しての接し方を考えるようになってから少しの時間が流れた。
エルフの観察という名目上男の傍に残り、まるで通い妻のように毎日彼の家を訪れる女魔法使い。そんな彼女に最初は怯えていたエルフであったが、日が経つに連れて自分の居場所を奪われそうになる危機感を覚え始め、とうとう彼女に対して女同士の戦いを挑むまでになった。

エルフ「――もう、限界です! 女魔法使いさんはどうしてそう男さんの身体にベタベタベタベタと触れようとするんですか!
 そもそも、男さんの隣は私の定位置なんです! 女魔法使いさんの場所じゃないんですッ!」

頬をぷくりと膨らませて、女魔法使いに対して怒鳴るエルフ。幼いながらも、自分は男の彼女だというプライドがあるのか、自分以外の女が男の身体に対して触れるのをとても嫌がった。
普段であれば多少の嫉妬を抱くだけで、我慢する彼女であるのだが女魔法使いのあまりにも過剰な男への接触に我慢の限界が来たのだろう。だが、怒りを顕にする彼女の姿も端から見ていればなんとも微笑ましい光景である。

女魔法使い「全く、何を言い出すかと思えば……。
 いいですか? そもそも先生の彼女だとあなたは言い張りますが所詮は〝彼女〟です。今はお互いに気持ちが通じ合っているのかもしれませんけれども、そんなものは時間の経過と共に冷めていくんですよ。
 仕事の多忙、気持ちのすれ違い、より魅力的な異性との出逢い。理由は様々ですが結局のところ彼女なんてものはそんな理由ができてしまえばすぐに気持ちが移ろいでいくものです。
 その点、私は先生に家族と言ってもらってます。家族というのは切っても切れない関係です。その絆の強固さと言ったら彼女なんてちっぽけな存在とは比較するまでもなく強大なものなんですよ」

魔法使いとして蓄えてきた知識を駆使し、真っ向からエルフを論破しにかかる女魔法使い。だが、エルフもエルフでやられっぱなしでいるわけではなく、理論を振りかざす女魔法使いに対して反撃に出る。

エルフ「ふ、ふ~んだ! そんなの所詮負け犬の遠吠えですよ~。女魔法使いさんは私と違って男さんに選んでもらえなかったから悔しくてそんなこと言うんですよね~。
 いくら難しい言葉を並べたところで私には叶いませんよ~」

事実だからこそ強い意味を持つ正論をかざすエルフ。これが男関係でなければ女魔法使いも冷静に反論を述べ、相手をへこませるのだが、男にエルフが選んでもらっているという事実は彼女の癇にやたらと触るのだった。

女魔法使い「言うじゃないですか。そこまで言うのなら実力行使で決着をつけてもいいんですよ?」

ジロリとエルフを睨みつけ、脅しをかける女魔法使い。だが、エルフもいつものように引くつもりはないのか女魔法使いの挑発に乗った。

エルフ「受けて立ちます! 今日こそはどっちが男さんの横に立って共に歩くのが相応しいのか白黒はっきりさせようじゃありませんか!」

お互いに相手を睨みつけ、威嚇し合う二人。膠着状態が続き、お互いにその場から動かない。
だが、そんな状況も天の声ならぬ男の一声によって打ち崩されることになった。

男「うん、二人が争うのはもう見慣れたから諦める。でもね、いい加減に僕の腕からどいてくれないかな?
 いったい僕はいつまでベッドの上で二人の身体に腕を押さえつけられて寝てなきゃならないの?」

起きて早々、二人の少女が自分のために争うという、世の男からすればまるで夢のような出来事に遭遇した男であったが、彼の口からはこのやりとりに呆れて出てきた言葉と深い深い、溜息が吐き出されるのみであった……。

男「それで、決着をつけるんだっけ? それは構わないけどここでやるの?」

男の懇願が通じたのか、エルフと女魔法使いはベッドから出て行った。そして、男も含めて三人で一階に降りた。だが、相変わらず二人の間にはバチバチと対抗心の火花が飛び散っていた。

エルフ「はい! 今日という今日は女魔法使いさんに男さんと私の関係をキッチリと示してやるんです!」

女魔法使い「などといっていますが、安心してください先生。先生の傍に必要なのは私だということをこの駄エルフに教えてやりますから」

エルフ「駄エルフって……。言いましたねぇ! この、このぉ……ペッタンコ! 私より年上なのにペッタンコ!」

女魔法使い「ふ~ん、だからなんだというんですか? 生憎と私は自分の身体について侮辱されても気にしませんから。だいたい、そんなものにこだわるなんて子供な証拠ですし……」

エルフ「へえ~そうですか。……男さん! 男さんは胸がある女性とない女性どちらがいいですか?」

急に話題を振られた男は勘弁してくれという気持ちで聞かなかったふりをしていたが、ググッと顔を近づけて返答を迫るエルフに根負けしてとうとう反応を示した。

男「いや、別に僕はどちらでも……」

当たり障りのない答えを返し、難を逃れようとした男であったが、エルフの追撃が彼に向かって飛んでくる。

エルフ「だ、だったら女魔法使いさんと女騎士さんだったらどっちの方がいいんですか?」

答えを濁す男に今度は二択で迫るエルフ。さらに、彼女と対立しているはずの女魔法使いも興味なさげな態度を取りながらも、チラチラと視線だけは男の方へと向けて内心気にしている素振りを見せていた。

男(う、う~ん。本当にどっちでもいいんだけど、ここで女魔法使いって答えるとエルフが落ち込むだろうし、女騎士って答えたら女魔法使いが落ち込むことになる。もう、どっちを選んでも詰みなんだよな……)

そう考える男であったが、彼に向かって期待の眼差しをぶつけるエルフと、そわそわとしながら控えめに、それでいて答えを待つ女魔法使いたち二人の様子を見て、答えるわけにもいかないと悟る。

男(でもまあ、こんなこと今まで深く考えたことなんてなかったけど、ようは僕が今まで好きになった人たちがどうだったか考えればいいんだよね)

その時、思う男の脳裏に浮かんだのは三人の女性の姿だった。
一人は女隊長。男にとって初恋の相手であり、同時に初めてキスをした色々な意味で忘れることのできない女性だ。
二人目は女騎士。彼女とは恋をしたというわけではないが、戦時中の彼女とのある出来事は彼の中で彼女への絆と共に深く刻まれている。
三人目は旧エルフ。彼女はこの中でもさらに特別で、亡くなった今でも忘れることができず恋焦がれているといってもいい相手だ。
その三人に共通することといえば、皆胸が一般的な女性のサイズと同じかそれ以上だったということだ。
結論をいえば、男は胸の大きな女性をこれまで好きになってきたということになった。

男「えっと、これはあくまでも個人の好みであって、そうじゃなきゃいけないとかないからその点だけは誤解しないでよ?」

エルフ「はい!」

女魔法使い「……はい」

男「どちらかとね、どちらかといえば……女騎士かなぁ?」

その答えを聞いた瞬間二人は全く逆の反応を見せた。
エルフは歓喜し、喜びのあまり飛び跳ねた、対して女魔法使いはというと、まるでこの世の終わりかのように、今にも泣きそうな顔をしていた。

エルフ「えへへっ。どうです、女魔法使いさん。男さんは胸の大きな女性が好きなんですって~。残念でしたッ!」

腕を組み、誇らしげに胸を張りながら女魔法使いに対して勝ち誇った様子を見せるエルフ。そんな彼女の態度に女魔法使いは本当に苛立ったのか、ギリギリと歯を噛み締め、眉間にしわを寄せていた。それはもう今すぐにでもエルフを消し炭にしそうな雰囲気であった。
 そして、その様子を傍で見守っている男の胃はキリキリと悲鳴を上げていた。

女魔法使い「……言っておきますけど、あなただってペッタンコなんですからね。つまり、立場的にはあなたも同じなんですよ!」

口では胸がないのを気にしていないようなことを言っていても、男が胸がある女性の方が好みという事実がショックであったのか、女魔法使いは肩を震わせながらエルフに反論する。

エルフ「そんなことありませんよ。だって私はまだ成長途中ですから! ミルクもいっぱい飲んでいますし、ここ最近ちょっとずつですけど大きくなってるんですから!」

男「ブッ!」

ここに来て予期せぬエルフのカミングアウトに少し前からこっそりと二人の傍を離れ、調理場でコップに入れた水を飲んでいた男は、思わず口に含んでいたそれを吹き出した。
確かにエルフが言うように彼女を引き取った時に比べれば多少はその大きさにも変化はあったのは事実である。
そのことに気づき、そんなところをいちいち覚えている自分が恥ずかしくなり、男は赤面しながら思わず顔をそらした。

エルフ「この調子なら数年後には女騎士さんくらいの大きさにはなるはずですから! ……って、あれ? 男さん、どうかしました?」

男「いや……なんでもない。ただ、この話はもう終わろうか」

赤くなった顔を見られる前にと男は一人自室へと戻ろうとする。だが、その様子に気がついた二人がすぐさま彼のそばに駆け寄り両脇をそれぞれガッチリと両腕で押さえ込む。

エルフ「ちょっと、女魔法使いさん。決着は着いたじゃないですか! 男さんは胸のある女性が好きなんです! 私のほうが胸が大きいんですからもう男さんに触らないでください!」

女魔法使い「ほとんど変わらないサイズなのに何を言ってるんですか、あなたは? だいたい現状なら私のほうがサイズが大きいに決まっています。何を勝手にあなたの方が大きいなんて決め付けているんです?」

エルフ「もう~。ホントに諦めが悪い人ですね! いい加減男さんから離れてください!」

女魔法使い「あなたこそ! 私は今から先生と一緒に魔法に関する書物を読むんです! 魔法に理解のないあなたは邪魔になるからどこかに行っててください!」

再び左右で始まる争い。一人でいられる時間がほとんどなくなった男は心の中で思う。

男(はぁ。しばらくこんな状況が続くことになるのなら旧エルフのところにでも行って一人でのんびり過ごそうかな……)

結局、この時の男の考えはそれからすぐに行動に移されることになるのだった。

エルフ「……そ~っ」 男「こらっ!」 after story かしまし少女、二人
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趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
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     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
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好きな映画:プラダを着た悪魔
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好きなゲーム:キングダムハーツ
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