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珍しくバトンでも

縦読みお題「ゆうやけ」バトンバトン

Q1 次の各文字で始まる文章を作ってください。実話でもフィクションでも、短歌や詩でも、何でもOK。
A1 ゆうやけで小話
Q2 「ゆ」
A2 友人を心の底から信頼していた。
Q3 「う」
A3 嘘をつくなんて思っていなかったあの頃、僕は本当に馬鹿だった。
Q4 「や」
A4 やっぱり他人なんて信用できない。信じられるのは自分だけだ!
Q5 「け」
A5 けれど、そんな僕にまた人を信じる大切さを教えてくれた人がいた。それもまた新たな友人だった。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

秘密の小部屋

「では、佐々木先生。このあとはよろしくお願いしますよ。なんせ、神谷のやつは我々に対しては敵対的でして……」

「ええ、わかりました。いつものことですが、迷惑をおかけしてすみません。副担任として謝罪させていただきます」

「そんな、佐々木先生は新任としてはよくやっていらっしゃいますよ。だからこそ南先生も生徒指導補佐としてあなたを使われているのですから」

「そうだといいんですが……。あ、そろそろ行きますね。ありがとうございました、日野先生」

 すべての授業が終わり、教師たちが集まる職員室。その一角、新任として母校である高校に着任したまだ年若い青年佐々木望は体育の教科を受け持っている中年の男性教師、日野悟からある報告を受けていた。
 それは、今年に入ってもう何度目になるかわからない報告であり、彼にとって関わりの深い生徒が起こしている問題であった。
 日野が佐々木の元を去ったあと、彼は誰にも気づかれないようこっそりと深い溜息を吐き、愚痴を漏らした。

「はぁ。まったく、これで何回目だよ由利……」

 普段は形式上名字で呼んでいる問題児の名前を口にし、今彼女が待っているであろう生徒指導室へと重い足取りで彼は向かうのだった。
 職員室を出て、長い廊下を歩いていると幾人もの生徒とすれ違う。まだ自分とさほど年齢の変わらない新任教師である佐々木には彼らも接しやすいのか気軽に声をかけてくれる。その度に佐々木は挨拶を返したり、軽く雑談をした。
 そうこうしているうちに反対側の校舎にある生徒指導室へと辿りつく。シンと静まり返ったそこには一人の少女がいるはずだ。
 ガラガラと、もうだいぶ老朽化した木製の扉を開き、佐々木は中に入った。

「あっ! ささ兄!」

 生徒指導室の中へと入った佐々木を待っていたのは開口一番、教師に対してするものではなく、まるで近所に住む親しいものに対する言葉だった。実際、それはあながち間違いでもないのだが、ここはまだ学校であるため、職務中である佐々木は少女の言葉を注意した。

「こら、いつも言ってるだろうが。ここでは佐々木先生だろ、神谷」

 これも何度目になるかわからない指摘であるため、若干呆れながら佐々木は少女、神谷由利にそう告げた。

「え~。だってさ、私から見ればささ兄が教師なんて言われてもピンとこないんだもん」

「そうだとしても、そこはちゃんと公私を分けるのが普通なの。まあ、それはまた今度でいいや。それで、今回はどうした?」

 生徒指導室に置かれた椅子に座っている由利の対面へと佐々木は移動し、彼女と同じように座った。

「えっと、実はね……」

 そう言って由利はポツリポツリと今回の話を話しだした。そして、それは教師からしてみればあまり取るに足らないことであり、逆に生徒である彼女からしてみれば重要だともいえることだった。
 ようは彼女たちは本来許可を得てから使用する体育館での球技を勝手にボールを倉庫から持ち出して行っていたらしい。しかも、注意だけで済むところを他の子達を庇ってやけに由利が反抗したため、このように生徒指導室に呼ばれるということになったのだ。
 教師に対してどこか反抗的。でも、それは自分以外の誰かを思っての行動のため生徒からは人気が高い。そんな生徒が神谷由利という少女だった。

「全く、そんなことなら直ぐに謝ればよかったのに。そういうとこお前は圭佑に似てるよな」

 そう言って佐々木が苦笑する。彼が今思い浮かべたのは由利の兄であり佳祐の親友でもある神谷圭佑だ。今目の前にいる由利と同じ様に圭佑が高校生の頃は同じように問題を起こしており、佐々木もそれに巻き込まれるようにして問題児として扱われたりもした。

「え~圭佑と一緒とかないない。ささ兄、それはひどいよ~」

 心底嫌そうに兄と同一視されるのを拒否する由利。兄である圭佑はこんなふうに嫌われていると知っていても彼女のことを溺愛しているのだ。思春期とは言えこれだけ嫌われるのはかわいそうだなと親友に対して佐々木は同情した。
 けれども、他人の妹とは言え手間のかかる子ほどかわいいという。しかも由利は佐々木がこの学校に着任する前からの付き合いであるため、どうしてもほかの生徒より贔屓目に見てしまうことがある。

「まっ、問題を起こすのは程ほどにな。さすがにあまりにひどいと僕も庇ってやれないから」

「うんっ! ありがと、ささ兄!」

 そうして今回の問題はこうして終わりを告げ、佐々木はその場で事の成り行きについてノートに纏めていた。だが、もう要は済んだのにも関わらず由利は部屋から出ていかない。部屋の外からは既に部活動に向かう生徒たちの声が響き、古い校舎の窓を揺らす風の音が聞こえてくる。
 そんな中、シャープペンの音だけが響き渡る生徒指導室。佐々木はノートを書くのに集中しており、由利はそんな彼の前で両手で頬杖をついて楽しそうに彼を見つめていた。

「えへへ~」

 実に幸せそうな緩みきった笑顔。他の誰でもない佐々木だけの前で見せる彼女の表情。そして、それに気がついた佐々木は無視するわけにも行かず手を止めて由利に注意する。

「こらっ、学校じゃ公私をしっかり分けろって言ったばっかりだろ」

「だってさ、だってさ。この部屋私たち二人しかいないんだよ? それならこうしていてもいいでしょ?」

「駄目、駄目。いつ他の人が来るかもわからないんだから……」

「む~っ。じゃあ窓締めればいいでしょ! 入口は磨硝子だから外からは人影があるくらいしかわかんないんだから」

 そう言って由利は外窓の前にあるカーテンを引き、窓を全て覆った。そして今度は作業を止めた佐々木の隣に座り彼の服の裾をキュッと握り締めた。

「ねえ、こないだ宮下先生といい雰囲気だったって本当? なんか二人で食事に行ってたって聞いたんだけど」

「おいおい。そんなことどこで聞いたんだよ。まあ、事実だけどさ」

 佐々木より二つ年上の先輩教師である宮下加奈子と以前食事に行ったことを話に持ち出された佐々木は女子高生たちの情報ネットワークの広さに心底驚いた。

「そんなことは今どうでもいいの! その、なんで一緒に食事になんて言っちゃったの……。私だって一緒にご飯食べに行きたいのに……」

 シュンと肩を落とし、明らかに落ち込んだ様子を見せる由利。年上の女性に対する嫉妬の入り混じったその様子を見て佐々木は可愛らしいと感じた。

「いや、仕事の話をする上で仕方なかったんだよ。それに、宮下先生は彼氏いるぞ。だから、あまり心配するな」

 そう言って佐々木は由利の頭を優しく撫でた。くすぐったそうにしながらも、由利はデレデレと頬を緩めて為すがままにされていた。

「ほんとッ!? ならよかった~……」

 心底安心した様子の由利はとうとう佐々木に抱きついた。さすがにこれは佐々木もマズイと思い、彼女を引き離そうとするのだが、満面の笑みを浮かべる彼女を無理やり自分から離した時の反応を想像して、結局行動に移すことはできなかった。

「もう、少しだけだからな……」

 そうして、いつもの決まり文句を言う佐々木。そんな彼の言葉に甘えながら今日も由利は幸せそうに微笑む。

「ささ兄、ささ兄!」

「ん? どうした……」

 もうすぐ報告を書き終わりそうな佐々木を由利は呼びかける。そして、キョロキョロと周りを見渡し、誰もこの部屋に来る気配がないのを確認すると瞼を閉じ唇を彼に向かって突き出した。

「はぁ……。全く、お前は本当に問題児だな……」

 公私共々手の焼ける生徒兼彼女に呆れながら佐々木は自分にとってのお姫様の機嫌をよくするため彼女の要望に応えた。
 そっと触れ合うような優しいキス。数秒にも満たないそれでも、その行為をしてくれたのが嬉しいのか由利は終始笑顔のままだった。
 問題を起こした生徒を指導するために教師が訪れる生徒指導室。だが今は、彼氏と彼女という秘密の関係を表に出せる学校唯一の聖域として二人は活用するのだった。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

兄「兄妹の」妹「恋愛事情」

母「兄~。そろそろ部活でしょ? もう出ないと間に合わないんじゃないの?」

兄「マズっ! ゆっくりしすぎた。ありがと、母さん」

母「あっ、そうそう。ついでに妹のお弁当持っていってあげて。あの子家に置いて行っちゃったみたいだから」

兄「はぁ……なにやってるんだ妹のやつ。わかった、持ってくよ」

母「よろしくね」

兄「それじゃあ、行ってきます」

母「は~い、気をつけるのよ」

タッタッタッタ

――学校――

兄「あ~暑い~。もう、夏場に自転車を漕いで学校に行くだけでシャツが汗でびしょびしょだ。べたつくし、嫌になるな」

プープオーン ブォー、ブォー タッタカターン

兄「おっ、吹奏楽の連中か。妹のやつ頑張ってるかな」

キーコーキーコー

――教室――

先輩「妹、音程ズレてる。あともう少しリズムよく」

妹「はい! すみません」

先輩「それじゃあ、もう一度やるよ。定演までもうあんまり日がないんだから」

妹「わかりました」

タンタカタッタッター

兄「……う~ん、練習中みたいだな。とりあえず、一度練習が止まるまで待つか」

タカタカタッタタンターン

先輩「……うん、みんなミスも少なくなってきたし一度休憩入れよっか」

後輩「はいっ!」

妹「はいっ!」

先輩「そういえば、さっきから入口の前でウロウロしてる人いるけれど、あれ確か妹ちゃんのお兄さんじゃなかった?」

妹「あっ、ホントだ。もう……何しに来てるのよ~」

ガラガラッ、ビシャッ

兄「おっ、妹。ようやく休憩か?」

妹「まあね。それで、どうかしたの? まさか用もなく来たわけじゃないんでしょ?」

兄「まあな。ほれ、弁当。お前家に忘れてったろ。母さんが届けろって俺に渡したんだよ」

妹「あっ……そういえば。ありがと……」

兄「ん。それじゃ俺も部活行くから。頑張れよ、妹」

妹「そっ。そっちも頑張りなさいよ」

兄「おう。なんせこの暑い中唯一涼しい気分になれる部活だからな。思う存分頑張ってくるよ」

タッタッタッタ

妹「な~にかっこつけてんだか」

後輩「ねえねえ、今の妹ちゃんのお兄さんだよね?」

妹「ん~? まあね」

後輩「お兄さんって確かこの間水泳の大会で賞もらってなかった? ほら、学年集会の時に呼ばれてたよね」

妹「あ~そういえばそんなこともあったかも」

後輩「すごいな~。きっと脱いだら筋肉とか凄いんだろうな~」

妹「言っとくけど脂肪が少ないだけでそんな筋肉がガッシリとついてるわけじゃないわよ。
 それに、水泳はできても家じゃパンツ一丁でウロつくし。普段から海パン一丁で過ごしてるせいか生活がだらしないのよ。もう、見てらんないんだから」

後輩「そ、そうなの?」

妹「そうだよ! ノックもしないで人の部屋入ってきたりするし、買い物に行ったら勝手に自分の好きなもの漁り始めるし、料理の味付けは大雑把だし。
 あと、あたしに彼氏が出来たかどうかしょっちゅう確認してくるし鬱陶しくてたまらないわよ全く。後輩ちゃんが変な幻想抱いてるから言っておくけど、あいつはデリカシーの欠片もない男よ」

後輩「ふ、ふ~ん。そうなんだ……」

妹「そうだよ、今日だって携帯にメッセージでも送ってくれて後で荷物渡しに来てくれればいいのにさ。わざわざ直接送ってきたりするしさ。ホント気が利かないんだから」

後輩「聞いてる分にはなんか仲良さそうなんだけど?」

妹「全然! 心配性だし、ちょっと過干渉気味なんだから!」

後輩「でも、妹ちゃん。さっきからニヤニヤしてるよ?」

妹「えっ?」

後輩「あれ? 気づいてないの。お兄さんの話してる間ずっと嬉しそうに話ししてたけど……」

妹「……」

後輩「……」

妹「あ、あたしちょっとトイレ行ってくる」

後輩「いってらっしゃ~い」

妹「~~ッ」

後輩「妹ちゃん、ブラコンなんだ~。可愛いな~」

――プール――

先生「よ~し、それじゃあアップ始めるぞ。とりあえず百メートル自由形十本。
 よーい、始め」ピッ

ザパンッ! バシャバシャバシャ スイー

先生「次」ピッ

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

友「いや~やっぱ夏場はこの部活最高だと思うわ。このクソ暑い中冷たい水の中に浸っていられるんだからな」

兄「同感。水泳部に入ってよかったと思えることの一つだよ」

友「だな」

プープオーン キンッカンッ タタタタタ タタタタン

友「お、パイレーツオブカリビアンのテーマソング。吹奏楽の奴ら頑張ってるな」

兄「今全体練習やってるみたいだな」

友「定期演奏会近いもんな。そういえば兄の妹も吹奏楽部じゃなかったっけ?」

兄「うん。今一年生。吹部自体は中学から続けてたから、ある程度は演奏できるよ」

友「ふうん。実際のとこ妹ちゃんの演奏楽しみ?」

兄「もちろん。中学の時からあいつの演奏会は休まず見に行ってるよ。もっとも、こっちの大会と被った時は両親に撮ってきてもらったビデオで見てるけど……」

友「ゲッ! マジか。そこまでされて妹ちゃん嫌がったりしないの?」

兄「え~そんなことないって。口では嫌がってるようなこと言ってても最後にはお礼言ってくれるし。喜んでくれてると思うけどなぁ」

友「でもさ、昔はともかく今ぐらいの年頃ならそういうの鬱陶しいと思ったりするんじゃないの?」

兄「そうかな?」

友「ほら、なんて言っても思春期だし。身近な異性のことが気になり出すわけじゃん。もし対応間違えてたりなんてしてたらすぐに嫌われるぞ」

兄「そ、そうかな……?」

友「ああ、俺の友達に妹いるやついるけど、最近急に余所余所しくなったってことがあったりしてさ。
 友達を家に呼ぶときは外に追い出されたり、学校であっても話しかけたりしないでとか言われてるらしいぞ」

兄「うそっ……」

友「だからお前も一度妹と自分の関係性を考えた方がいいと俺は思うぞ」

兄「う、うん。わかった、ありがとう友」

友「おう。いいってことよ」

先生「こらっ! そこ二人、何サボってる。早く練習に戻れ!」

兄「あ、すみません!」

友「すぐ戻ります!」

……



妹「ただいま~。あ~疲れた」グデーッ ダラダラ

母「おかえりなさい。もう、帰ってきてすぐにダラけないの。どうせなら自分の部屋でゆっくりしなさい」

妹「え~いいじゃんか。今そんな体力残ってないんだもん」

母「だからってソファに寝転がらない。はしたないわよ。この間もそうやってゴロゴロしててそのまま寝ちゃったじゃない」

妹「お風呂にはちゃんと入ったからいいじゃんか~」

母「そんなことしてると風邪引くわよ?」

妹「大丈夫だって、あたし病気には強いから!」

テクテクテク

兄「母さん、お腹減った。ご飯まだ?」

母「もう少しよ。兄、お皿並べといてくれる?」

兄「わかった。……なんだ、妹。帰ってたのか」

妹「なによ、帰ってちゃ悪いの?」

兄「いや、別にそんなことないけど。というか、お前女の子なんだからそんな格好してるなよ。パンツ見えてるぞ」

妹「うっさいな。妹のパンツわざわざ見るな変態」

兄「いや、見せてるのお前だろ」

妹「~~ッ! うっさい、うっさい! 本当、デリカシーないんだから! だいたい、自分だっていっつもパンツ一丁じゃない!」

兄「いや、俺はいいだろ。男だし」

妹「なら、あたしだっていいじゃん。別に誰かに見られてるわけじゃないし」

兄「ああ……今度は胸元をさらけ出して。ちょっと、母さん。何か言ってやってよ!」

母「まあ、家の中だからいいんじゃないの?」

兄「ええ~」

妹「ほら、お母さんもこう言ってるしお兄ちゃんはもう黙っててよ!」

兄「むっ、しょうがないな」

母「はい、はい。言い争いはそこまで。ご飯できたわよ~」

妹「は~い」

兄「ん~」

イタダキマース

ゴチソウサマー

妹「それじゃ、あたし部屋に行くから。お兄ちゃん、勝手に入ってこないでよ!」

兄「わかった、わかった」

妹「絶対だからね!」

タッタッタッ

母「ふふっ。妹も年頃ね」

兄「え~。遅れてきた反抗期?」

母「違うわよ、ただの思春期よ」

兄「はぁ……こりゃ、友の言うとおり真剣に妹への接し方を考えた方がいいかも。なんか、ちょっと避けられてるみたいだし……」

……



妹「……はぁ、どうしよう。またお兄ちゃんに強気の態度取っちゃった。最近変だな……お兄ちゃんの前に立つとどうしても頭の中一杯一杯になっちゃうよ。
 今日もせっかくお弁当届けてくれたのに素っ気ないお礼しか言えなかったし。
 嫌になっちゃうな~こんなあたしの性格。とりあえず、今日もお兄ちゃんコレクション見て心を落ち着けよう」

ゴソゴソ タララタッタッターン

妹「ふふっ。iPodtouchに収めたお兄ちゃんの水泳大会の動画。それから、家族みんなで旅行に行った時の動画……。今日は、旅行の動画にしよっ」

兄『ん? 何撮ってるんだ?』

妹『……お兄ちゃんのあほ顔』

兄『なんだそれ。というか、せっかく外の景色綺麗なんだからそっち撮ったらどうだ?』

妹『一緒に撮ってるから別にいいの』

兄『ふうん、まあいいけど。……あ、妹髪の毛にホコリついてる。取ってやるよ』

妹『えっ!? ちょ、ちょっと!』

兄『こら、暴れんなって。ほら、取れた』

妹『ちょっと! 勝手に人の髪の毛触らないでよ!』

兄『え~。でも、ホコリついてたし。それにしても妹の髪の毛は綺麗だな』

妹『やっ、こらっ、ちょっと……』

サワサワ

兄『うん、触り心地がいい』

妹『あぅっ……。も、もう……やめてってばぁ』

妹「うぅっ……。この時お兄ちゃんに手で梳いてもらったの気持ちよかったなぁ。
 また梳いてもらいたいな……。
 んっ、んっ……お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!」

兄「ん? 呼んだ?」

妹「ちょっとおおおおおおおお!」

兄「妹、どうした~」

妹「ノック! ノック! もう! あれだけ勝手に入らないでって言ったじゃんか! なんで何度言ってもわからないの!!」

兄「いや、だってお前大きい声で俺の事呼んだから何か急ぎの用でもあるのかと思って……」

妹「ないから! そういう余計な気遣いいらないから! もう、早く自分の部屋戻ってってば!」

兄「はぁ~。わかったよ。でも、そこまで怒ることないだろ?」

妹「ホント、お兄ちゃんってば最低! そんなんだからいつまで経っても彼女とかできないんだよ。もっと、女の子に対しての接し方を学んだほうがいいよ!」

バタンッ

妹「あ、危なかった……。お兄ちゃんをネタにしてるのバレるとこだった~」

兄「……はぁ。またやっちゃった。ついさっき妹への接し方を改めようと思ったところなのに。これじゃ、ダメだ。やるなら徹底的にしないと……」

……



妹「おはよ~」

母「おはよう」

兄「……」

妹「? お兄ちゃん、おはよ」

兄「……ああ」

妹「なに、感じ悪い。もしかして昨日のこと怒ってるの?」

兄「いや、別に? それより俺もう行くから」

妹「えっ? ちょ、ちょっと……」

兄「行ってきまーす」

妹「……」ポカーン

母「あらあら。あなたたち喧嘩でもしたの?」

妹「う、ううん? してない……はずだけど」

母「そうなの? それにしては兄の態度がいつもと違ったわね。あの子普段なら妹が嫌がるくらい声かけるのに」

妹「だよね。どうしたんだろ……」

母「まあ、気が立っていただけかもしれないしそのうちいつものように戻るわよ」

妹「うん……そうだよね」

……



――学校――

妹友「妹ちゃ~ん、宿題のテキストが帰ってきたから一緒に教室に運ぶの手伝って~」

妹「うん、わかった。何が帰ってきたっけ?」

妹友「数学と古典だよ」

妹「ああ、あれね。面倒だったよね」

妹友「ホント、ホント。古典なんて原文の意味がサッパリだったよ。現代語訳にするの大変だったんだから」

妹「あはは。って、あれ? お兄ちゃんだ」

兄「お~い、友。これ運べばいいのか?」

友「そうそう。わりーな、兄。手伝わせちまってよ」

兄「そう思うなら今日の昼飯にパン一つ奢れ」

友「それは労働の対価が釣り合ってねえよ。せめておかずひと品ってとこだな」

兄「仕方ないな~。それで手を打つか」

テクテクテク

妹「あっ、おにいちゃ……」

兄「……」スッ

妹「へっ?」

テクテクテク

妹「ちょ、ちょっとお兄ちゃんってば!」

兄「……どうかした?」

妹「な、なんで無視するのよ!」

兄「別に、無視してないよ。一応こっちは用事があるから急いでただけ」

妹「で、でも。その、声かけるとかくらいは……」

兄「だって妹学校で話しかけられるの嫌なんだろ?」

妹「えっ? ど、どういうこと?」

兄「結構前に言ってたじゃないか。学校では家とおんなじようにあんまりベタベタ話しかけてこないでって。
 ちょっと最近思うことがあってお前への態度を改めようと思ったんだ。できるかぎり、妹の嫌うことはしない。家では余計なことを言わない。勝手に部屋に入らない。学校では気軽に話しかけない。
 あ~あと、なんだっけ。まあ、とりあえずこんな具合でこれから接してくからよろしく」

妹「えっ? えっ、えっ、えっ? ちょ、ちょっと待ってよ!」

兄「ごめん、教材運ばないといけないから」

妹「……」

妹友「い、妹ちゃん?」

妹「な、なによぉ……。お兄ちゃんの……ばかっ」グスッ

……



友「なあ、兄。お前何か凄い素っ気なかっけどよかったのか? 妹ちゃん悲しそうな顔してたぞ?」

兄「いや、これで大丈夫なはず。今までがベタベタしすぎてたんだって。妹も迷惑そうにしてたし。
 教えのとおりならこれでお互いに気持ちのいい適度な距離が取れるはずなんだ」

友「……ちなみにそれ何を参考にした?」

兄「ん? インターネットで見つけた兄妹間の適度な距離感ってサイト。そこに載ってたお互いに生活を過ごしやすくするための適度な距離とか接し方を参考にしたんだけど?
 妹もいつもみたいに怒ることなかったし、早速役に立ったよ」

友「お、おう。そうか……」

友(い、言えねえ。おそらくそのサイトに書いてあることは全く参考になってないかもしれないなんて……。これだけ自身満々に言い切られたら、俺には否定できねえ)

兄「~~♪」

友「……はぁ」

……



先輩「こらっ、妹! またミスしたわよ。今日何回目? やる気がないなら帰りなさい!」

妹「す、すみません」

先輩「一人が音ズレすると他があってる分目立つんだから。しっかりしなさい!」

妹「はい……ごめんなさい」

後輩「……妹ちゃん、ドンマイ」

妹「うん、ありがとう」

先生「はい、それじゃあ四小節前から始めるよ。一、二、三……」

……



妹「ただいま~」

母「おかえりなさい。あら、今日はいつも以上に元気ないわね」

妹「うん。ちょっと色々あって……」

母「そう。もうご飯できてるから早く食べちゃいなさい」

妹「わかった……。あ、そうだお母さん。お兄ちゃんどうしてる?」

母「兄? 別にご飯食べて部屋に戻ってるけど?」

妹「そ、そっか~」

母「なあに、まだ気まずいままなの? ホント、何したのよ」

妹「何もしてないよ……お兄ちゃんが勝手に変な態度取るようになったんだよ」

母「どうせ普段から文句ばっかり言ってたからお兄ちゃん我慢に限界がきちゃったんじゃないの?
 面倒見てくれてるんだからあんまり邪険にしたらお兄ちゃん可哀想よ。あの子妹のこと大好きなんだから」

妹「う、うん……。わかってるよ、それくらい」

母「なら謝るなりなんなりして早く今までどおりの二人に戻りなさい」

妹「はい……」

……



コンコン、コンコン

妹「お、お兄ちゃん。入っていい?」

シーン

妹「は、入るよ?」

ギィィ、バタン

妹「あれ? 真っ暗だ」

パチッ、ピカッ!

妹「あっ……お兄ちゃん寝ちゃってる」

兄「……」スースー

妹「もう、人が勇気を振り絞ってここに来たっていうのに……。ずるいよ、もう」

兄「うっ、ううん……」

ソソソッ

妹「お兄ちゃんの……ばかっ。なんで急にあんな態度取るのよ。あんなふうに接せられても困るだけだよ。
 でも、あたしがいつもお兄ちゃんにひどいことばっかり言ってたからある意味自業自得だよね」

ゴソゴソ

妹「ごめんね、口の悪い妹で。でも、ホントはあたし……お兄ちゃんのこと大好きだから」

ゴソゴソ ギュッ

妹「う~。お兄ちゃんの背中あったかいよぉ」ギューッ

妹「それにいい匂いするし……」スンスンッ

兄「んっ、ううん……」ゴロッ

妹「あっ……か、顔近っ! 近い、近い」

キョロキョロ 

シーン

妹「……」

兄「……」

妹「……」ゴクッ

妹「……今日あたしはお兄ちゃんのせいで傷つきました。そのせいで吹部の練習にも身が入らなかったし、先輩にも怒られました。
 だから今から行うことはあたしの心を乱したお兄ちゃんへの罰です」

ソーッ

妹「……ん……ちゅっ……んむっ、ちゅっ、ちゅぱっ……あむっ」

妹「……」

キョロキョロ

妹「や、やっちゃった……。とうとう妄想だけじゃなくて現実でお兄ちゃんに手を出してしまった……。
 ううっ、意識のないお兄ちゃんとキス。あたしのファーストキス……。
 罪悪感と血の繋がった兄とのキスで感じる背徳感。やめなきゃダメなのに、起きたら言い逃れできないのにやめられないよぉ。
 んっ……はむっ……ん~んっ。あっ、やんっ」

兄「ん……んんっ?」

妹「ううっ。大好き。お兄ちゃん、大好き。大好き。好き、好き、好き。
 素っ気ない態度とってごめんなさい。お兄ちゃんのこと変な風に言ってごめんなさい。
 気持ちいい、気持ちいいよぉ。そうだ……お兄ちゃん寝てるしこのままお兄ちゃんの手を使って……」ゴソゴソッ

兄「……」

妹「ううっ、興奮しすぎて身体火照っちゃってる。でも、お兄ちゃんの手がひんやりしててちょうどいいかも。
 えへへ~。お兄ちゃん~」

兄「……呼んだ?」

妹「……へっ?」

兄「……」

妹「……」

兄「何、してるの?」

妹「あ、はは、ははははは。えっと、その……」

兄「えっと、今キスしてたよね? それに、俺のこと大好きって……」

妹「あははははは。な、なんのこと?」

兄「妹……」

妹「うっ……うわ~ん。そうです、あたしお兄ちゃんにキスしたよ! 眠りについてるお兄ちゃんを襲ったよ!
 悪い? でもお兄ちゃんも悪いんだよ! 急にあんな素っ気ない態度とってさ、あたし嫌われたと思ったんだから!」

兄「え? なに、俺が悪いの?」

妹「そうだよ! お兄ちゃんが悪いんだよ! 困るの! あんな風に接せられたら。今までどおりに接してくれなきゃ嫌なの!」

兄「でも、お前いつもどおりだと嫌そうにしてたじゃんか」

妹「あれは照れ隠しだってば! 気づいてよ! 周りのみんなにあたしがお兄ちゃんが大好きなブラコンだって知られるのが恥ずかしいの!
 だからあんなふうにちょっと素っ気ない感じで接してたの!」

兄「え~紛らわしい。それじゃ、何だ? お前実は俺のこと大好きで、それを隠したいがためにあんな怒ってばっかだってことか?」

妹「そうだってば! これ以上は恥ずかしいから言わせないでよ!」

兄「なんだよ。俺お前が思春期になって俺のこと嫌がってるのかと思って適切な距離を見つけられるように頑張ったのに……」

妹「それが余計な気遣いなの! おかげでずっと気持ち抑えてたのにお兄ちゃんに手を出すなんてことしちゃったじゃない!
 もう、ダメだ~。明日からまともにお兄ちゃんと顔合わせられないよ」

兄「いや、ちょっ。落ち着け、妹」

妹「これが落ち着いていられるか! なに? 落ち着いたら責任とってくれるの! 兄妹なのに付き合ってくれるの?」

兄「……いや、別にいいぞ」

妹「できないでしょ! だって兄妹じゃ結婚できないもんね! そーだよね、お兄ちゃんは……って、えっ?」

兄「いや、だから。付き合っても構わないぞ」

妹「……えっ? どういうこと?」

兄「結婚はダメだし。周りの人、それこそ家族にも秘密になるけど、それでもいいなら付き合っても構わないって言ってるんだけど……」

妹「うそっ……」

兄「ホント」

ギューッ

妹「いひゃい」

兄「なら現実」

妹「えっ? えっ? ホントに、いい……の? 普通の恋愛じゃ、ないんだよ?
 おかしいんだよ? 世間からは認められないんだよ?」

兄「そうかもね」

妹「あたし、お兄ちゃんが思ってる以上に変態だよ?」

兄「そのカミングアウトは驚いた」

妹「そんなに簡単に今までの態度変えられないよ? 多分素っ気ない感じ、しばらく続くよ?」

兄「今更だ」

妹「ホントの、ホントにいいの?」

兄「うん。だって俺、昔からずっと妹一筋だし。何のためにお前の演奏会毎回見に行ってると思ってるんだよ。
 お前の晴れ舞台をお兄ちゃんの目に直に焼き付けるためだっての」

妹「そ、そうだったんだ……。えへへっ、嬉しいな」

兄「まあ、それじゃあ今から俺たちは秘密の恋人同士ってことで」

妹「うんっ。これからよろしくね、お兄ちゃん。
 あっ! でも、せっかくだから……」

ギュゥゥッ

妹「今度こそ、恋人として正式なキス!」

兄「はいはい。妹のお好きなように」チュッ

こうして、血の繋がった兄妹のカップルが誕生した。周りにその関係を秘密にしながらも、彼らは蜜月の日々を過ごしていく。
 ちなみに、定期演奏会を無事に終えた妹は、同じく水泳大会を無事に終えた兄と一緒に二人で混浴の温泉旅行に出かけましたとさ。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

男「幼馴染の」幼馴染「恋愛事情」

――幼年期――

幼馴染「おはよ~男くん!」

男「あ、幼ちゃん。おはよ~」

幼馴染「今日も幼稚園楽しみだね~」

男「そうだね~。それよりも、今日は何して遊ぶ?」

幼馴染「う~ん、何しようね、この前探検してたら遅くまで遊びすぎて先生に叱られたもんね」

男「だね~。それじゃあ、木登りとか? 追いかけっこは?」

幼馴染「やだよ~。それじゃあ男くんたちのほうが強いもん。お絵かきしよ~よ」

男「え~。だって、お絵かきってじっとしてなきゃいけないしツマンナイじゃんか。やだよ、そんなの」

幼馴染「そ、そんなこと言わないでよ……」

男「な、なんだよ……泣くなよ」

幼馴染「うっ……うぅっ……」

男「しょ、しょうがないな。それじゃあ、今日はお絵かきでいいよ」

幼馴染「ホントッ! うわ~、やった~」

男「あっ!? 嘘泣きだ! 騙したな~。やっぱりなし! なし!」

幼馴染「駄目だもん! なしはなし! もう〝ぜんげんてっかい〟できないから!」

ブロロロッ キキーッ プシュッ

男「あ、バスきた」

幼馴染「ホントだ~」

先生「男くん、幼ちゃん、おはようございます。今日は二人だけでここまで来たの?」

男「うん、そ~だよ。お母さんお仕事だから一人できたんだ~。ここから家も近いし」

幼馴染「わ、私は……」

先生「ん? 幼ちゃんどうかした?」

幼馴染「あ、あの先生ちょっとしゃがんで」

先生「はい、どうぞ。なあに? もしかして男くんには聞かれたくないの?」

男「なんだよ~。二人で内緒話なんてずるいぞ~」

幼馴染「いいの! 男くんは早くバス乗ってよ!」

男「チェッ。別にいいよ~だ。俺全然気にならないもんね」

タッタッタ

幼馴染「あ、あのね先生。私実は途中までお母さんと一緒に来たの。でも男くんにはいつも一人で来てるっていってるの」

先生「そうなの。それじゃあ先生は幼ちゃんが一人でここまで来てるってことにしておけばいいのね」

幼馴染「うん。お願い、先生」

先生「うん、わかった。それじゃあ幼ちゃんもバスに乗って。幼稚園までみんなで一緒に行こうね」

幼馴染「うん!」

 タッタッタ キィーッ バタン ブロロロロッ

――幼稚園――

男「ムッス~」

園児A「どしたの男。なんかあった~」

園児B「なんか怒ってるの?」

男「べっつに~。全然怒ってないし~」

園児A「ふ~ん。なら、サッカーしようよ」

園児B「そうだよ、今からみんなでやろ~って話ししてたんだ」

男「あ、いい……」

幼馴染『今日はお絵かきしよ~よ』

男(お絵かきするって言ってたけど、幼ちゃん俺を除け者にしたんだもん俺だって約束破っても文句ないよね……。うん、ない)

男「うん、いいよ。やろーぜ!」

……



幼馴染「先生~。男くん知らない?」

先生「男くん? そういえばさっき中庭に出ていったのを見たわね」

幼馴染「えっ? ホントに?」

先生「ええ。どうかしたの? もしかして一緒に遊ぶ約束してた?」

幼馴染「あっ……うん。今日ね、一緒にお絵かきしようって言ってたの。でも、男くん約束忘れてたみたい」

先生「そうなの? それは酷いわね。男くんが戻ってきたら約束を破ったこと怒らないとね」

幼馴染「ううん、いいの。男くん私と一緒に遊ぶより他の男の子たちと遊んでいる方のが楽しそうだもん」

先生「そう……。それじゃあ、今日は先生が男くんの代わりに幼ちゃんと一緒に遊んであげようかな~?」

幼馴染「あ、大丈夫。他の女の子達から一緒におままごとしよって誘われてるんだ。じゃあね、先生」

タッタッタ

先生「あら……そうなの」

……



ブロロロロッ キーッ プシュッ

先生「それじゃあ二人共、また明日」

男「うん。バイバイ、先生」

幼馴染「さようなら」

男母「先生、いつもありがとうございます。うちの子生意気なこと言ったりしていませんか?」

男「言ってないよ! もう、母さん早く帰ろーよ」

男母「ちょっとだけ待ってなさい。ほら、あんたは幼ちゃんと話でもしてたら?」

男「も~。早くしてよ~」

幼母「ほら、幼。あなたもちょっと男くんと話して待ってて」

幼馴染「う、うん……」

幼母「男くんにはいつも幼がお世話になって……」

男母「いえいえ、ウチの子こそ。迷惑ばかりかけて本当に……」

先生「どちらもいいお子さんですよ。この前だって……」

男「……」

幼馴染「……」

男(な、なんだよ。何か喋れよ~。もしかしてお昼のこと怒ってるのか?)

男「……幼……ちゃん」

幼馴染「えっ! なに? 男くん」

男「その……やっぱり怒ってる?」

幼馴染「えっと……」

男「だから、その……お昼のこと」

幼馴染「あっ……。ううん、別に怒ってないよ」

男「ホント?」

幼馴染「うん。だって、男くん他の男の子と遊んでる方が楽しそうだもん。
 それに私と一緒に遊んでるといつもからかわれるよね。あれ、ホントは嫌じゃないの?」

男「それは……」

幼馴染「だからね、男くん無理に私と遊んでくれなくても大丈夫だよ?」

男(確かに幼ちゃんの言うとおり他の男の子たちから冷やかされたりするけど……)

男「でも、俺は幼ちゃんと遊んでるのも楽しいよ!」

幼馴染「えっ?」

男「確かに、今日は約束破っちゃった俺が悪かったし、みんなからからかわれたりもするけど……。俺、幼ちゃんとも一緒に遊びたいから!」

幼馴染「男くん……」

男「だから、これからも一緒に遊んでいこうよ」

幼馴染「……うんっ! これからもずっと一緒にいようね!」

男「う、うん」

男(なんだか、違う意味に捉えられたような気がしたけれどまあ、いいか。ちゃんと謝れたし幼ちゃんの機嫌も良くなったし)

男母「それじゃあ、お話もこれくらいにしておきましょう。先生も仕事中ですし」

幼母「そうですね。それじゃあ、先生また」

男母「男~帰るわよ~」

幼母「幼、あなたも帰りますよ」

幼馴染「うんっ!」

男「はーい」

……



――青年期――

男「……なんて子供時代もあったな~」

幼馴染「ちょっと、何アルバム見てしんみりとしてるのよ」

男「いや~、そういえば幼もあの時は可愛かったよなと思って。
 いっつも俺の後ろについては『男くん! 男くん!』なんて言っちゃってさ」

幼馴染「はぁ~。そりゃね、あたしだってまだ小さかったしあの頃近所に住んでいた同じ年代の子で仲が良かったのあんただけだったんだから仕方ないんじゃない?」

男「あの頃は自分の呼び方も『私』だったのに、今じゃあな」

幼馴染「なによ。そんなにその言い方がいいなら今からでも変えてあげるけど?」

男「やってみて」

幼馴染「いいわよ。ん、んんっ。
 ……男くん! 私、今度新しくオープンするカフェに行ってみたいんだけれど一緒に行ってくれない?」

男「……」

幼馴染「……」

男「ないな」

幼馴染「ないわね」

男「それはともかくとして、カフェ行きたいわけ?」

幼馴染「ん~どうだろ。ここ最近甘いもの食べに行ってないしそれが目的で行きたいのと、新しく店ができるってことで話の種に行ってみたいっていうくらいかな。気が向いたらって感じ」

男「ふ~ん。ま、こっちの予定が合えば行けるけど?」

幼馴染「何? 今そんなにバイト忙しいの?」

男「まあ、夏だしな。飲食店はこの時期はお客がわんさかくるのよ」

幼馴染「大変ね~。でも欲しかったバイクも買ったんだし、そんなにお金稼がなくてもいいんじゃないの?
 あんまりバイトばっかりやってると成績も下がる一方だよ」

男「ぐっ……それに関しては返す言葉がない。俺もさ、バイク買ったらそこで終わりだと思ってたんだよ。満足しちゃうってさ。
 けどな、考えが甘かった。バイクは買ってからが本番だった……。
 本体以外にウェアやブーツ、ツーリングのグッズにバックパックやらなんやら……。
 それに加えて他の人のバイクを見て自分のバイクをいじりたくなりパーツが欲しくなりと……ガソリン代だってタダじゃねーし、金がいくらあっても足りないんだよ」

幼馴染「なにそれ、それじゃあお金なんて貯まらないじゃない」

男「ふっ、バイク乗りは宵越しの金は持たないのさ」

幼馴染「カッコつけても金欠なのは変わらないわよ」

男「……だな。にしてもあちーな。年々気温高くなってねえか?」

幼馴染「そうね~。一時期は温暖化、温暖化と馬鹿みたいに騒がれてたけど、あたしたち一般人には何で気温が高くなってるのとかわからないし、過ごしやすければどうでもいいかもね~」

男「クーラー入れようぜ~。へい、リモコン」

幼馴染「あんた自分の部屋にクーラーないからって毎日人の部屋に押しかけるのやめてよね。はい、パス」

男「ほい、サンキュー。それに関しては申し訳ないと思ってるからこうして毎度差し入れ持ってきてるんだろーがよ」

幼馴染「それもそうね。あ、買ってきたアイス取ってきて」

男「え~、せっかくクーラー入れたのに?」

幼馴染「涼しくなるまで時間かかるでしょ。どうせ部屋が涼しくなったら外に行きたくなくなるんだから今のうちに取ってきてよ」

男「しょうがねえな~。はいはい、幼さんの言うとおりに致しますよ」

ギィィ、バタン

幼母「あら、男くんどうしたの?」

男「あ、幼母さん。いえ、幼のやつにアイス持ってきてくれって言われて」

幼母「あ~そうなの。溶けちゃうといけないから冷凍庫にしまっておいたからそこから出していってね」

男「どうもすいません。それじゃあ」

ギィィ、バタン

男「ふぉい、あいふ」

幼馴染「ちょっと、アイス食べながら話さないでってば。溶けたアイスが床に垂れたら掃除するのが面倒なんだから」

男「悪い、悪い」

幼馴染「もう……。冷たっ! それに固っ!」

男「そりゃ冷凍庫入ってたからな」

幼馴染「まあ、まだ部屋も冷たくなってないしすぐに柔らかくなるわね。あ~あつ~」

男「……お前よく男の前で胸元開けれるよな。恥ずかしくねえの?」

幼馴染「ん~まあ他の男子とかの前だとやらないよ? だって、みんな目付きいやらしいもん」

男「やっぱ女子ってそれ系の視線には敏感なわけ?」

幼馴染「まあね。あんだけ露骨にチラチラと見られりゃ気づくわよ。男子って馬鹿よね、汗で制服が透けてるとか風でスカートが揺れてるだけで視線が急に変わるんだもん」

男「しゃーない、男ってもんはそういう生き物だ」

幼馴染「というか、あたしからしたら体育の時間で女子が更衣室から戻ってきても普通に教室で着替えをできる男子の方が信じられないんだけど」

男「まあ、そのへんが男女の感性の違いじゃねえか? 俺たちは別に着替え見られても恥ずかしくねえし」

幼馴染「見てるこっちのが恥ずかしいのよ! ったく、もう……」

ミーンミンミン ジージジジジ

男「……暑いな~」

幼馴染「そうね~」

男「夏だな~」

幼馴染「そうね~」

男「夏といえばさ~」

幼馴染「ん~?」

男「お前今年の夏祭りどうする予定?」

幼馴染「今んとこ未定~。男は~」

男「わかんね~。とりあえず男子メンツでまた行動になるかも。最も裏切り者が出なかったらの話だけどな~」

幼馴染「ふ~ん。私はどうだろ。去年女子だけで行動して散々ナンパにあったからもう鬱陶しくて嫌なのよね~」

男「あ~その話な。夏祭り終わって家帰ってきた後に散々愚痴聞かされたの覚えてるわ」

幼馴染「もう、本当に面倒くさかったんだから! こっちは拒否してるのに何度もしつこく声かけてさ~。お酒とか勧めて持ち帰りする気ミエミエなのよ」

男「まあ、男としては夏は女の子との出会いの時期なわけですよ。大目に見てやってください」

幼馴染「被害があたしに及ばなければね」

男「面目ない」

幼馴染「そういえばさ、話は変わるけど男この間告白されたんだって?」

男「ゲッ! どっからその話聞きつけた……」

幼馴染「女友ちゃん経由。あたしと男が仲いいからって女ちゃんとの関係を色々と取り持ってくれとか本当に付き合ってないのかと何度も確認されました」

男「お、おう……。そりゃなんというかすまんかった」

幼馴染「別にいいけどさ。これだけ長い間一緒に過ごしてれば周りも勘違いしてもしょうがないし。
 実際何度もあんたと付き合ってるかどうか聞かれたし」

男「え! マジか。もしかして俺ってモテる?」

幼馴染「いや、そういうことじゃないから。仲が良すぎるから興味本位で聞いてくる子が多いってだけ」

男「……だよな~。実際告白されるのなんて数える程しかないしな」

幼馴染(ホントはあんた目当ての子が結構聞いて来るってのもあるけどね。
 というより、告白されるのが〝数える程しか〟なんていうのは他の男子が聞いたら怒るってわかってないのね)

幼馴染「それで、女ちゃんの件はどうするの? 煮え切らない態度は逆に相手を傷つけるよ」

男「う~ん、俺としては付き合うってのがなんとなくピンと来ないんだよ。実際に去年少しの間だけだけど付き合ったことあったじゃんか」

幼馴染「……そうだったね」

男「あの時の彼女さ、色々と束縛が激しくて幼とかと遊ぶのもすげえ嫌がられたわけよ。何よりも自分優先じゃなきゃ嫌だって子でさ。
 まあ、そういう束縛が嫌で別れたんだけど、あれが付き合うってことなら俺別に付き合うってこと嫌だなって思っちゃったんだよな」

幼馴染「ふ~ん、まあ結局のところ男が決めることだから好きにすればいいと思うけど」

男「まあ、もう少し考えてみるよ。向こうも真剣に告白してくれたんだから、こっちも真剣に考えるのが当然の対応だし」

幼馴染「そう……。頑張って」

男「おう。んじゃ、今日はそろそろ帰るわ。あんましダラダラしてたら帰るの遅くなりそうだし」

幼馴染「ん、それじゃまたね。差し入れ期待してるから」

男「それ遠まわしにまた家にこいって言ってるのか? とりあえず今度はジュースかお菓子でも買ってくるわ。
 あ、そうだ。それとカフェの件空いてる日にちが確認できたらまた連絡するわ
 それじゃ!」

タッタッタッ

幼馴染「は~、ようやく男帰ったわね。全くもう、ほとんど毎日のように家に来てこっちだって都合があるっていうのに……。
 喉渇いたな~ジュースでも取りに行こ~」

ギィィ、バタン

幼母「あら、幼。男くん帰ったわよ」

幼馴染「知ってる~。どうせまた暇になった来るでしょ」

幼母「あらそう。それよりあなた何でそんなににやけてるの? 何かいいことでもあった?」

幼馴染「べっつに~。暑い中の差し入れがありがたかっただけだってば」

幼母「そう……。それなら、そういう事にしておくわ。それにしてもあなた男くんとはまだ付き合ってないの?」

幼馴染「なによ、別にいいじゃない。大体私たちは幼馴染ってだけで彼氏彼女じゃないんだから」

幼母「もったいないわね、男くんあんなにかっこよくなってるのに。他の女の子から告白とかされてるんじゃないの?」

幼馴染「まあね~。実際、今私の友達が一人告白の返事待ちだし」

幼母「ちょっと……あなたそれでいいの?」

幼馴染「いいわよ別に。だって、結局決めるのはあたしじゃなくて男だし」

幼母「他人事みたいに言って……後悔しても知らないわよ?」

幼馴染「あ~もう、うるさいな。ここ暑いから部屋戻る」

幼母「ちょっと、幼!」

タッタッタ ギィィ、バタン

幼「……」

男『その……さ。俺たち、結構付き合いも長いし、仲もそう悪くないじゃん? それで、幼さえよかったら俺と……』

幼馴染「……もう知ってるよ、どれだけ後悔するかくらい」

……



男「あ~あちぃ。死にて~、海行きてえ~」

友「んだよ、男。さっきからそればっかりじゃん。てかバイクあるんだからツーリング行こうぜ。お前もう免許取得から一年経ったんだから二人乗りできるだろ」

男「アホ、何が悲しくて夏に男と二人でバイクに乗らなきゃいけないんだよ。どうせなら女の子の胸の感触を楽しみながら走りたいわ」

友「それは確かに。こうわざとスピードをあげて密着状態を作り出して『しっかり掴まっておかないと危ないから』『う、うん。それじゃ……』とかいう会話を繰り広げてギュッ! ってしてもらうのとか男の夢だよな」

男「それな。あ~、でも似たようなことなら幼とやったな」

友「おい、マジか! てめーふざけんな!」

男「っても、そんな夢のあるような会話じゃねえぞ?
『ねえ、男~。これ背もたれないの?』『ない』『腕疲れたから掴まっていい?』『どっちでもいいぞ~』『それじゃ』って感じ」

友「でも胸の感触は楽しんだんだろ?」

男「それは……まあ」

友「死ね!」

男「ちょっ、クッション投げんな! それゲーセンで二千円かけて取ったやつなんだぞ!」

友「知らんわ! 俺が二千円やるから幼ちゃんの胸の感触を俺にも味わわせろ!」

男「俺に言うんじゃねえよ! やったらお前セクハラ……いや、この場合は売春になるのか? どっちにしろ捕まるぞ」

友「くっ……一時の快楽に任せて捕まるか。我慢して動画に走るか……。迷う、迷う……」

男「どっちにしろそんなこと幼が許可しねえだろうけどな」

友「だよな~。あ~ちくしょう! 彼女欲しい!」

男「まあな~」

友「同意してるけどお前こないだ告白されただろうが! 彼女作れるだろうが!」

男「あ、うん」

友「くそっ、サラリと肯定しやがって。んで? どうすんの。女ちゃんって学年の中でも結構可愛い部類に入るけど」

男「考え中。前回の件でちょっと付き合うってことに思うところがあって」

友「ふ~ん。俺がお前の立場なら即OKするけどな」

男「だよな~。俺もそうすると思ってたんだけど、思っていた以上に面倒な性格だったみたいだ」

友「なんにせよ、お前の好きなようにしたらいいさ。結局自己責任なわけだし。告白を断ってお前の評判が悪くなっても俺は一向に構わん」

男「うわ、ひっで~。てめーふざけんなよ~」

友「ちょっ、クッション投げんな! さっき大事とか言ってただろ」

男「俺のクッションを俺がどう扱おうと俺の勝手だ」

友「てめ~。こうなったらゲームで勝負つけようぜ!」

男「いいぞ、何する?」

友「スマブラでもいいし、ウイイレにするか? それともデューティーのキル数で勝負する?」

男「いや、久しぶりにマリカーやりたい」

友「んじゃ、そうすっか」

男「さてと、覚悟はいいか?」

友「お前こそ、泣いて謝っても許してやんねえからな」

男「先に行っておくがいくらイラついてもリアルでの乱闘はなしな」

友「おう。前に桃鉄やってそれになりかけたからな」

男「よし、それじゃ」

友「勝負!」

……



幼友「幼ちゃん、幼ちゃん」

幼馴染「ん~どうした?」

幼友「ね、ね。友くんのこと男くんから聞いておいてくれた?」

幼馴染「あ~、ごめん。すっかり聞くの忘れてた」

幼友「ひどいよ~。ちゃんと聞いてくれるって約束したのに」

幼馴染「ごめん、ごめん。まあ、どうせ近いうちに男も家に来ると思うしその時に聞いておくね」

幼友「う、うん」

幼馴染「どうかした?」

幼友「え、ううん。何でもないよ」

幼馴染「なによ~、言いたいことあるならハッキリ言いなさいよ~」

幼友「う~ん、それじゃあ聞くけど、幼ちゃんと男くんって本当に付き合ってないの?」

幼馴染「ない。というより、そんなこといつもあたしと一緒にいる幼友ちゃんが一番知っているんじゃない?」

幼友「それは……そうだけど。でも、二人を見てると不思議なんだもん。いつ付き合ってもおかしくないのに全然そうなる気配がないし。
 それに、これは私の勝手な思い込みだけど、なんだか二人共そうなることに一線を置いてるような気がするんだ」

幼馴染「……」

幼友「幼ちゃん?」

幼馴染「あ……ううん。何でもないよ。まあ、こんだけ付き合いが長かったらお互いのいい面も悪い面も恥ずかしいところも色々と見てるしね。
 彼氏彼女なんて言われてもピンと来ないんだよね」

幼友「そうなんだ。でも絶対に付き合ったらお似合いだと思うけどな、二人共」

幼馴染「うっ……。あ~もう! この話これ以上は禁止! ほら、早く次の店行こっ! 今日は幼友ちゃんの服見繕いにいくんだから!」

幼友「待ってよ幼ちゃん!」

タッタッタッ

幼馴染(今更……無理だよ。だって、だって男とそうなれる可能性を壊したのはあたしなんだから……)

……



――少年期――

幼馴染「男~。今日男の家行ってもいい?」

男「あ~今日部活だからパス。帰ったら疲れて寝るだろうし」

幼馴染「了解~。それじゃ明日は?」

男「明日も部活」

幼馴染「ん~それじゃあ休日」

男「休日も……」

幼馴染「ちょっと、それならいつ空いてるのよ!」

男「怒んなよ……こっちだって毎日部活で疲れるんだから。というか、なんの用事だよ」

幼馴染「あ~うん。実はさ、今料理部で創作料理作っててまた味見してほしいな~って」

男「それ毒見の間違いだろ。前に創作料理作ってた時も奇抜なもん作ろうとして失敗したろうが……。
 しかも捨てるのは勿体ないからって食わされたの俺だし」

幼馴染「別にいいじゃない。部活帰りに減ったお腹を満たしてあげたでしょ? それに成功作だって多かったじゃない」

男「まあ、そうだけどさ……」

幼馴染「なんだか歯切れが悪いわね。というより男、最近付き合い悪くない? もしかしなくてもあたしのこと避けてるでしょ」

男「バッ! んなこたねえよ」

幼馴染「嘘。だって、最近全然一緒に帰ってくれないし、家にだってあんまり来なくなったもん。
 お母さんからも何度も『男くん来ないの? 喧嘩でもした?』とか聞かれてちょっとうんざりしてるのよ」

男「知らねえよ……。というか、こっちもいろいろ忙しいんだよ」

幼馴染「ふ~ん、まあいいけど。それでもたまには家来なさいよ。あんた来るとお母さん喜ぶんだから」

男「わかったよ。また、今度行くよ」

幼馴染「ち、か、い、う、ち、に」

男「はいはい、近いうちにいきますよ」

幼馴染「ん、了解。待ってるからね」

男「……おう」

タッタッタッ

男「……はぁ。幼のやつ人の気持ちも知らないで。あ~もう、部活だ、部活!」

……



ファイオーゼッ! オッ! ゼッ オッ! ゼッ!

友人A「あ、サッカー部だ」

友人B「ホントだ。すごいよね、毎日毎日外周走らされて筋トレして、その後に普通の練習メニューやってるんだもんね」

友人A「そういえば男くんもサッカー部だったよね、確かレギュラーにも選ばれたって」

幼馴染「うん、確かそんなようなこと言ってた」

友人B「二年生になってレギュラー取った子少ないんだよね。三人位って聞いたよ。うちの学校って結構サッカー強いからすごいよね~」

幼馴染「どうだろ? でも男は嫌がってたよ。なんか先輩との関係が悪くなりそうでとかって」

友人A「あ~確かに。先輩からしたら後輩に自分の居場所取られてるみたいで嫌だろうね」

友人B「でも、しょうがないよね。その先輩たちの中には同じようなことをしてきた人もいるだろうし。
 男くんたちだって今年の夏に先輩たちが引退したら後輩に同じような目に遭わされるかもしれないしね」

幼馴染「文化系の部活と違って体育会系は実力主義だもんね。しょうがないといえばしょうがないよね」

友人A「……ところで話は変わるけど、幼ちゃんって男くんと付き合ってないの?」

幼馴染「ないよ。もう、このセリフ聞くの何回目だろう。いい加減聞き飽きたんだけど」

友人B「え~、でもあれだけ仲がよかったら普通はそう思うよ~。だって、一時期なんて登下校も一緒だったし、買い物とかも一緒に出かけてたんでしょ?
 今だって幼ちゃんの作った料理とか男くんが食べてるんだし。付き合ってると思われても仕方ないよ」

友人A「そうそう。それにこうやって言われるのが嫌ならなおのこと付き合っちゃえばいいのに。そうすればもう何も言われないよ」

幼馴染「付き合うってそんなことなの? 別に一緒にいる時間が長ければこれくらい普通だよ。
 なんていうか……そう! 兄妹みたいなものだよ。あたしと男の関係は。向こうも多分そう思ってるんじゃない?」

友人B「そうかな~? 幼ちゃんはそう思ってても男くんはそう思ってないんじゃない?
 この間とか他の男子に幼ちゃんとの関係聞かれて、確かに否定はしてたけどまんざらでもなさそうだったし」

幼馴染「え~。ない、ない。それはないよ。だってあたし、自分が男とキスしたりするとことか想像できないもん」

友人A「ふ~ん。そうなんだ。じゃあ、幼ちゃんは男くんとは付き合う気がないんだ」

幼馴染「ま、ね。とりあえずこんなこと話しててもしょうがないし、別の話でもしよ」

友人B「う~ん。なんだか腑に落ちないけど幼ちゃんがそう言ってるなら……」

幼馴染「そういえば、昨日テレビでさ……」

幼馴染(あたしと男が付き合うって、なんでみんなそんな風に思うのかな? お互いにそんなことなんて考えてないのに、迷惑なことこの上ないよ。
 ま、あたしは男とこれからもダラダラと楽しい毎日が過ごせればいいや)

……



ガラッ、ビシャッ

男「ん?」

幼馴染「あ、男。なに? 部活終わり?」

男「お、おう……。まあな」

幼馴染「ちょっと、なんでキョドるのよ。変な男」

男「うっせえな。そっちも部活終わりか?」

幼馴染「うん。元々荷物は調理室に持っていってたんだけど教室に忘れ物したの思い出して戻ってきたんだ」

男「そっか……」

幼馴染「? なに、妙に歯切れ悪いわね。何かあった?」

男「いや、別に……」

幼馴染「ふ~ん。まあ、いいけど。あ、そういえば創作料理決まったから今週末家来てよ。
 今回は絶対に上手くいく自信があるから期待していいわよ。なにせ……」

男「なあ、幼……」

幼馴染「な、なに……?」

男「あの、さ。ちょっと話あんだけど」

幼馴染「うん」

男「……」

幼馴染「……」

幼馴染(え? ちょっと、何この空気。なんか……やだ。男も変だし、これってもしかして……)

男「えっと、そのなんつーか。ああ、くそ。一応言っておくが俺は真剣だからな!
 その……さ。俺たち、結構付き合いも長いし、仲もそう悪くないじゃん? それで、幼さえよかったら俺と……」

幼馴染「待って」

男「つきっ……なんだよ。こっちは一杯一杯なんだから全部聞いてからにしてくれよ」

幼馴染「……」

男「ふう……はあ……。幼、俺と……付き合ってくれないか?」

幼馴染「……」

男「……」

幼馴染「……」

男「いや、ちょっ、なんか言えよ! なんかここの空気重いんだけど。なに? そんなに予想外だった?」

幼馴染「……」

男「いや~お前なら気づいてると思ったんだけどさ。なんせ俺たち付き合い長いじゃんか。大抵のことなら口にしなくてもわかるだろ?
 だから今回の件もてっきりお前は気づいてると思ってたんだけど……そうじゃ、なかったみたいだな」

幼馴染「ごめん……」

男「そこで謝るなよ! なんか振られたみたいじゃねえか!」

幼馴染「ごめん」

男「えっ? もしかして、これ返事? うわ、マジか。俺振られたのか~。これはキツいわ。PK外して俺のせいで試合に負けた時並にキツいわ」

幼馴染「ごめん、男。あたし、あんたのことそういう目で見たことなかった」

男「……そっ、か。いや、悪い悪い。急にこんなこと言ってな。お前も迷惑だったよな? 空気読めなくてスマンな。
 ごめん……今までどおりの俺になるように頑張るから」

幼馴染「男……」

男「……。わり、すぐには無理かもしんねえ。ちょっと、思ってたよりダメージでかいみたいだわ」

 タッタッタッ

幼馴染「男ッ!」

ガラッ、ビシャッ!

幼馴染「男……泣いてた。そりゃあ、そうか。振られたら誰だってそうなるよね。
 あたし、男のこと振っちゃったんだ。でも、しょうがないよね。あいつがあたしのこと好きだなんて思ってもみなかったもん。
 振っちゃったけど、男は今までどおり戻ってくれるって言ってくれた。だから、あたしたちの関係は今までどおりだよ……。
 でも、なんでだろ。何でもないはずなのに胸が……痛いよ」

……



二週間後

幼馴染「ねえ、男」

男「……幼」

幼馴染「一緒に、帰ろ?」

男「悪い、まだ無理だ」

幼馴染「うん、ごめん」

一ヶ月後

男「おいそこサボってんなよ。先生に見つかったら怒られっぞ」

後輩「あ、先輩。すんません!」

男「どうせなら、もっとうまくやれよ。なんなら俺が上手なサボり方教えてやるぞ」

後輩「えっ! マジっすか!」

男「おう、実はな……」

後輩「ちょ、先輩。後ろ、後ろ」

男「ん? あっ! 先生。いや、サボってないです。実はちょっと後輩の指導を……。はい、すんません!」

ワイワイ、ガヤガヤ

幼馴染「男……部活頑張ってるなぁ」

二ヶ月後

幼馴染「男、まだ……駄目?」

男「ごめん、今日はツレと約束があって」

幼馴染「うん……私こそごめんね」

男「うん……」

タッタッタ

幼馴染「……」

……



友人A「最近幼ちゃんと男くんってなんだか余所余所しいよね。喧嘩したの?」

幼馴染「う、うん。ちょっと……」

友人B「……はぁ。ねえ、幼ちゃん。私聞いたよ?」

幼馴染「えっ? 何を」

友人B「男くんのこと。振ったんだって?」

幼馴染「えっ……」

友人A「それ、ホント?」

友人B「うん、私も最近聞いたんだけどね。教室じゃ今までどおりの接し方をしたから気がつかなかったけど男子がこの話をしてるのたまたま聞いちゃったんだ」

友人A「あ~なるほど。それで最近二人共ギクシャクしてたのね」

友人B「というか、幼ちゃんそれはちょっとひどいと思うよ。振られた男くんからしたらそっとしておいて欲しいものなんじゃない?」

幼馴染「け、けど男も今までどおりにしてくれるって言ってたし。まだちょっと時間はかかるみたいだけど……」

友人A「そう。でもそれ男くん可哀想だよ。振られた相手に今までどおり接するのってすごく辛くて勇気のいることだよ?
 幼ちゃんと男くんの付き合いの長さも知ってるし、二人がどれだけ仲が良かったのかも知ってるけど、変わらない関係なんてないんだよ?
 もし、本当にこれから先幼ちゃんと男くんが元の様な関係に戻ってもそれは昔とは違うものだし、まして告白を片方がしてたなら尚更だと思うけどな」

幼馴染「そう……だよね」

友人B「まあ、私たちは部外者だからこれ以上は言えないけど、幼ちゃんももうちょっといろいろ考えてみてあげて。男くんのためにも」

幼馴染「うん、ありがと」

……



幼馴染「ただいま」

幼母「おかえり、幼。元気無さそうだけど何かあった?」

幼馴染「ううん、別に」

幼母「そういえば今日夕食の買い出しに出たら男母さんにあったわよ。男くん部活頑張ってるみたいね」

幼馴染「あ、うん。そうみたい」

幼母「そうみたいって、あなた他人事ね。そういえば、ここ最近男くん家にこないけれど喧嘩したの?」

幼馴染「まあ……そんな感じ」

幼母「馬鹿ね、どうせあなたが男くんが忙しいのに無理に予定を詰めようとでもしたんでしょ。いいから早く謝っちゃいなさい、男くんみたいないい子あんまりいないんだから」

幼馴染「むっ……なんであたしが悪いみたいになってるのよ」

幼母「さあ? 昔はともかく今の男くんがあんたを傷つけるようなことするとはお母さん思えないし。あの子あんたのことすごく大事にしてくれているんだから。
 貴重な幼馴染よね。いっそのこと付き合っちゃえば?」

幼馴染「……お母さんもそう言うんだ」

幼母「なに? 友達にもこのこと言われた?」

幼馴染「うん、散々」

幼母「そうなの、それで機嫌悪いのね」

幼馴染「ねえ、お母さん」

幼母「なあに?」

幼馴染「あたしと男って付き合わなきゃいけないのかな?」

幼母「変な子ね。別に無理に付き合う必要なんてないけれど」

幼馴染「でも、お母さんも友達もみんな付き合えばって言うよ?」

幼母「う~ん、他の子がどうかは知らないけれどお母さんは昔から二人のことをよく見てきているから付き合っていても不思議じゃないと思って言ってるだけよ」

幼馴染「付き合ったら今までと何か変わるの?」

幼母「そうね、特には変わらないと思うわ」

幼馴染「じゃあ、別に今までどおりでもいいんじゃないかな……」

幼母「そうね。でも、付き合うってことはその相手が自分の中の異性で特別な存在だって言うことなるからね。
 ほら、幼馴染っていう関係も特別かもしれないけれどそれはある意味付き合いの長さってことだけでしょ?
 でも彼女や彼氏になれば違う。付き合いはたとえ短くてもその人の中で相手はほかと比較できないような特別な存在になるのよ」

幼馴染「よく、わかんない」

幼母「それじゃあ、もっと簡単に言ってあげるわ。心の底からその相手を愛おしいと思ったり、傍にいたいって思うような人ができて、その相手と一緒になれる可能性があるのなら付き合うっていう選択肢は私はアリだと思うわ」

幼馴染「……わかった。ありがと、お母さん」

幼母「どういたしまして。あ、そうだ。夕飯もうすぐだから荷物置いたら準備するの手伝ってね」

幼馴染「は~い」

タッタッタ ギィィ、バタン

幼馴染「愛おしいと思ったり、傍にいたいって思うか。……少し考えてみようかな」

――夕飯後――

幼馴染「あ、これ懐かしい幼稚園の運動会だ。男この時転んで泣きそうになってたっけ」

幼馴染「こっちは小学校の水泳大会。男が勝ったおかげでクラスが優勝したんだよね。違うクラスなのにあたしも喜んで同じクラスの子に怒られたっけ……」

幼馴染「これは修学旅行か。男とあたし一緒の班になってみんなのまとめ役を二人で頑張ったな~」

幼馴染「あ、これ去年の……。思えばこの頃から男がちょっと素っ気なくなり始めたんだよね。この時にはもうあたしのこと意識してくれてたのかな……?」

幼馴染「……こうやって見返してみると見事に男と一緒の写真ばっかり。あたしってホント男ありきの生活を送ってたんだな」

幼馴染「でも……もしかしたらそれももうなくなっちゃうかもしれないんだよね。
 男がいない生活か……」

男『幼ちゃん、今日も一緒に遊ぼ!』

男『幼ちゃんって呼ぶのなんか恥ずかしいから今日から幼って呼ぶから!』

男『幼~一緒に帰ろーぜ』

男『へへっ、どうだ。一着だぜ。見直したか? 幼』

男『うげっ、なんだよこれ。完全に失敗作だろ。おい、食材に何使ったか教えろよ!』

男『ごめんな、幼』

幼馴染「……あれ? なんだろ、なんか……急に胸が痛くなってきた。それに気持ち悪くなって……。
 うっ、ううっ……。やだ、やだやだやだ。男がいなくなるなんてやだ。
 あたし、馬鹿だ。なんであんなこと言ったんだろ。ずっと傍にいてくれて、全然気付かなかった。あたし、こんなにも男のことが好きだったのに……。
 でも、あたしのせいで男を傷つけちゃった。どうしよう、もう取り返しがつかない。今更好きだなんて言えないよぉ。
 ごめん、男。ごめんね……」

……



三ヶ月後

幼馴染「……」

男「幼。おい、幼」

幼馴染「……えっ!?」

男「なに驚いてんだよ。ほら、久しぶりに一緒に帰ろうぜ」

幼馴染「おと……こ?」

男「お、おう。そうだけど?」

幼馴染「え? どうして? あたしのこと嫌いになったんじゃなかったの?」

男「は? お前何言ってんだよ。嫌いになんてなるわけねえだろ。ただ、ちょっと気持ちの整理が必要だったんだよ」

幼馴染「え? え?」

男「ちょ、せっかく落ち着いたんだから改めて説明させんなよ。仮にもこっちは振られた側なんだからさ。
 まあ、気持ちにもある程度整理ついたしこれからは今までどおり接するよ。悪いな、随分と長いこと素っ気ない態度とって。
 もう……大丈夫だから。ほら、帰ろうぜ」

幼馴染「あっ……うん」

男「なんだよ、元気ねえな。何かあった?」

幼馴染「ううん、何でもないよ。なんでも……」

幼馴染(あたしって本当にズルい。男がこうして前みたいに戻ってくれたことを嬉しく思ってるのに今じゃそれ以上を求めてる。
 自分で男のことを振ったくせに、今更また好きになって欲しいなんて思ってる。男はまたあたしに話しかけれるようになるのにこれだけ長い時間をかけたのに。そんな都合のいい話があっちゃいけない。
 だから、この気持ちを伝えることはあたしにはできない。あたしのために頑張って気持ちを整理してくれた男のためにも……)


男「幼~、おせーよ。はやくしろよー」

幼馴染「ちょっと待ってってば男。歩くの早いのよ、あんたは!」

幼馴染(そう。これで……いいんだ。昔みたいな幼馴染の関係性が今のあたしたちにとっては一番……)

……



――青年期――

夏祭り前日

幼馴染「あっ、男」

男「あれ? 幼じゃん。どうしたよ」

幼馴染「あたしは夕飯の買い物帰り。男は?」

男「俺はさっきまで友たちとサッカーやってた」

幼馴染「ふ~ん、そうなんだ。そんなに好きなら高校でも続ければよかったのに」

男「まあ、そういう選択肢もあったけどせっかくの高校生活色々と楽しんでおきたかったし。それにサッカーは人数揃えばできるからな」

幼馴染「もったいない。中学の時はあれだけ頑張ってたのに」

男「なんだよ、覚えてねえのか? 俺あの時誰かさんが試合の応援してくれるのが楽しみでサッカーやってたんだぜ」

幼馴染「えっ……?」

男「ま、あの時は俺のせいで色々とギクシャクしちまったからな~。そんなこんなで俺としちゃサッカーやる目的がなくなっちゃったわけだ」

幼馴染「その、ごめんね」

男「別に謝らなくてもいいぞ。未練あるかと言われるとそんなにないし。
 練習も滅茶苦茶熱心にやってたわけじゃないしな。程ほどにって感じで後輩たちとじゃれあってることもしょっちゅうだったもん」

幼馴染「でも最後の試合の時は負けて泣いてたじゃんか」

男「意味が違うっての! あれは、そう。これでもうキツイ練習から解放されると思うと嬉しくて泣いてたんだよ!」

幼馴染「ふ~ん。その割に部活引退してから、しばらく抜け殻のようにボケーっとしてたような気がするけど」

男「気のせいだよ、気のせい」

幼馴染「そういうことにしておいてあげる」

フラフラ ヨタヨタ

男「……幼、荷物貸せよ」

幼馴染「え?」

男「フラフラしてて危ないから持ってやるよ。ほれ」

幼馴染「あ、ありがと」

男「ん」

幼馴染「……」

男「……」

幼馴染「そ、そういえばさ。女さんへの返事どうしたの?」

男「あ~あれな。告白してもらって申し訳なかったけどやっぱ断った」

幼馴染「え? ……な、なんでっ!?」

男「ん~、やっぱ俺まだ付き合うとかいいかな~って思ってさ。友とか他の連中と馬鹿やってる方が楽しいし」

幼馴染「……そっか」

男「なに? もしかして付き合って欲しかったとか?」

幼馴染「別に。男の好きなようにしたらいいんじゃない?」

男「ま、それもそうだな」

幼馴染(……やだ。あたし嫌な言い方しちゃった。男、気を悪くしなかったかな。
 あたし嫌な子だな……。男が女ちゃんの告白を断って内心すごく喜んでる。今の男はもうあたしのこと〝女〟じゃなくてただの〝幼馴染〟としてしか見てくれてないって知ってるはずなのに)

男「おっ……着いたか。ほれ、荷物」

幼馴染「ありがと」

男「おう。それじゃまたな」

幼馴染「うん、またね」

男「……あ、そうだ一つ言い忘れてた。お前、夏祭り行くんならナンパに気をつけろよ? また愚痴を聞かされるのはもう勘弁だぞ」

幼馴染「心配してくれてありがと。そっちこそ変にハメを外しすぎないようにね」

男「はいはい。それじゃあな」

幼馴染「うん。荷物ありがと」

……



幼友『それじゃあ、男くんは女ちゃんを振ったんですね』

幼馴染「うん、そうみたい。なんか男友達とバカやってるの方が楽しいんだってさ。勿体ないことしたよね。あははは」

幼友『……』

幼馴染「あれ? 幼友ちゃん? おーい」

幼友『あの、ですね。これ幼ちゃんにだけ教えるんですけれど実は私昨日女友ちゃんから連絡が来たんですよ』

幼馴染「なに? もしかして一緒に女ちゃんを慰めて欲しいって感じ?」

幼友『まあ、内容はそうだったんですけれども。その、女友ちゃんが言うには女ちゃんが男くんに振られた理由は他に好きな人がいるからだってことだったらしいんですよ』

幼馴染「えっ……」

幼友『でも、男くんは幼ちゃんには違う理由を説明したんですよね。幼ちゃんに男くんが嘘をつく理由もないですし、もしかして男くんが女ちゃんに言った好きな人って……』

幼馴染「待って。違う! そんなのただの勘違いだよ。それに、男も女のあたしにはそういうこと言いづらかっただけだと思うよ。だから、きっと……」

幼友『幼ちゃん、なんでそんなに幼ちゃんが男くんに対して距離を取ろうとするのか私にはわからないですけど、自分の気持ちに嘘をついても辛いのは幼ちゃん自身ですよ?
 それに、せっかく機会があるのなら勇気を振り絞ってでも想いを伝えるべきだと思います。仮に傷つくことになっても、みんなそうやって真剣な気持ちを伝えてるんですから。
 自分の気持ちを誤魔化し続けるのはそういう人たちに失礼だと私は思います』

幼馴染「幼友ちゃん……」

幼友『ごめんなさい、少しお節介が過ぎました。私はこれ以上何も言いません。あ、それと明日は私一緒にお祭りにいけなくなりました。
 私も勇気を振り絞ろうと思ってるので。それじゃあ、できることならまた明日』

ツーツーツー

幼馴染「自分の気持ちを誤魔化し続けるのは失礼……か。確かにそうかもしれないね。
 ……よし、こうなったら思った通りに行動しよう」

幼馴染「すーはー。すーはー。……。
 あ、もしもし男? いや~あはは。用は特にないんだけど……。いや、ごめん。やっぱり用はちゃんとある。だから切らないで!
 あの、あのね? 明日の夏祭り、あたしと……一緒に行ってくれないかな?」

……



夏祭り当日

男「お~い、幼。迎えに来たぞ~」

幼母「あら、男くん。こんばんは」

男「こんばんは、幼母さん。幼のやつまだですか?」

幼母「そうね、まだちょっと時間かかるみたい。中で待っててもらえるかしら?」

男「あ、はい。それじゃお邪魔します」

幼母「幼~男くん来たわよ。まだ準備できないの?」

幼馴染「ちょ、ちょっと待って! もうちょっとで準備できるから!」

幼母「早くしなさいよ~」

幼馴染「わかった~」

幼母「全くもう……。あ、男くん今麦茶でも入れるからちょっと待っててね」

男「どうもすみません」

幼母「いえいえ、昨日の夜になって急に幼が夏祭りに行こうだなんて誘って。男くんも予定があったでしょうに」

男「実は一緒に祭りを見に行く友達が急に行けなくなったって連絡が入って困ってたところだったんですよ。
 だから、俺としても幼の誘いはちょうどよかったんでむしろ助かりました」

幼母「そう言ってもらえると助かるわ。それと、いつもあの子の相手をしてくれてありがとね」

男「こちらこそ、幼には料理ご馳走してもらったりでお世話になってます」

幼母「はぁ~。ホント、男くんうちの息子になってくれないかしら」

男「いや~どうですかね。幼が貰ってくれればそれも実現すると思いますが」

幼母「不甲斐ない娘でごめんなさいね」

男「こちらこそ魅力的な男子でなくて申し訳ない」

幼馴染「お母さんも男も何馬鹿なこと言い合ってるの?」

幼母「なに、単なる世間話よ。着付け、ちゃんとできた?」

幼馴染「う、うん。どうかな? 変じゃないかな?」

幼母「帯が緩んでるわよ。ほら、後ろ向いて」

幼馴染「ありがと。……って、男どうかした?」

男「いや……見違えたわ。なんというか浴衣マジックって本当にあるんだな」

幼馴染「何それ?」

男「浴衣を着ると女性が三割増で綺麗に見えるっていうアレ」

幼馴染「つまりあたしの浴衣姿に見惚れたってこと?」

男「有り体に言えばそうなる」

幼馴染「そ、そう……。ありがと」

男「お、おう……」

幼馴染「……」

男「……」

幼母「あらあら、一応ここにはお母さんもいるからイチャイチャするなら外に出てからにした方がいいわよ。うっかり何か口にしたら全部お母さんの耳に入るからね」

男「あっ! そ、そうですよね。すいません」

幼馴染「もう、お母さん! 変なこと言わないでよ」

幼母「変なこと言われたくなかったらさっさと祭りに行ってきなさい」

幼馴染「はい、はい。ほら、行こっ! 男」

男「ちょ、待てって。引っ張んなよ幼!」

幼母「……頑張りなさいよ、幼」

……



――河川敷――

ヘイラッシャイ シャテキドウダイ? ワタアメハイカガッスカー ヤキソバアルヨー

男「うわっ、予想通り人波がすごいな。こりゃ下手したらはぐれるぞ」

幼馴染「だね……」

男「ん~とりあえずはぐれないように手でも繋ぐか。ほらっ」

幼馴染「んっ」

男「……」

幼馴染「……なによ」

男「いや、幼なんかいつもと様子が違うなって思って。浴衣着てるからそう見えるのかな?」

幼馴染「そ、そうなんじゃない? あ、男。りんご飴売ってるよ、買おうよ!」

男「ったく、男女二人で出かけてるのにいきなり食事の話とかホント俺ら色気とかないよな。まあ、いいや。買おうぜりんご飴」

テクテクテク 

幼馴染(……しょうがないじゃんか。だって、今更告白なんてどうしたらいいかわかんないし、緊張するんだもん。こうして適当な話でもしてないと心が落ち着かないんだからさ)

男「ほれ、幼。これ俺の奢りな」

幼馴染「あ、ありがと……」

男「その代わりジュース奢ってくれよ。俺サイダーでいいや」

幼馴染「いいわよ。あたしもサイダーにしようかな……」

男「真似すんなよ~。というかお前炭酸飲料苦手だろうが」

幼馴染「うるさいな~。たまには飲みたくなるのよ。……っとと」

ゴチャゴチャ ワイワイ、ガヤガヤ

男「酷いなこれは。全然身動き取れねえ。お~い、幼もっとこっち寄れ」ギュッ

幼馴染「う、うん。ありがと、男」

男「おう」

ドキドキドキドキ

幼馴染「……」

男「ん~これじゃ息苦しいし、せっかくの祭りが楽しめないな。ちょっと人気の少ないところ移動するか」

幼馴染「……」

男「幼? おーい、大丈夫か?」

幼馴染「あ、うん。大丈夫、大丈夫」

男「人波に酔ったか? やっぱここから抜けたほうがよさそうだな」

テクテクテクテク

ヒュ~ ドンッ!ピカッ! ドン、ドンッ!

男「お、花火始まったみたいだな。いや~綺麗だな」

幼馴染「そうだね……」

男「……この辺ならだいぶ人も少なくなったし大丈夫だろ。幼、なんか飲み物買ってこようか?」

幼馴染「大丈夫。だから、どこにもいかないで」ギュッ

男「お、おう。わかった、傍にいる」

幼馴染「……」

男「……」

友「いや~楽しいな。今日はありがとうな、幼友ちゃん」

幼友「いえ……こちらこそ一緒に行こうだなんて誘いを急にして申し訳なかったです」

友「いやいや。むしろありがたかったよ。どうせ男は今頃幼ちゃんと一緒に祭りに着てるだろうし。そうなったら俺一人だったからさ~」

幼友「ふふっ。あの二人仲いいですもんね」

友「ホントにね~」

男「おっ……友だ。あの野郎、人には裏切って女と出かけたら許さねえとか言ってたくせに。よし、一度文句を言いに行ってやる」スッ

幼馴染「あっ……」

ギュッ

男「幼?」

幼馴染「男……行かないで」

男「……わかったよ」

幼馴染「……」

男「……なあ。なんか今日お前無理してないか? 様子も変だし、もしかして体調悪かったとか?」

幼馴染「ううん、違うよ」

男「思えばお前から夏祭り誘われるとかこれが初めてだよな。家族で行ったときは除いてだけど……。
 なんで急にこんなことしたんだ?」

幼馴染「それは……」

男「まあ、さっきの二人を見ればだいたい理由はわかるけどさ。幼友ちゃんから祭りのキャンセルでもくらったんだろ? んで、俺を誘ったと。
 まあ、俺だからいいけど他の男子に気軽にこんなことすんなよ? 前も言ったけど男子って生き物は単純だからすぐに勘違いするからさ」

幼馴染「……なんで」

男「ん?」

幼馴染「なんで、男は勘違いしないの? 幼馴染だから? 昔のことがあるから? あたしが誘った時点で男は何も期待しなかったの?」

男「幼、お前……」

幼馴染「ごめん、もう無理だよ。あたしこれ以上自分の気持ちを抑えられない。
 男、あたしあんたのことが好き。好き、大好き! 一緒にくだらない話をしたり、ダラダラと同じ部屋で過ごしたり、男と一緒に過ごす時間が大好き!
 昔男が勇気を振り絞って告白してくれたのに馬鹿だったあたしは振っちゃって。男はそんなあたしのために今までどおりに接してくれて……。
 でも、自分の気持ちに気づいちゃったから……だからこれ以上はただの〝幼馴染〟ではいたくないよ。
 お願い、男。一度は貰ったチャンスを自分で捨てちゃったあたしだけど、もう一度チャンスをください。
 あたしと……あたしと付き合ってください!」

男「……」

幼馴染「……」

幼馴染(ああ、男なんにも言ってくれない。そりゃ、そうだよね。こんな都合のいい話ないもんね。これは……振られちゃうかなぁ。
 あの時の男も、こんな気持ちだったのかな……)

男「……これ、告白と捉えていいんだよな?」

幼馴染「あ、あたりまえだって」

男「兄妹とかそういう感情じゃなくて、異性に向けた好きって言葉でいいんだよな?」

幼馴染「う、うん」

男「……そっか。……そう、か」

幼馴染「……男?」

男「わり、ちょっと嬉しくて……。いや、みっともねえ。もうさ、前の件で絶対こんな風になるの無理だと思ってたから……さ。
 だから……嬉しくて……」

幼馴染「泣いてるの、男? ごめんね、あたし前に男のこと傷つけたから……」

男「んなこというなよ。どんな関係であれお前の傍にいられて俺、嬉しかったんだぜ。
 しかも、こんなサプライズがあるなんて思ってなかったし……。
 やべえ、今最高に幸せだ。無性に叫びたい、幼の彼氏になれたことを叫びたい」

幼馴染「えっ! ええっ!? それはちょっとやめてよ。もし誰かに聞かれたら恥ずかしいよ」

男「いいんだよ。どうせ祭りだし、少しくらいハメはずしても誰も文句言われねえよ」

幼馴染「そういうことじゃなくてあたしが恥ずかしいんだってば!」

男「うおおおおおおおおおおおおお! よっしゃああ! 俺、とうとう幼と恋人になったぞ!!! 夏祭り最高だ! 幼の浴衣、最高だあああああああああああああ!」

幼馴染「やめてよ、男! もぉ~バカッ!」ポカッ

男「痛ッ! いや、でも痛いから夢じゃないな。うん、現実最高だ」

幼馴染「はぁ……。もう、こんなところ誰かに見られたらどうしよう……」

友「……」

幼友「……」

幼馴染「……あ」

男「おっ、友に幼友ちゃん。なあなあ、聞いてくれよ。俺幼と付き合うことになったんだ!」

友「お、おう。おめでとう、男。てかテンション高すぎだろお前。なんかキャラ変わってんぞ」

男「うっせえボケ! この喜びをお前にも分けてやりたいわ!」

友「そうか、だが俺にはそれ必要ないから」

男「んだよ、遠慮すんなよ。コノヤロウ」

友(うぜえ。まあ、俺もさっき似たようなテンションだったんだろうし仕方ない。こっちもせっかく幼友さんという彼女ができたのに、こいつのノリが高すぎて、喜びを表に出せないじゃねえか)

幼馴染「お、男。ちょっと今のあんためんどくさいよ」

男「悪い悪い。ちょっと落ち着くわ」

幼馴染「も~。これからはあんたに何かあると、あたしまで恥ずかしい思いすることになるんだからやめてよね」

男「わかったよ、もう」

友「ま、なんにせよおめでとう二人共」

幼友「よかったですね、幼ちゃん」

幼馴染「ありがとう。それと、そっちもおめでとう」

友「あっ、やっぱり気がついた?」

幼友「……あぅ」

男「え? え? マジ!? 友、お前そういうことか?」

友「男、興奮する気持ちは俺にもよくわかるがマジで落ち着け。そのテンションは果てしなくウザイ」

男「おう……。んっ、んんっ。よし……おめでと、二人共」

友「サンキュー。いや~今日は最高の一日だな」

幼友「そうですね~」

幼馴染「なんなら今からダブルデートでもする? ……なんちゃって」

男「俺は一向に構わん」

友「俺も構わないぞ」

幼友「私も……」

幼馴染「あれ? まさかの賛成? まあいいや。今日はみんなで楽しもっか!」

こうしてひと組の幼馴染の夏が過ぎていく。これまでとは違う関係性を新たに始め、これまで以上にその仲を深めた男女の夏が……。

……



幼馴染「あつ~」

男「あつ~」

幼馴染「なんで男の部屋クーラーないの~」

男「知らん。文句は母さんに行ってくれ」

幼馴染「あ~あ~あ~。扇風機からくる風涼しい~」

男「お~い、固定にするな。こっちにも風送ってくれ~」

幼馴染「え~暑いからやだ~」

男「んじゃ俺がそっち行くわ」

幼馴染「ちょっと、くっつきすぎ。余計に暑いじゃんか~」

男「文句言うなよな。それにカップルなんだからくっついてもいいだろ~」

幼馴染「もう……しょうがないなぁ」

ミーンミンミンミン ジージジジジ

男「暑いな」

幼馴染「暑いね」

男「プールでも行く?」

幼馴染「いいね~。バイクで?」

男「もちろん。走っていれば風で少しは涼しくなるだろ」

幼馴染「そうと決まれば早速準備しよっか」

男「おう。けど、その前に」

チュッ

幼馴染「んっ……はむっ……ちゅぱっ……ちょっと、男ッ……」

男「ん~なに~?」

幼馴染「今、汗臭いから……」

男「汗臭い幼も俺は好き~」

幼馴染「もう……このバカ彼氏。んっ……ちゅっ」

男「幼~大好きだ」

幼馴染「あたしも~男のこと大好き」

二人の夏はまだまだ続く。ダラダラとした空気で、お互いに気ままにイチャイチャと過ごす日々。
 まったりとした、楽しい毎日を今日も、また。

男「幼馴染の」幼馴染「恋愛事情」 ――完――
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プロフィール

建野海

Author:建野海
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名前:建野海

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好きな食べ物: 和菓子、洋菓子などデザート類。

趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
修羅の門
     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
      僕駐
      インセプションなど。

好きなゲーム:キングダムハーツ
       テイルズ
       ルーンファクトリー
       ゼルダの伝説など

好きなアーティスト:福山雅治
          宇多田ヒカル
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