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騎士団試験開始

受付を済ませた日から僅かに時間は流れ、試験当日の朝が来た。事前の告知によって試験受験者に知らされていたハイル近郊の森の前へとフィードとケインは移動していた。既に周りには大勢の受験者がおり、他の受験者に対する威圧や、警戒心をそれぞれ醸し出している。ピリピリとした空気が周りに漂う中、かすれるような声でケインが呟く。

「いよいよ、始まるね。なんだか、緊張してきた……」

 そわそわと落ち着きの無い様子を見せるケイン。そんな彼を見てフィードは思わず溜め息を吐いた。

「今更不安になってもどうしようもないだろ。それより、どうやってこの試験を突破するかを考えた方がいいとは思わないか?」

「そうは言ってもさ、フィード。緊張するものは仕方ないんだよ! 僕からしてみれば君がなんでそこまで落ち着いていられるか不思議だね」

「だって二次試験はともかく一次試験は真剣を使わないんだろ? だったら命を取られる事はないんだから少なくともそこに気を回す必要がなくていいじゃないか。その分試験に集中できるだろ」

「それは、そうだけどさ」

 やはり不安さが残るのか、後ろ向きなケインにフィードは呆れたように告げた。

「ここまで来たらなるようにしかならないだろ。全力を持って試験に臨むのみだ」

「そうかな。……うん、そうだね。お互いに頑張ろう、フィード」

「ああ。まあ、実際に試験が始まってみて、もしケインだけ試験に落ちても俺を恨むなよ」

「酷いな。僕だってそんな簡単に試験を脱落するつもりは無いよ」

 少しは緊張がほぐれたのか、まだぎこちなさの残る笑顔をケインは浮かべた。そんな中、二人の話が終わるのを見計らったかのように試験を監督する騎士の声が周りに響いた。

「時間だ。今から騎士団員採用の第一次試験を行う。現段階であらかじめ試験を受けるため登録をしているもののみを受験資格があるものとする。これ以降に訪れたものはその場で不採用だ。時間も守れないものに試験を受ける資格は無い。
 今から貴君らにあるものを渡す。これだ……」

 そう言って、騎士が腕を上に掲げて手元から取り出したのは首飾り……のようなものだった。遠目には分かりづらいが、鉄製の四角い小さな板に太い糸を通しているものだ。板の部分には小さく何かが書かれている。

「これを今から一人一枚配る。試験中はこれを奪い合ってもらう。そうだな、一人当たり三枚といったところだ。これが合格の基準となる。
 もちろん、規定枚数以上のものを取ってもいい。ライバルは少しでも減らしたいとこの場にいる誰もが思っているだろうからな。しかし、制限時間があるため残り時間を考えて行動しなければいくら板を取ったところで失格となる。気をつけておく事だ。
 その他、細かいルールとしては、故意な首より上の攻撃、背後からの急襲は禁止とする。試験者の中には我々騎士団の一員も紛れており試験を監視しているので不正な行為を見かけたらその時点でそのものは資格なしと判断し、失格とする。
 それと、この板は特殊な刻印が施されているため、複製はできない。まあ、そんな事は考えないだろうがもし不正を考えているものがいるのなら止めておいた方がいい。
 試験時間は本日の日が沈むまで。その間、各々全力で試験に臨むように。騎士を目指すものとして恥ずかしくない戦いをする事を祈っている。私からの説明は以上だ」

 騎士がそう告げると、板を持った数名の騎士達が現れ、一人ずつ試験を受ける者の名前を呼び出し始めた。いよいよ試験が始まる。
 一人、また一人と板とこの試験で必要となる武器の木刀を受け取り、首にかけ、森の奥へと進んで行く。これは先に中に入ったものであればあるほど使う時間が増え、待ち伏せなどができるため有利になる。その事を理解している二人は自分たちの名前が早く呼ばれないかと待ちかねていた。

「次! ケイン。ケイン、いるか!」

「はい!」

 先に呼ばれたケインは騎士の元へ駆けて行き、最後に一度だけフィードの方を振り返った。

「それじゃあ、フィード。一足先に行かせてもらうね。お互い、全力を尽くそう」

「ああ、頑張ろうな」

 そう言って森の中へと消えて行くケイン。彼の背を見送り、フィードは己の名が呼ばれるのを待った。
 それから少し後、ついにフィードの名が呼ばれ、鉄製の板と木刀を受け取った。

「頑張れよ」

 騎士からの激励を受け取り、フィードは苦笑いを浮かべながら森へと進んだ。板を首にかけると、手にした木刀をギュッと握りしめ、周囲を警戒しながら先へ、先へと進んで行く。
 騎士団試験、その第一次試験がついに始まりを告げた。


 森の中に入り、辺りの状況を伺いながら彷徨う事数分。現在フィードがいる位置から少し離れた場所から男の怒声が聞こえてきた。

「おらぁっ! とっとと板を渡しやがれ!」

 相手に気づかれないように気配を薄め、そっと声のする方向へと向かって行く。しばらくして先程声を上げた男と、もう一人彼と対峙する別の男の姿が現れた。
 つば迫り合いにより、密着する二人。先程声を上げていたと思われる筋骨隆々とした男が均衡する状況を崩そうと力任せに木刀を押し込む。だが、それに負けじと今度は押されていた男が一手を仕掛ける。

「お前の方こそくたばれ!」

 決して体格に恵まれているわけではないが、細身ながら無駄な肉を絞っている印象の男は密着した状態から膝蹴りを放つ。それが見事に相手の鳩尾に入り、ウッと呻き声を上げ、相手を後方へ下がらせる。
 再びできた距離、対峙する二人の視線は鋭い。この僅かなやり取りで既に二人の額には汗が滲み、呼吸は乱れていた。自分の板を奪われる緊張感と、一瞬でも気の抜けない集中力。それらが急激に二人の体力を奪っているのだろう。
 再び相手の意識を刈り取ろうと二人が構えを取った時、体力の減り始めた二人を倒そうと、漁父の利を狙った第三者がその場に現れた。

「はっ! てめえら二人とも俺の獲物だ!」

 近場に落ちていた。小石を手に取り二人に向かって投げつける男。急に現れた第三者に二人の意識が逸れる。向かって来る小石に対処しようと一人は木刀を薙ぎ払い石を叩き落とし、もう一人は地面を転がり回避した。
 だが、その間に男は二人との距離を縮め、より近くにいた筋骨隆々とした男の脇腹に持っていた木刀を振り抜いた。

「おらよ!」

 いくら木刀といっても当たりどころが悪ければ死に至る。まして、力ある者がそれを振るえばその威力は真剣にも劣らない。切断力はほぼ皆無だが、その分打撃に優れ、切る、ではなく当てることを前提にする。
 当然、全力で振るったその木刀はいくら筋肉の鎧に覆われているとはいえ、その内部にある骨を打ち砕く威力を持っており、結果としてゴキッという骨が折れる鈍い音を周りに響かせた。

「くっ、ぐうぅぅ……」

 激痛から思わずその場に倒れ込む男。そんな彼の首からすかさず鉄製の板を奪い取り、第三の男はもう一人の細身の男に向かって駆け出した。

「お前もくたばっちまいな!」

 中段に木刀を構え、速度を上げて距離を詰める男。そんな彼に細身の男は思わぬ一撃を与える。

「て、天を照らす太陽の欠片! その欠片の欠片を我に与えたまえ――フレア――」

 この場にいた誰もが想像しなかった魔術の詠唱。これまで木刀の打ち合いや肉弾戦ばかりしていたため気づかなかったが試験の説明をした騎士は確かに魔術の使用を禁止していなかった。おそらくは、不意打ちや汚い手段に使わなければこれも個人の技能として認められるのだろう。
 細身の男の手元に浮かび上がった火球は勢いよくその場から解き放たれた。目標めがけて飛び行くそれは対象の足下にぶつかると同時に爆散した。そして爆発の余波によって的であった男は吹き飛ばされる。
 その衝撃が余程強かったのか、男は背後にあった樹に後頭部をぶつけ、気を失った。残された細身の男は気絶した男から二枚の板を奪い取り、森の入り口へと向かおうとする。だが……

「おっ! さっそく、一人カモをはっけ〜ん」

「悪いが、そいつは俺の獲物だ」

「ふっ、君たちまとめて僕が正々堂々と片付けてあげよう」

「騎士になるのはこの私です!」

 次々に現れる別の受験者たち。倒しても倒しても終わりの見えないこの戦い。このバトルロイヤルは素早く敵を打ち倒し、合格規定枚数の板を手に入れた後、速やかにこの森を出なければ行けないのだ。
 予想以上にえげつないこの試験内容に深い溜め息を吐くフィード。だが、このまま動かないでいるのも不味いと判断した彼は、この場の戦闘に参加する事に決めた。

(まあ、いくら面倒でもこんなところで負けるわけにはいかないからな)

 己の目的のため、フィードはただ愚直に前に向かって突き進むのだった。
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趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

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     3月のライオン
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