10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
30
   

埋められないもの2

グツグツと胃の辺りで煮えたぎる複雑な感情たちに翻弄されながら私は走った。
ふと気がつけば、いつの間にか自室に帰ってベッドの上にうずくまり、身体を布団で覆い隠していた。
今の私の姿は他の誰にも見て欲しくなかったのだ……。
「うっ……うぅっ……ぇん」
涙は抑えるまでもなく自然と瞳から零れ落ちた。泣き声を家族に聞かれないよう、枕に顔を押し当てる。押し殺した声が夜の虫の音に混じって虚空へと消えて行った。
大好きだったあの人。いつか私が彼の隣に立つんだと子供心に私は思っていた。
想いを伝え、気持ちを重ね合わせ、甘い時間を過ごす。そんな夢のような毎日を密かに想像していた。
でも、現実は彼の隣には私じゃない素敵な女性が立っていた。私よりも年が上で、身体も大きく、そのうえ綺麗な女の人。まだ、未発達で貧相な私とは大違いだ。
枕から顔を離し、ベッドに腰掛け自分の身体を見回す。
「こんなのじゃ、全然ダメだよ。もっと大人にならないと……」
そう呟いてから気づく。その、『大人』になるためにはいったいどれほどの時間がかかるのか。少なくとも一日や二日では変わりはしない。今彼の隣に立つ女性のように、すぐにはなれないのだと悟ると、ますます気分は落ち込んだ。
「どうせなら、好きだって言えばよかった……」
既になんの意味もない後悔を私は口に出し、再びベッド上で横になった。
泣き疲れた私をを慰めるように、柔らかい布団が身体を包んだ。
そして、私はいつの間にか心地よい眠りにつくのだった……。

その日を境に私は彼の姿を追わないように努めた。胸に刺さった棘のような痛みはまだ癒えなくて、ポタリ、ポタリと血を流していたけれど、友達と過ごす楽しい日々によってどうにか痛みを我慢することができた。
ただ、やはり好きな人の話が会話の中ででた時はいつにも増して胸が痛んだ。
そうしているうちに少しずつ季節は流れて行った。
秋には、肌寒くなった互いの手を温め合うために手をつなぐ二人の姿に目を背けた。
冬には、腕を組み、顔を赤くしながら距離を縮め合う二人を友達と一緒に見ることになった。
春には、綺麗に咲き誇った桜を公園のベンチに座ってゆったりと眺める二人を、犬の散歩のため外にでて見つけた。
夏には、かつての自分のように彼の隣に立ち、開け放ったシャツについて注意をする女性と、注意をされて渋々ボタンをしめる彼の姿が通学中に目に入った。
時間が経つにつれ、胸の痛みは更に増した。見たくないのに見えてしまうことが嫌で、私は何も考えないことにした。
そして私は中学生に、彼は高校生になった。
関連記事
スポンサーサイト

埋められないもの 1

私には三つ年の離れた想い人がいる。
背が高くって近くに立つと見上げないと表情を見ることのできないあの人。
私がまだ小学生だったころは、同じ学区ということもあって、一緒に学校に行っていた。
でも、彼が中学生になってしまって一緒に学校に向かうことがなくなってしまってからは彼と出会う頻度はグッと減ってしまった。
たぶん、その頃からだろう……登校時に偶然彼と出会った時に頬が熱く火照るようになりだしたのは。
子どもの殻を少しずつ破り始め、大人の魅力を纏い始めた彼。日に日に逞しくなっていく身体は色っぽく、暑いからという理由で開け放ったカッターシャツの第一ボタンの位置から見える鎖骨が妙に艶めかしかった。
無意識のうちにジッとその一点を見つめる私に、照れ隠しのように微笑を浮かべながら
「そんなにジッと見られると照れるなあ」
と、頬をかいて呟いた。そんな彼の呟きに私の心臓はどうしようもなく鼓動を速め、重なり合う視線を逸らさないといけないと、そわそわとしては別の話題を頭の中で必死に探した。
そんな他愛ない日常。私だけが堪能することのできる彼との時間が、このままいつまでも続くと思っていた。
でも、その時間はすぐさま終わりを迎えた。
ある日の帰り道。習い事を終え家に帰ろうとする私の視界の先に彼の後ろ姿が目に入った。高鳴る胸を抑え、今まさに曲がり角を通った彼の後を追う。
けど、その先にいたのは私じゃない女の人に笑顔を浮かべながら会話を弾ませる彼の姿だった。
「あれ? 秋ちゃん。こんばんは」
いつものように私に声をかける彼。呼びかけられているんだと気がついてようやく、真っ白になった思考にほんの少しだけ余裕ができた。
「こ、こんばんは。えっと、その人は?」
柔らかな微笑みを浮かべ私と彼の様子を見守っている女性。その存在が気になって仕方なくって、聞きたくないのについそんなことを尋ねてしまった。
「あ、え……っと。彼女はね……」
その続きの言葉を口にするのが恥ずかしいのか、彼は少しだけ躊躇いをみせながらも、少し誇らしげに私に紹介した。
「僕の……恋人なんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私の視界はグニャリと歪んで、すぐさまその場から駆け出していた。
関連記事

こねこ時計 ver.3

CATS
Sweets

プロフィール

建野海

Author:建野海
扉の中の部品たちへようこそ。

名前:建野海

twitter @tateumi よかったらフォローしてください。


好きな食べ物: 和菓子、洋菓子などデザート類。

趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
修羅の門
     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
      僕駐
      インセプションなど。

好きなゲーム:キングダムハーツ
       テイルズ
       ルーンファクトリー
       ゼルダの伝説など

好きなアーティスト:福山雅治
          宇多田ヒカル
          UVERworld
          アンジェラアキ
          

最近の記事

最近のコメント

カウンター

Twitter

 

月別アーカイブ

カテゴリー

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
2209位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
444位
アクセスランキングを見る>>

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブロとも一覧


旅の空でいつか

標準装備で。

CANDY BOX

クリスタルの断章

現実エスケープ

BSR

白と黒の交流所

みくちょんの毎日

木綿湯のぶろぐ

気ままな雑記帳

saichi放送局

とあるゲーマー武装紳士の日常

星のゆりかご

Melt Sugar

小さいにっぽん頑張れ、2ch,大騒ぎ

Twilight of midnight

hana.bana