04
1
2
3
4
5
6
7
8
10
11
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
30
   

すれ違う心と心

 リオーネがセントールを訪れてから既に一週間が経った。その間、一足早く下町を訪れていたリオーネに続くように、正式にフラム第九騎士隊が到着した。部下に雑事を任せて、先にセントールに来ていたリオーネは、騎士隊が到着した際、散々文句を言われたようだ。到着した騎士隊は、下町を巡回するついでに、騎士隊員の顔見せをするとのことで、リオーネは普段着ていない鎧を身に着けて、町を回って行った。
 騎士隊員を、そして時の人であるリオーネを一目見ようと、屋外には大勢の人々が並び、騎士隊が進む道を作っていた。そんな人々に騎士たちも、笑顔を見せ、愛想良く手を振りまき、これからしばらくの間生活を共にする人々と有効な関係を作るための一歩を踏み出そうとしていた。
 ある意味お祭り騒ぎとも言えるこの状況の中、他の人々のように外に出て騎士たちの顔を見る事もせず、かといってこの興奮的な状況に身を任せるわけでもなく、ただ一人静かに食事をとっている青年がいた。

「ねえ、フィード。みんなみたいに騎士さんの様子見に行かないの?」

 空になったグラスに水を注ぎ、フィードの隣の席に腰掛けた少女、イオが問いかける。

「いや、俺は騎士に興味がないからな。そういうイオこそ見に行かなくていいのか?」

「私はいいよ。だってこれからあの人たち下町の警護に付くんでしょ? だったらわざわざ顔を見に行かなくったって、嫌でも顔を合わせる事になるんだもん。それならべつに見に行かなくてもいいかな~って」

 両手をテーブルに付き、突っ伏した状態でイオは答える。そんなイオをみてフィードはやれやれとため息を吐いた。

「確かに嫌でも顔を合わせる事になるんだよな……」

 だらしない格好をしているイオを起き上がらせて、きちんと椅子に座らせる。フィードの他に客はいないが、一応イオは給仕中なのだ。

「それってさ~。いったいどっちの意味で言ってるの?」

 イオの問いかけにフィードは一瞬硬直する。動揺するフィードの気など知ったことではないと言うように、イオは話を続けた。

「最近さ、フィードってあの子と一緒にいないじゃん。最初は用事があるのかなって思ってたけど、この宿に泊まってもいない。それなのに手伝いにはきちんと来る。私じゃなくても普通気がつくよ。
 でも、おかしいと思ったのはいつもフィードにベッタリなあの子がここ数日は自分から話しかけようともしないっていうのに気づいた時かな。
 どうにも変だなって思ったから仕事が終わってどこに行くか確かめに行ったら、あの子ってば今話題のリオーネ様の所に行ってるじゃない。それもなんだか親しげな様子だったし。
 それで次の日にどういうことかって問いつめたら、あの子ってば今自分はリオーネ様と一緒にいますって白状したわよ。まったく、これだけフィードの世話になっておいて他の人の所にコロッと行くなんてあの子の気が知れないわ」

 怒っているのか、気を使っているのか、それともそのどちらもなのか。イオはムッとした表情を浮かべて再び机に突っ伏した。今度はフィードもそれを直そうとはしなかった。

「まあ、簡単に言うとちょっとアルと喧嘩しちゃってな。……いや、違うか。俺が昔酷い事をしたっていうのをアルに知られちゃったんだ。
 それで、アルは気持ちの整理が付かないから、しばらくの間リーネの所に身を寄せているんだ」

 フィードはなるべく分かりやすいようにイオに伝えた。本当はこの事についてイオに話すつもりはなかったのだが、イオ自身が調べて事の全容をほとんど掴んでいたので、仕方なく話す事にしたのだ。たとえフィードが話さなかったとしても、そのうちイオはアルを問いつめて話の全てを聞き出すだろうと予想できたため、それなら早いうちに話してしまった方がいいだろうとのフィードの判断だった。

「ふ~ん。なるほど、ね。それで、フィードはどんな酷いことをしたの?」

 興味があるのか、イオはフィードが話の続きを語るのを待っていた。そんなイオに自虐的な笑みを浮かべ、おどけるようにしてフィードは語った。

「実はな、俺は少し前まで今のアルのように一緒に旅をしていた奴がいたんだ。でも、色々と思うところがあって、俺はそいつを置き去りにした。
 それで、そいつには酷く恨まれてさ。その事をアルが知っちゃって、俺の傍にいるのがいいのかどうかって思ったんだろうな……。
 というわけで、アルの奴はしばらく俺と距離を置いて生活しているんだよ」

 少しは驚くと思って話をしたフィードだったが、イオは特に驚いた様子を見せるわけでもなく、眠そうに欠伸をかみ殺しながら、話を聞くだけだった。あまりにも拍子抜けするイオの態度に、フィードは戸惑った。

「あれ、イオ? なんだか、全然驚いていないな」

「だってさ、話を聞いているとあの子ってばホントに馬鹿なんだなって思って。
フィードが本当にそんな風にして前に一緒にいた人を捨てたのなら、今こうしてあの子と一緒にいる事も、私を助けてくれることもないじゃない。
 そんな事に気がつかないで、うじうじしているだなんて。あ~もう! 腹が立ってしょうがないよ!」

 バンッと勢い良くテーブルを叩き、イオが立ち上がる。テーブルの上にあった料理の皿が宙に跳ね、先ほど注がれた水がわずかにテーブルの上に零れた。突然のことにしばらくボーッとしていたフィードもイオが自分の為に怒ってくれているという事に気がつき、その表情が和らぐ。

「ありがとな。でも、こればっかりはアルの奴が決める事だからさ。俺がどうこう言う権利はないんだよ。あいつは俺の所有物でも何でもないんだから」

「む~。それはしょうがないけどさ。じゃあ、あの子とは別の話になるけど聞いてもいい?」

「いいぞ。なんだ?」

「フィードが昔一緒に旅をしていたのってあのリオーネ様なんでしょ?」

 その質問にフィードの顔が強ばる。その反応だけで、答えが分かったのか、イオは先程よりも更に身体の力を抜いてテーブルの上でだらける。

「あ~あ。ライバルはあの子だけかと思っていたら思わぬところから伏兵が出てきたな〜」

 ぶつぶつと何かを呟くイオだが、フィードにはそれが何の事なのか分からなかった。

「イオ、お前なにを言ってるんだ?」

「気にしないで、独り言。それにしてもリオーネ様ってもっと頭の柔らかい人かと思ったけど、思ったより堅物なんだね」

「どうしてそう思うんだ?」

「だってさ、フィードは今でもあの人のこと『リーネ』なんて親しい感じで呼んでさ。それに、あの子からちらっと聞いた話だと、捨てられたって言ってるようだけど、フィードは一言だって『捨てた』なんて口にしてないんだもん。
 そう考えたら、それがどういう事なのかってことくらい分かるはずだけどな。頭悪い私でも分かるのに、そんなことにも気がつかないなんて、頭堅いんじゃないかな、あの人」

 今までのイオの指摘はどれも鋭いものだったが、その中でもとりわけ今の発言は的を得ていて、フィードは思わず言葉を失った。

「まあ、あの二人がどうなろうが私には関係ないからどうでもいいんだけどね。私はフィードと一緒に居られるならそれでいいし!」

 そう言ってテーブルの上にあった頭をフィードの膝の上に移動させ、うるさい従者のいない時を満喫するイオ。フィードはそんなイオにただ苦笑いを浮かべるしかなかった。



「ただいま、アルちゃん」

 夕方になり、町の巡回を終えたリオーネはアルの待つ宿へと戻ってきた。フィードと一緒に居た部屋とは違い、広々とした部屋では、数日が経っても落ち着いた様子がないアルがそわそわとし、リオーネに買ってもらった新しい服を畳んでは広げていた。

「おかえりなさい、リーネさん。どうでした? 町の様子は」

 帰ってきたリオーネを笑顔で出迎え、彼女の元へとすぐさま駆け寄る。その様子は飼い主の帰りを待ちわびた忠犬のようだ。

「みんな笑顔で出迎えてくれていたわ。さすがに私は何日かこの下町に居たから雰囲気に慣れていたけど、隊のみんなはちょっと緊張してたみたい。でもすぐに慣れると思うわ。この町の人はみんないい人ばかりだしね」


 ベッドに腰掛け、身につけている鎧を取り外し始めるリオーネ。しばらくして、いつもの格好をした彼女がアルの前に現れる。

「そうですか。それで、今日は何をするんですか?」

「う~ん。私は今回この隊を預かる隊長ってことになってるの。だから、みんなの業務報告を受けたり、異常があれば指示を出すのが仕事になるわ。
 今日はみんなで巡回もしたし、まずは隊のみんなと下町の人たちとの交流を図るのが第一ね。だから、今日の私の仕事はもうおしまい」

「じゃあ、一緒にどこかへ出かけませんか? 隊の皆さんにも挨拶をしておきたいですし」

 騎士隊のメンバーを一目見たいという気持ちがあったアルは、リオーネにそれを悟られないようさりげなく言ってみたのだが、リオーネはそんなアルの考えに気づいていたのか、微笑ましくアルを見つめていた。

「そうね、それじゃあ少し顔を見せに行きましょうか」

 そう言ってアルと共に騎士隊員が宿泊している別の宿へと二人は歩き出した。


「あ、副隊長。どうしたんですか、僕たちの宿に来るなんて。もしかして何かありましたか?」

 しばらくして騎士隊員が宿泊している宿にたどり着いたリオーネとアル。入り口を入ってすぐに出迎えたのは、優しげな雰囲気を漂わせている一人の青年だった。

「ああ、エリオード。実はこの子に私たちの隊のメンバーの顔ぶれを見せてあげようと思ってね」

 リオーネとあまり年の変わらないように見える金髪緑眼のエリオードと呼ばれた青年にリオーネはそう言って、自分の後ろに隠れているアルを前に押し出して紹介する。

「うわ、かわいい子ですね。この下町の子ですか?」

「一応はそうなるわね。でも、あんまりかわいいからって手を出したら駄目よ。その子、今は私が預かってるんだから」

「副隊長の知り合いに手を出すわけないじゃないですか。そんな事をしたら命がいくつあっても足りませんよ」

 肩をすくめて苦笑するエリオード。そんな彼とリオーネのやり取りを見つけた他の隊員が次々と二人の周りに集まり始める。

「あれ、副隊長。どうしたんですか? もしかして、俺たちにデートのお誘いですか?」

「……ラスク。冗談は顔だけにして欲しいわ。いくら私でもさすがに獣の相手はしないけど?」

 ラスクと呼ばれた赤髪茶目の見るからに屈強そうな男性がリオーネを茶化す。しかし、リオーネもそんな悪ノリに付き合って、冗談で返した。そのやり取りに集まった他の隊員は笑い声を上げる。

「おいおい、みんな酷くねえか。獣って馬鹿にされてるんだぜ。普通誰かしらフォローを入れてくれるもんだろ」

 しかし、その言葉に隊の誰もが顔を見合わせ「だって……なあ」と呟く。そして、全員の意見を代弁するようにエリオードがラスクに伝える。

「だって、ラスクと副隊長のどっちの味方をするかって言われたらそりゃあみんな副隊長の味方をするよ。だって副隊長は地位もあるし、腕も立つ。おまけに騎士隊屈指の美人ときた。
 それに比べてラスクは、腕っ節は確かに強いけれど、見た目野獣だし、実際に獣臭い。
 ほら、どっちの味方をするかは明白でしょ?」

「うっせー、エリオード。獣臭くて悪かったな、あんまりそんな事言うとお前が寝てる間に俺の獣臭い下着を顔に被せるぞ」

「勘弁して、そんな事されたら三日は匂いが取れないよ。下町の人と話そうとしても避けられちゃうじゃないか」

 笑い声に満ちる宿内。第九隊ならではの明るい雰囲気がフラムから離れたこのセントールでも漂っていた。

「うん。みんなまだまだ元気がありそうね。それじゃあ、今から私たち食事に行こうと思っているんだけど、みんなも一緒に行かない?」

 リオーネのその言葉に、隊の誰もが目を合わせあい、

「隊長のお誘いでしたらぜひ!」

 と元気よく返事をするのだった。リオーネは彼らの単純さに呆れながらも、

「こら、副隊長でしょ。隊長が聞いたら怒るわよ」

 と、隊のメンバーとの会話を楽しんでいた。



「おう、いらっしゃい。こりゃあまた、今夜は大勢で来たんだな」

 騎士隊のメンバー全員を連れて酒場の入り口を開けて入ったリオーネは、連れてきた人数に驚いているレオードに声をかけられた。

「こんばんは、レオード。今日は隊のメンバーを連れてきたわ。上手く行けばみんなここの常連になるかもしれないから、頑張って料理とお酒を振る舞ってね」

 そう言って店内に入るリオーネ。その後をまるで行進するかのようにゾロゾロと付いて来る二十人ほどの騎士隊のメンバー。

「ほ~。こりゃ確かに、常連になってくれれば懐が温かくなるな」

「でしょ? 期待してるわよ、レオード」

 レオードにウインクを投げかけ、近くにあるテーブル席の一席に座る。他のメンバーも空いている席に座り、それぞれ雑談を始める。酒場にはリオーネたち騎士隊以外に、よくこの酒場を使っている常連が集まっていた。急に入ってきた大勢の騎士たちに彼らは驚きながらも、これから下町の警護につく彼らが一体どんな人物なのか見極めようとしていた。

「みなさん、元気ですね。今日も一日町を回っていたはずなのに……」

 リオーネの隣の席に着いたアルが呟くと、同じように同じテーブルの席に着いたエリオードがその呟きに律儀に答えた。

「そりゃ、みんなフラムの騎士だからね。あの程度でへばるほど体力はなくないさ」

「よく言うな。お前なんて騎士隊に入ったばかりの頃は体力なくてしょっちゅう吐いていたくせに。子供の前だからって見栄張りやがって」

 エリオードが隠していた事実をあっさりと暴露し、ラスクもまた同じ席に座る。過去の恥ずかしい出来事を晒されたエリオードは顔を真っ赤にして、ラスクにキレた。

「おい、それは言わない約束だろ。それに、今はもう体力だってついたよ。昔の僕じゃない」

 しかし、ラスクは先ほどの宿でのお返しとばかり、からかい続けた。

「ほ~。体力はついても剣の腕は一向に上がらないお前がな~。いつも練習に付き合ってる俺にボロ負けしてるんじゃ、昔のお前とあまり変わらないがな」

 ニヤニヤと挑発的な笑みを浮かべ、ラスクはエリオードを見つめる。さすがにここまで言われて黙っているほどエリオードも人ができていないのか、

「なんだよ、やる気?」

「お前こそ、いつも負けているのにまだ懲りないのか? ああ、今日は副隊長がいるもんな。格好悪い姿は見せられんよな、お互いに」

 互いに立ち上がり、火花散る睨み合いが始まる。そんな二人にリオーネはやれやれとため息を吐き、

「頼むから酒場の備品は壊さないでよ。もし壊したなら自費で弁償してもらうからね」

 忠告だけはしっかりとし、それでも二人を止める事はしなかった。リオーネは騎士団にいる男は見栄っ張りで負けず嫌いな連中が多いと悟っているため、こういったいざこざが起こっても、なるべく止めないようにしていた。リオーネ自身には分からないが、男には拳で語り合って芽生える友情もあるのだそうだ。

「副隊長から許しも出たし、どう決着をつけようか?」

「ここは酒場だぞ? やる事は一つだろ」

 そう言って二人は店主であるレオードの方を向くと、

『店主! ここにあるだけの酒を持ってこい!』

 と叫び声を上げた。そんな二人の様子に気がついた他の隊のメンバーと常連客は歓声を上げた。

 レオードもまたいつもの酒場のノリに呆れていたが、まずは最初の一杯をグラスに注ぎ、二人の前に差し出した。

「いいか、勝負するのは勝手だが、騒ぎすぎてうちの店の物を壊したら承知しねえからな」

 リオーネと同じく、釘を刺したレオードだが、その忠告はおそらく意味をなさないだろうと予想していた。なぜなら、こういった勝負事が始まると、周りもその熱気に当てられて騒ぎだし、理性は吹き飛び、騒ぎ、踊り、果ては店の備品が壊れる事になるからだ。
 そんな店主の心配など露知らず、二人はグラスを持ち、

「いい? 勝ったら相手は黙る事!」

「敗者はベッドで泣いていろ!」

「いくよ!」

「いくぜ!」

 コンと木製のグラスがぶつかる音が響き、二人は一気に中に入っている酒を飲み始めた。酒が喉を通るたび、小気味よい音が鳴り、口元から溢れた酒が床に垂れる。最初の一杯は両者同時に飲み終わった。二人は互いに相手を睨みつけた後、店主であるレオードの方へと振り向く。

『次の酒持ってこい!』

 叫ぶ二人に周りは口笛や声援を送る。一部の人々は何やらどちらが勝つか賭けを始め、勝負の行方を見守っていた。そしてまた、別の席では二人と同じように飲み比べを始める物たちも現れ、あっという間に店内は騒がしくなり、にぎやかな雰囲気となった。
 アルもまた、普段は見る事のできない大人の世界の一端をその肌で感じ、熱気に当てられていた。目の前で繰り広げられる二人の男の飲み比べを見て、影響されたのか、リオーネにお酒を飲んでみたいと頼み込む。

「リーネさん。私もあの飲み物飲んでみたいです!」

 しかし、悪い影響を受けそうになっているアルに、リオーネはきちんと分別をつけさせるため、ほんの少しだけアルを叱る。

「こらっ! アルちゃんはまだ子供なんだから、こんなもの飲まなくてもいいの。目の前にいるようなのは大人の悪い例だから真似しちゃ駄目」

 リオーネに叱られたアルはしょんぼりして肩を落とした。と、そこにきてようやくアルがこの場にいることに気がついたのか、レオードが声をかける。

「あれ、アル。お前さん今日はフィードの奴と一緒じゃないのか? もしかして一人できたのか?」

 レオードのその言葉に先ほどよりもしょんぼりとしてしまうアル。そんなアルに気がついているリオーネはすかさずフォローを入れる。

「いえ、今アルちゃんは私のところで預かっているの。それで今日は一緒に食事を取りに来てて……」

「ほう。まあ、なんでもいいが。あいつにもたまには顔を出せって言っておいてくれ。あいつが中々来ないもんだから常連客がいつ来るかそわそわと落ち着かなくて仕方がねえ」

 そういうレオードもまた落ち着かない側の人間であるのだが、それをフィードに悟られるのは癪なのか、誤魔化して伝えた。そんなレオードにアルはなるべく元気よく返事をする。

「わかりました。マスターに会った時に伝えておきますね」

「ああ、よろしく頼んだぞ」

 そう言うとレオードはカウンターに入り、必要になる酒を次々と注ぎ始めた。そして、同時に大量の料理の調理に入った。

「やっぱり、あの人のこと気になる?」

 しばらくボーッとしていたアルにリオーネが問いかける。

「い、いえ! そんなことは……」

 とっさに否定するアルだったが、語尾は小さく弱々しくなり、明らかに気にしていることがわかってしまう。

「ホントはちょっとだけ気になってます。最近マスターともあまり話せてませんし、実を言うとどうしてリーネさんにそんなことをしたのかも知りたいんです」

「この間本人が全部語ってくれたと思うけど?」

「あれは……本当に全て語っていたんでしょうか? リーネさんはあれで全部だったと思いますか?」

 アルの問いかけにリオーネは苦しそうに表情を歪ませる。そして、次の言葉をアルが話そうとする前に、その口を手で遮り、無理矢理話を終わらせた。

「もうこの話はここまでにしておきましょ。私はその事について知りたいと思わないわ」

 逃げるようにしてエリオードやラスクを含めた部下たちの飲み比べに飛び込み、参加するリオーネ。そんなリオーネの背を見つめたまま、アルは一人ポツンと席に残されたのだった。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

Secre

こねこ時計 ver.3

CATS
Sweets

プロフィール

建野海

Author:建野海
扉の中の部品たちへようこそ。

名前:建野海

twitter @tateumi よかったらフォローしてください。


好きな食べ物: 和菓子、洋菓子などデザート類。

趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
修羅の門
     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
      僕駐
      インセプションなど。

好きなゲーム:キングダムハーツ
       テイルズ
       ルーンファクトリー
       ゼルダの伝説など

好きなアーティスト:福山雅治
          宇多田ヒカル
          UVERworld
          アンジェラアキ
          

最近の記事

最近のコメント

カウンター

Twitter

 

月別アーカイブ

カテゴリー

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
1128位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
224位
アクセスランキングを見る>>

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブロとも一覧


旅の空でいつか

標準装備で。

CANDY BOX

クリスタルの断章

現実エスケープ

BSR

白と黒の交流所

みくちょんの毎日

木綿湯のぶろぐ

気ままな雑記帳

saichi放送局

とあるゲーマー武装紳士の日常

星のゆりかご

Melt Sugar

小さいにっぽん頑張れ、2ch,大騒ぎ

Twilight of midnight

hana.bana