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前哨戦

一次試験から一夜明け、現在ケインとフィードはハイル城の中庭に来ていた。二次試験に挑むため、指示があるまで待機をしている二人であったがその姿は対照的だった。

「おい、本当に大丈夫かケイン?」

「だ、だいじょう……ぶ」

 息も切れ切れ、身体のあちこちに包帯や湿布を張り、どうにかこの場に立っているケイン。昨日の疲労や怪我のせいで彼は今にもその場に倒れ伏しそうなほどだった。
 そんな彼に手を貸し、身体を支えるのは彼とは違い気力に満ち、目立った傷も見られないフィードだった。

「ごめん、フィード。助けてもらっちゃってるね」

 申し訳なさそうに言うケインにフィードは照れくさそうに頬を掻きながら答える。

「気にするな。ここまで関わってきたんだ。このまま無視して何かあった方が寝覚めが悪い。それに……」

 と、続きを口にしようとしたところでフィードはそれを言うのを止めた。彼の生き方があまりにも真っすぐで、つい目を逸らしたくなったからだ。

(それに……俺はお前みたいな生き方は嫌いじゃないからな)

 似たような生き方をしてみようとして、やはり最後には血なまぐさい殺し合いの世界に戻る事になった彼にとって、ケインの生き方は眩しく、直視できるようなものではなかった。

「ははっ。やっぱりフィードはお人好しだね」

「かもしれないな」

 痛みを堪えながら笑みを浮かべるケインに思わずフィードも微笑み返した。できることなら、彼には騎士団試験を合格してもらいたいと思っているのだろう。
 この試験の当事者でない民衆たちがこの光景を見たのなら、二人の友情に僅かながらでも心を温める事になっただろう。だが、当事者である他の受験者からしてみれば彼らはこの場に相応しくない不純物であった。

「なんだ、あいつら? 本当にこの試験に助け合いだなんて馬鹿らしい。自分が騎士になるのが一番じゃねえか」

「まあ、美しい友情なんて泣かせるものだろうけど、それで試験に落ちたなんて事になったら本末転倒だよね」

「いいんじゃねえの。助け合いなんてしたところで評価に繋がるわけじゃねえし。好きにさせておけよ」

 一部肯定的な意見があるものの、それは自分には関係のないからそう言っているだけである。彼らとて試験に受かりたいのだ。そのために、他を切り捨ててでも自分を第一に考えて試験に臨んでいる。そのため、この場に至っても助け合いをしている彼らを見ていると自分たちが否定されているように思えてならないのだ。だからこそ、反発し、助け合いをするなどおかしいと口にするのだ。
 苛立とも、嫉妬とも取れるその態度が行動を伴おうとし始めようとした時、彼らの前に現れた騎士によって、ついに二次試験の説明が行われ始めた。

「さて、既に人数は揃っているようだな。では、二次試験を開始する。
 二次試験では君たちの実力を真の意味で確かめさせてもらう。我が騎士団から選ばれた試験官相手に戦ってもらう。
 もし、騎士達に勝てるというのならその場で二次試験は突破とする。だが、君たちの相手となる試験官は各隊でも指折りの実力者だ。そうそう勝てるとは思わない事だ。
 だからこそ、この試験では勝敗はそこまで問わない。もし、負けたとしても試験官となった騎士が求めている合格項目を満たしているのなら合格を受け渡されることもあるだろう。
 この試験における禁止事項は特には無い。負けを認めたいときは「参った」と一言言えばいい。それ以外は意識を手放した時点で試験を止めるものとする。
 では、今から順に三名ずつ名前を呼び、それぞれにあてがわれた試験官と戦ってもらう。
 ……準備はいいか?」

 その言葉に受験者一同の空気が一斉に張りつめた。いよいよ、実際の騎士達と戦える。騎士を目指す彼らにとって、目標でもあり先達でもある彼らとの戦いは思うところがあるのだろう。
 そんな彼らの空気を肌で感じ取りながら、フィードは周りを見渡す。見れば、いつの間にか中庭には十数名の騎士達が存在していた。
 おそらく、彼らが試験官となる騎士達なのだろう。悠然とした態度で受験者の闘争心を受け流している。

「おいおい、やる気満々じゃねえか! 上等! そんくらいの気概じゃなきゃな!」

「ふん、この試験を通してせいぜい自分の底の浅さを思い知るんだな」

 ……中には一部受験者と同じように闘争心を燃やしている騎士もいたが。

「では、最初に試験を受ける三名を発表する。ルーブ、ルイア、ケイン。三名はこちらへ来い」

「えっ!」

 思わず、フィードの口から驚愕の声が零れ出る。試験の最後の方までケインが休めればもう少し体力も戻ると考えていたが、こうも早く呼ばれては回復も何も無い。現在立っているのがやっとの彼では試験なんてとてもじゃないが受けられないし、ましてや試験官の合格項目を満たす前に勝手に意識を手放して試験を終えるのが見えている。

「いいんだ。頑張るよ……」

 そんなフィードの考えを見透かすように、ケインは支えであった彼の手を手放し、騎士の元へと向かって行く。自身の元を離れたケインをもはやフィードは見守る事しかできないのだった。


 広大な中庭にてそれぞれの相手となる騎士の前に立ち、受験者達は自身の武器を構えていた。始まりの合図はまだ出ない。
 ドク、ドクと心臓の鼓動が聞こえてくるようだ。試験を今受けている当人はもちろんのこと、それを見守っている他の受験者達もまた緊張していた。
 実際の騎士の強さがどれほどのものなのか、他の試験者がどれほど太刀打ちできるのか、そしてそれと比較して自分は歯が立つのかという考えが彼らをこうも硬くしているのだろう。
 だが、そんな中で一人。ケインだけはそのような事を考えている余裕が無かった。なぜなら今の彼は既に風前の灯火に等しく、軽く小突かれただけでも意識を手放してしまう可能性があるからだ。
 だから、持っていた自信の愛剣を地面に立て、添え木のようにしてどうにか身体を倒れないようにしていた。
 そんな彼の前に立つのは先程受験者の闘争心に刺激されていた騎士の一人だった。栗色のはねた髪をし、鋭く釣り上がった瞳。見た目からは騎士というより、街にいるゴロツキのような印象を与える青年だった。自分よりも少し上の年頃の騎士。今から戦える事を心底喜んでいるような笑顔はケインにとっては心の重しが増えるだけのものであった。
 そんな彼と目を合わせて対峙する事しばらく。ついに試験を見守る騎士が合図をだそうとする。それを見計らったかのように目の前の騎士がケインに声をかける。

「よう、あんた。俺は第七隊副隊長のアイルっていうもんだ。今からてめえの試験を担当する」

 試験を始める号令が周りに響く。ケイン以外の二人が一斉に試験官に向かって駆け出す。一拍遅れてケインも今の自分にできる最速でアイルへ向かう。

「満身創痍の中試験を受けようって気概は立派だと認めるぜ! そういう諦めない根性は俺は嫌いじゃねえ」

 アイルの胸元に向けて全力で剣を突き込む。その剣は隙だらけのアイルの元へ一直線に吸い込まれていった。

「だが、だからといって手を抜くほど俺は甘い奴じゃないぜ!」

 しかし、その剣がアイルの胸を覆う鎧へと達しようとする直前、凄まじい衝撃とともに剣は宙へと舞った。驚くケインをよそ目にアイルは余裕の表情を崩すことなく笑顔を貼付けたままがら空きのケインの鳩尾に前蹴りを繰り出した。

「ゲフッ!」

 胃液を吐き出しながら地を転がるケイン。そんな彼の姿に思わず視線を逸らす他の受験者達。アイルはその光景をただジッと見つめるだけで追撃をしようともしない。倒れながら僅かに顔を上げアイルを睨みつけながらケインは思う。

(追撃する必要も僕には無いってことなのか!)

 単純な実力差、そして今の一撃でもう終わりだと思われていることが悔しくてケインは砕けるほどの力で歯を噛み締めた。
 必死に起き上がろうとする彼の前に先程打ち跳ねられた愛剣が突き刺さる。それはもう向かって来るなといっているようにも、早く剣を手に取りかかってこいとも言っているようにも思えた。
 時間をかけ、身体に残る僅かばかりの力を絞ってどうにか立ち上がる。そして、一歩一歩ゆっくりとアイルへ向かって突き進む。そして彼の前に辿り着き、今にも尽きてしまいそうなほどの力でどうにか剣を振りあげ彼に向かって降ろした。
 よろよろとした一撃。それをあっさりと防ぎ、アイルは再びケインに言葉をかける。

「容赦はしないっていったよな。またわざわざここまで来たって事は痛い目を見るってわかっているんだよな」

 そう言ってケインの剣を流し、自身の剣の柄をケインの脇腹に突き刺す。鈍い音が聞こえ、その場にケインが崩れ落ちる。

「なあ、さっさと諦めた方がいいんじゃねえか。こんな痛い思いをしてまで騎士になる理由がお前にあるのか? 俺たちがしてる事なんてほんの序の口。実際に騎士になれば命を落とす可能性もあるし、今以上に痛い思いをするなんてこともあるんだ。
 そうまでして、お前が騎士を目指す理由はあるのか? 普通に生きて、普通に死ぬ人生じゃ駄目なのか?」

 ゲホッ、ゲホッと血痰を吐き出しながらケインはその質問に答えようとする。既に身体は限界を迎えており、言葉を紡ぐだけでも精一杯だった。

「僕、は……騎士になる。僕、を助けてくれた、騎士のように。だか……ら、ぜったいに、諦めない。たとえ……しんでも、だ!」

 最後の抵抗と言わんばかりにアイルに向かって言葉を吐き出すケイン。見れば、他の受験者は既に試験官である騎士によって意識を奪われており、残っているのはケイン一人だった。だが、それももう終わりが近い。
 ケインの答えを聞いたアイルは頬を膨らませた後、ニヤニヤと口元を歪め、

「最高だぜその答え」

 そう言ってケインの後頭部に手刀を放ち、意識を奪った。消え行く意識の中、ケインが最後に聞いた言葉は、

「ああ、そうだ。合格だよ、お前」

 自分が二次試験を突破したというものだった。


 意識を失った三人が他の騎士達によって運ばれて行くのをフィードは見守っていた。最後にケインが相手の騎士と何か話していたようだが、それが一体なんだったのかは聞こえなかった。
 試験の進行役の騎士が相手となった騎士たちから話を聞き、今の受験者達の合否を他の受験者達に告げた。

「ただいまの三人で合格者は一名。ケインだ。残りの二人は不合格とする」

 その発表を聞いて受験者達の間にざわめきが起きる。ほとんど、何もできていないケインがどうして試験に合格できたのか。少なくとも他の二人はある程度まともに戦い、自身の実力を見せていた。にもかかわらず不合格という事は、やはりこの試験は実力だけが全ての試験ではないという事である。
 ざわつく受験者達を静まらせるため、進行役の騎士が次の試験者の名前を呼ぶ。

「さて、次に試験を受けるものは——」

 そうして、次々と受験者が呼ばれ相対する騎士との戦いを繰り広げた。試験を受けてない受験者は残り三名となり、その中にはフィードもいた。今のところ、騎士と戦って合格を与えられた受験者はケインも含めて五名。他は全員不合格となった。そして、現在まで相対した騎士を打ち倒せたものは一人もいない。
 やはり、騎士達の力は強く、中には倒すまであと一歩という惜しいところまでいった者もいたが、力及ばず破れた。その事もあって残っているフィード以外の二人は試験の始まりよりもガチガチに緊張していた。
 だが、フィードは自分の今の力をただしく理解している。余程の実力者でなければ今現在この場にいる者に破れる可能性はそう高くはない。このまま相対する騎士を打ち倒し、二次試験を突破する。そう、思っていたときだった。
 進行役の男がフィード達の名前を呼ぼうとした時、中庭に二つの影が現れた。エルロイドとグラードだ。

「ふむ、試験の状況はどうなっているかね」

 彼らの存在に気づくと、試験官である騎士全員が胸に手を当て敬礼をした。そしてそれは騎士達だけに留まらず、不合格となった者や残った受験者も条件反射のように姿勢を正した。

「エルロイド様! 試験の方は順調です。次が最終組となっております」

「そうか。それで、今のところ合格者は何名かね」

「はっ! 五名であります。それと、一つお伺いしたい事があるのですが」

「どうかしたのかね」

「いえ、何故このような場所に?」

「実は先程まで書類の処理をしていたのだが、部屋に籠って同じ作業を何度も繰り返すのにもいい加減飽きてね。気分を変えるためにこうして外に出てきたというわけだ」

「は、はあ。なるほど」

 試験官の騎士にそう説明するエルロイドだったが、その最中彼の視線がフィードへと向いた。それに気づいたフィードは頬を引きつらせ、嫌な予感を抱いていた。

(あ、あの野郎。なにしに来やがった。まさか、面倒ごとを起こしに来たんじゃないだろうな)

 こういった時の嫌な予感というものは当たってほしくないと本人が思っていても避けられないもので、それは今回も例外ではなかった。
 試験官から視線を外し、受験者の方に目を向けるエルロイド。一通り彼らの顔を見た後、わざとらしくないようにしながらフィードのところで視線を止め、まるで知らない者かのようにして試験官の騎士に問いかける。

「彼は?」

「えっ! あ、はい。彼はフィードというもので、今から行う二次試験最終組の受験者です。それがどうかしたのですか?」

「いや、特には。ということは彼はまだ騎士と戦っていないのだね」

「はい、そうです」

 その答えを聞くと、エルロイドは不適な笑みを浮かべた。それを見てフィードの背筋がゾワリとする。

(おい、おい。まさか……)

「ふむ、ここ最近戦闘らしい戦闘も行っていなくて正直運動不足でね。よかったら、彼の相手を私にさせてもらえないか」

 その言葉に騎士も含めた全員が驚きの声を上げる。

「しょ、正気ですか!」

「ん? 何か悪いかね。私だって騎士だ。これから私の部下になるかもしれない者の力を見極めたいと思ってもいいとは思わないかね」

「ですが、彼ではエルロイド様の相手が務まると思いません。いえ、この場にいる騎士の誰でもあなたには敵わないでしょう」

「そうかね? だいたい、我々が知らないだけで力を持った者は以外にいるものだよ。リオーネくんのときがそうだっただろう」

「彼女は別格です。あんな規格外の人間がそうそういられては困ります」

 その言葉を聞いて思わずエルロイドが吹き出した。それもそのはず、彼はフィードとリオーネの関係を知っているからだ。今の言葉を聞く限りではリオーネの師でもあったフィードはその規格外の人間だという事になる。

「なら、なおさら問題ない。むしろ、君は後からその発言を撤回したくなるかもしれないな」

 含み笑いをするエルロイドにとうとう根負けしたのか、進行役の騎士は深い溜め息を吐いた。

「どうなっても知りませんよ」

 それだけを伝え、彼は今から試験を受ける最後の三名の名を呼んだ。

「では、最終組の試験を始める。オルク、フィード、ジトップ。こちらへ来い。なお、フィードは特例として我が騎士団第一隊隊長エルロイド様が試験の相手となる」

 相対する騎士の元へ進んで行く三名。だが、彼らや騎士の意識はもはや試験に向いておらず、突然現れた乱入者のエルロイドに向いていた。
 そして、そんな彼と相対するフィードは苦々しい表情を浮かべ、彼に向かって文句を口にしていた。

「ったく、散々回りくどい事をしてくれた上にこれかよ。一体どういうつもりだ、エルロイド」

「さあ、なんの事かね。私と君はこれが初対面のはずだが」

 あくまで初対面だということを強調するエルロイドにフィードの我慢が限界に達した。

「ああ、そうか。そっちがそのつもりなら、好きにさせてもらう。部下の前で情けない姿を晒しても、泣き言言うなよ」

「安心したまえ、それはない。それよりも全力で来た方がいいぞ。あの時よりも私は遥かに強くなった」

 かつての戦いを思い出したのか、エルロイドはそんな事を口にしてフィードを挑発した。

「それはこっちも同じ事」

 遠く、試験官による始まりの声が聞こえた。それと同時に二つの影が神速の勢いでぶつかり合う。
 十二支徒にも負けず劣らずの実力を兼ね備えた復讐鬼と、他国にまで名声轟く騎士団のトップの戦いが今ここに始まった。
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