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旅の友

ガタン、ゴトンと音を立て揺れる馬車の荷台に乗りながらフィードは一人フラムへと向かっていた。荷台には彼と同じようにフラム近郊の町や村に向かって移動する人々が存在した。そのほとんどは農村部に住むような農民たちや出稼ぎに出ていた男衆だが、中には剣を持つ若者の姿もある。彼らの目的はフラムの首都、ハイルに存在する騎士団への入隊だろう。
 かつては富裕層の人々によって形成されていた騎士団も時の流れと共に腕の立つ平民の募集を集い、今ではその多くが彼ら一般の人々によって組織作られている。彼らが騎士団に入る理由はさまざまだ。
 富や名声を得るために騎士を目指す者。純粋に人々の役に立ちたいと思っている者。閉鎖的で窮屈な村や町から抜け出したくて飛び出してきた者などだ。
 チラリとフィードは彼らを一瞥するがまだ実戦経験もそうなさそうな者達ばかり。せいぜい、村を襲ってきた野犬を追い払ってきたというくらいだろう。
 そもそも、初めから力を持っている者の方が異例なのだ。それこそ、フィードと共に旅をしてきて力を付け、その後騎士団に入り瞬く間に成果をあげてきたリオーネのような存在は珍しい。普通は彼らのように一から力を付けていく者の方が多い。
 とはいえ、募集をして集まった者を全員騎士として採用することなど到底できるはずも無い。そんなことをすればフラムの財源はあっという間に枯渇するだろう。
 そのために行うのが騎士採用試験だ。年に数度首都のハイムにて試験を行い、その試験を突破した者を騎士団の一員として採用するのだ。
 今のフィードにとっては全く関係のないことだが、彼らのしてみれば今後の己の一生を左右するかもしれない大事な試験だ。ハイムに着くにはまだ数日かかるというのにも関わらず、その緊張感がヒシヒシと伝わってくる。他の者達もそれを理解しているのか、彼らと距離をとりなるべく関わりあわないようにしていた。
 そんな中、まだ幼さを残した純朴な顔立ちをした青年がふいに立ち上がり、対面に座っているフィードの隣に移動し、声をかけてきた。

「やあ、君さっきからずっと周りの様子を伺っていたみたいだけれど、もしかして君も騎士団試験を受けるの?」

 そう問いかける青年の様子は他の者達と違い明るく、物腰柔らかい雰囲気だった。その口調から自分と同じ目的でこの馬車にフィードが乗っていると思って話しかけたのだろう。特に無視する理由もなかったため、フィードはその問いかけに返事をした。

「いや、俺は騎士団試験を受けるつもりはないよ」

「えっ! そうなのか……。てっきり僕と同じ目的でこの馬車に乗っているのだと思ったんだけど」

 心底意外そうな顔をして驚く青年。そんな彼の様子に苦笑しながらフィードは話を続ける。

「それは残念だったな。まあ、目的は違うけれど俺の行き先もハイルだ。到着先は同じだから、それまでの道中は一緒だろうな」

「そっか。いや〜実を言うとさっきまで僕以外で試験を受けそうな人に話をしようと思っていたんだ。でも、みんなピリピリしちゃってて声をかけづらかったんだよ。でも、君はすごく落ち着いて見えて、この人だったら大丈夫かなって思って声をかけてみたんだ」

 ニコニコと笑顔を浮かべて事情を説明する青年。この重苦しい空気の中で気軽に話しかけられる相手を見つけれて安心したのか、彼は饒舌になりだした。……と、そこでふと思い出したようにまだ自己紹介をしていなかったことに青年は気がつく。

「そういえば、まだ名乗っていなかったね。僕の名前はケインだ。騎士団試験を受けるためにハイルへ向かっている」

 スッと差し出される掌。フィードは何度かその手とケインの顔を交互に見つめた後、自分の手を差し出し、それを握りしめた。

「フィードだ。ハイルへは知人を尋ねるために向かっている。短い間だけどよろしくな、ケイン」

 互いに握手を交わし、揺れる馬車の中二人は声を抑えて談笑する。フラムの首都、ハイルに向かって馬車は荷台を揺らしながら向かって行くのだった。


「着いたよ、ハイルだ」

 セントールを出て、馬車に揺られる事数日。フィードとケインはフラムの首都ハイルへと到着した。城下町でもあるここは街の周りを川が流れ、東西南北それぞれに石橋が立てかけられその上を馬車や人々が行き交っている。橋の最奥には門があり、そこでは騎士団の一員が中に入る人々をチェックしている。
 そして、そこを通り抜けた先にあるのは街の中央に存在する巨大な城。そして、そこから円を描くように広がって行く家々。所狭しと並べられた家屋。複雑に入り組んだ路地。少しでも道を外れてしまえば未知の迷宮に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥るに違いない。

「いやぁ、これは思っていた以上にすごいね。さすがにフラム一の人口を保有し、名声を他国に轟かせる騎士団の本部があるだけのことはあるなあ」

 小さな町で育ってきた者からすればあまりにも広大でスケールのある首都の一部を見て感極まっているケイン。しばらく、その場に立ち止まり顔を上げ、キョロキョロと周りを見回していた。
 端から見れば田舎者である事がまるわかりであり、彼の横を通り過ぎる者の中にはこのような光景に見慣れている住人達が可愛らしいものを愛でるように微笑んで去って行った。

「おい、ケイン。お前いつまでそうしているつもりだ? 感動するのはそのくらいにして先に進まないか。ここには観光をしにきたわけじゃないんだろう?」

 フィードの一言を聞いてハッとするケイン。両手で頬をパン、パンと軽くたたき気を引き締め直す。

「そうだったね。ありがとう、フィード。僕の目的は騎士になることだ。こんなことで気を抜いている場合じゃなかったね」

 そう言って目的である騎士団の本部へ向けて歩き出す二人。ここ数日の道中で二人の仲は深まっていた。なにせ話しをする以外他にやることがないのだ。必然、今までどんなことをしてきたかなどを話すことになる。
 フィードは自身の過去をある程度隠し、何でも屋としてセントールに滞在して生活をしていることを話をした。ハイルには騎士団に所属する知人を尋ねにきたという事も。
 それを聞いたケインは実に興味深そうにフィードに根掘り葉掘り話を聞いてきた。自身の目標である騎士団に所属する知人がいると聞いて彼らの活躍等を知りたいと思ったのだろう。
 フィードはケインの態度を見てその知人がリオーネであると伝えたら増々色んな事を聞かれると思ったため、彼女の事を伏せた上で、セントールを訪れていた時の騎士団の話を彼に伝えた。ケインは彼らの活躍を、特に人々のために働いていた事を聞くと感動してその身を震わせていた。
 どうやら、彼の場合地位を求めて騎士を目指しているのではなく、人の役に立ちたくてそれを目指しているのだろう。
 実際、それを聞いてみたところ彼が騎士を目指す理由は幼い頃、野盗に村が襲われた際、騎士によって助けられたのだという。それ以来騎士というものに憧れ、ずっと目標としてきたという。
 それを聞いたフィードは彼のような青年が騎士になってもらいたいものだと内心思った。そして、道中馬を休憩させるために止まっている時など、剣を合わせ少しでも彼が騎士団試験を合格できる足しになればと思って稽古をしたのだった。
 結局最終的な目的地が同じなため二人は騎士団本部に辿り着くまで一緒に行動することになった。彼の試験は今日より三日後。フィード自身は用が済めばすぐにでもここから離れる事になる。
 たった数日の付き合いではあるが、別れが近づくともの寂しさが漂うものである。ケインなど先程から何度もフィードを見ては名残惜しそうにしている。

「……まだ、別れるまで時間があるんだからそんなにそわそわとするなよな」

「いや、なんだかいざ別れが近づくと寂しくて。ねえ、いっそのことフィードも騎士団試験を受けない? 君なら僕より剣の腕はあるだろうし合格する可能性は高いよ」

「もしそうなったら自分の合格する可能性を狭めてるわけだぞ、お前。それに、騎士団の一員になるつもりはないって。これから先は一人で頑張るんだ」

「そうだよね……。うん、それじゃああと少しの間よろしく、フィード」

「ああ、もちろんだ」

 そう言って二人は城の内部にある騎士団本部に向けて歩き出すのだった。
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趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
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     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
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好きなゲーム:キングダムハーツ
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