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ハロウィン

 ついに来ましたハロウィンです! みなさんこんにちは~。

 今日の夜にはみんな仮装をして友人や家族と楽しく過ごすのでしょうか? それとも、仮装なんてせずいつも通り過ごし、晩ご飯がちょっと豪華になるくらいかは人によりけりですね。

 かくいう自分の方は仮装はしません。ほんのちょっとしたい気持ちはありますが・・・。

 ですが、今日の夜には友達と遊んで楽しく過ごそうと思います。

 ハッピーハロウィン。よい一日を。
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テーマ : 日記・雑記
ジャンル : ゲーム

終電のホーム、彼女の残影

 5000hit記念小説。

 ※注意※ この小説内には死生観について書かれています。人によっては不快になったり、納得のいかないと思ってしまう考え方があるかもしれませんので、了承できる人のみ読んでください。










 凍えるような寒さに身を震わせる冬の夜。僕は大学のサークルの飲み会を終え、終電に乗って家に向かって帰っていた。

 頭は金槌でガンガンと叩かれたような痛みが定期的に響いていて、足下もなんだかおぼつかない。他に誰も乗っていないのに、席に着くなんて事もできず、情けなく床に腰を降ろしていた。口から零れ出る息は酒臭く、せっかく店を出る前に胃の中の物を吐き出してすっきりしたっていうのに、その匂いを嗅いでまたしても気持ち悪くなってしまう。
 うとうとと意識が何度も途切れては覚醒し、その度に駅を乗り過ごしていないかと、わずかに残った理性で確認する。どうも、まだ目的の駅に着いてはいないようだ。

 それからしばらく時間が経ち、僕の中にある酔いもほんの少し和らいだ。目的地である藤岡駅まであと一駅。降りる準備をするために、僕は壁にもたれかかりながら立ち上がった。

「まもなく、藤岡駅。――藤岡」

 僕は扉の前に立ち、減速に身を引っ張られるのに必死に耐えていた。
 まるで不純物を吐き出すように扉が開き、僕は電車を降りた。この時間帯の駅のホームは閑散としている。田舎の駅にふさわしい寂れた外観と、それを灯す薄明かりが不気味さを漂わせていた。

 大学に通うために毎日使っている駅のホームだが、朝早くの時間帯はまだマシだと思う。電車の中は人で満員になるし、帰宅ラッシュの夕方時も多くの人が駅のホームに溢れかえる。

 それと比べると、今の時間帯のこのホームは、なにか別のような存在のように感じてしまうのだ。

 こんなことを考えるなんて、本当に今日は酔っているな……。

 普段は考えないような意味のないような事を頭の中で言葉にして並べる自分に対して自虐の笑みを浮かべていると、ふとホームの片隅に一つ人影があるのに気がついた。

 ホームの隅に添えられているベンチ。そこに一人の少女が座っていた。

 年の頃は自分より少し幼いくらいだろうか? おそらく高校生か、中学生だろう。どこのものかはわからないが赤色の生地に黒のラインの入ったダウンジャケットの下に制服を着ている。手には暖かそうな羽毛の生地でできた手袋をはめている。しかし、下はスカートなので、とても寒そうに見える。

 そんな風に思っていると、少女の方も同じ事を考えていたのか、一度立ち上がり、ベンチの上に敷いていた布を取り出して膝に掛けた。どうやら膝掛けを敷いていたらしい。

 こんな時間に何をしているんだろう? もうすぐ駅も閉まってしまうのに。誰かを待っているのか? と思ったが、最終電車はついさっき発車したばかりで、そこに乗っていたわずかな人の中でこの場に残っているのは、もう僕一人しかいなかった。

 じゃあ、彼女が僕を待っていたかと言えば、答えはNoだ。僕は彼女を見たのは始めてだし、彼女だってそうだろう。

 だったら、彼女は誰を待っているのだろう? 普段なら気にも留めないはずなのに、僕は酔っていたせいか、ついそんな事が気になった。そして、普段ならするはずのない、見ず知らずの女の子に自分から声をかけるなんてことをいつの間にかしていた。

「ねえ、何してるの?」

 少女に声をかけると、彼女は一瞬驚いた。しかし、すぐに元の表情に戻り、律儀に僕の質問に答えてくれた。

「いえ、特にはなにも。あえて言うならボーッとしてました」

 僕はそれを聞いて肩すかしをくらった。てっきり何かしらの理由があってこんな時間までホームに残っていると思ったからだ。しかし、同時に見知らぬ男性に急に話しかけられたから上手くあしらうためにこんな風に言っているのかなとも思った。

 そう考え、もう帰ろうと思っている自分を余所に、彼女に話しかけた口は止まらずに言葉を紡いでいった。

「ふ~ん。でもこんな時間まで外を出歩いていると危ないよ。もうすぐ日を跨ぐし、ここも閉められちゃうから早く出ないと」

 おせっかいな事に、つい少女に説教のようなことを言ってしまった。昔自分が言われてうんざりしたことを見ず知らずの他人に言っているんだと思うとなんだか可笑しかった。

 そんな僕の説教に彼女は苦笑した。酔っぱらいの戯れ言だと思ったのだろうか? 僕はちょっとムッとした。僕の方が年上のはずなのに、こうして向かい合っていると、なぜか彼女の方が年上のように見える。僕の様子に気がついた彼女は、

「あ、すいません。べつに笑うつもりはなかったんですけれど……つい」

 慌てて謝る少女はとてもかわいらしかった。こんなさびれた場所にはにつかわしくないほどに、彼女の笑顔は明るいものだった。

「いや、こっちこそ。怒ったつもりはなかったんだけど、なにぶんこんな状態だから……ね」

 そう言って僕は自分を指差した。電車の中にいたときよりも、マシになったとはいえ、まだまだ足下はふらついている。

 僕の冗談が通じたのか、彼女の口元はほんの少し上がっていた。

「あ、ちょっと待っていてくださいね」

 何かに気がついたのか、彼女はその場を立ち上がり、膝掛けを再びベンチの上に置いて自動販売機の方へと駆けて行った。

 立っている事に疲れた僕は彼女が今まで座っていたすぐ隣に腰掛けた。気を抜いたらもう寝てしまいそうな気分だった。

 カクン、カクンと頭が上下する。何度かそんな事を繰り返してハッとすると、目の前にはさっきの少女が立っていた。

「大丈夫ですか? よかったら、これどうぞ」

 彼女はそう言って、持っている缶コーヒーを僕に手渡した。

 手渡された缶コーヒーは温かく、この寒い中では必需品だった。温かい缶の体温は外気にさらされて急速に熱を失っている。白い湯気が空に舞上がり、ほどなくして消えてゆく。

 その光景を何故か儚いと感じながら、僕は缶のプルタブを開け、中に入っている黒い液体を身体の中へと放り込む。

 苦さを舌が感じると共に、身体の芯に熱が伝わる。凍っていた身体の末端は溶かされて、固まっていた神経がほぐされていくのがよくわかった。

 ホッと一息ついたところで、目の前の少女の腕には他に何もない事に気がついた。

「これ、ありがとう。ところで君の飲み物は?」

 尋ねると、少女は困った顔をした。そして、しばらく悩むそぶりを見せた後、

「私のはいいんです。今こうしてそれをあげたのも、ただの気まぐれだとでも思ってください」

「でも、寒いんじゃない? まだ中身半分くらいあるからよかったら飲みなよ」

 僕は少女から貰った缶コーヒーを少女に差し出した。少女はさきほどよりも更に困った様子で、キョロキョロと左右を見回し、

「そ、それじゃあ、いただきますね」

 遠慮がちにおずおずと手を差し出し、僕の手にあった缶コーヒーを取った。一口、二口と小さく開けた口に黒い液体を流し込んでいく。どうにも、彼女にコーヒーは苦かったのか、しかめっ面をして明らかに不味そうな表情を浮かべている。

「……にがぁ」

 案の定舌を突き出し、苦味を必死に外へ吐き出そうとしていた。

「コーヒー飲めないんだ」

 年相応(といっても自分より下ということしか分からないが)の表情を覗かせる彼女を見て、僕は苦笑した。

「はい。なにせ飲み慣れてないもので」

 それでよく飲もうと思ったものだ。いや、飲むように勧めたのは僕だったか。そうなると彼女には悪い事をしたな。

「そっか。じゃあ、飲めない物を無理に飲ませちゃったね。ごめんね」

「いえいえ、勝手に飲んだのはあたしなんですから、気にしないでください。それにこのまま飲まないでいるのもあれかな~なんて思ったんで」

「どういうこと?」

「あ、なんでもないです。たいしたことじゃないので」

 彼女はそう言うが、僕はどうも気になった。おそらくだが、彼女みたいな子がこんな時間にこのような場所にいるのは、きっとそのたいしたことじゃない事が原因なのだろう。

「もし、よかったらでいいんだけど話くらいなら聞くよ。コーヒーを奢ってもらったことだしね」

 軽めの調子でなるべく彼女が話しやすくなるように僕は言った。彼女はそんな僕の反応が意外だったのか、口を開けて一瞬惚けていたが、すぐにクスリと笑い、

「じゃあ、せっかくなので聞いてもらおっかな。酔っぱらいさんが相手なんで絡まれた時点で話さないといけなかったんですよね」

 軽口を叩いた。

「あ、言ったな。そりゃ、現に僕は酔っているけどさ。話を聞いたことの記憶がなくなるほどは酔っていないと思うよ」

「そうですか。でも、この話を覚えていてほしいかどうかは正直私にはわからないですね」

「ふ~ん。まあ、それは話を全部聞いてから考えるよ。面倒くさそうな話だったら忘れるつもり」

「……勝手ですね~。でも、いいです。それくらいでいてくれたほうが私も楽ですから」

 そして、白い吐息をハァ~と一度宙に吐き出し、彼女は語り始めた。

「お兄さんは人間関係について悩んだ事ありますか?」

「まあ、それなりには」

「私が悩んでいる事の一部がそれなんですよ」

 なるほど、年頃の少年少女がよく頭を悩ませるような悩みの一つだ。

「私の周りの子っていい子ばかりなんですけど、実はそれって表面上のことで、実際はみんな裏でいろんな事を言い合っているんですよ」

「彼女がうざい、ムカついた、死んでほしい。ブログだったり、SNSだったり、相手が気づかなければ問題ないと思っている。そんな周りに気がついていても何もできずに変わらない関係を続けて行くのが私は嫌です」

 よくある話だ。人間関係を築く中で、相手に全くの不満がないなんてことは、まずありえない。かといって仲のいい相手ほど溜まった不満をさらけだしづらい。そうして本人の与り知らぬところで陰口を叩いたりするしかない。そうして、何事もないように人間関係は続いて行く。

 それが嫌いな相手ならなおさらで、相手がいないネット上での陰口を叩くなんて事は今の時代ざらである。

「私が考えているのはそれだけじゃありません。親もそう。こうなってほしいから、自分の理想の子供になってほしいから、習い事を習わせて、私を型にはめる」

 彼女の言葉は止まらない。先ほど飲み干した黒い液体を、身体の中に溜まっていた黒いものを吐き出すほどの勢いで語って行く。

「それは君を想っての事じゃないかな?」

「そうですね、そういった面もあると思いますよ。でも、親だからこそ子供は自分の理想の子供になってほしいと思う面もある事は否定できないですよね」

 そうかもしれない、でもそんな風に思ってほしくはない。

「でも、人生なんてそんなものだよ。時には我慢しなくちゃいけない事もあるし、楽しい事だってある。君が今考えているような悪い事ばかりじゃないよ」

「はい、それもわかっています。私が今言った事はあくまで前提に過ぎないです。これから話す事が本題です」

 そう聞いて僕は先ほど温まった身体が急速に冷えていくのを感じた。冷や汗が一滴、頬に一筋の痕を残して垂れた。

「年を取るにつれて色々な人に出会い、関わり、時が過ぎて行きます。人に関われば関わるほど、自分がいなくなったときの影響はありますし、そのせいで生まれるしがらみも多くなります。
 だったら……だったら私の命は誰のものなのかなって思ったんですよ。
 よく、自殺をする人に対して、その命は一人のものじゃないから、大切にすべきだなんて言う人がいますよね。その人に関わった人は悲しむし、俗物的な言い方をすれば、それまでその人に費やしてきたお金の全てが無駄になるなんて事も言われています。
 それなら、個としての私の命をどう使えばいいのか。他人にその使用権を握られて自分のしたい事もできないのかって思ったんです」

「……考え過ぎだよ。そう思っているのは今だけさ」

「でも誰だって一度は考えると思いますよ。そして、これを考えて大人になった人は当時の自分を恥ずかしいと思ってそのまま過ごすと思います。そして、実行した人はその人にしかわからない答えを得たと思います」

 そこまで断言されて僕は何も言えなくなった。さっきまで自分を悩ませていた酔いはとっくに醒めている。今は酔いなんかよりも頭を悩ませることができたからだ。

 彼女の話を聞いて僕がわかる事。それは、今話した考えで僕が前者、彼女が後者だということだ。彼女に何があったのかはわからないが、今まさに後者の道を歩もうとしている。

「本当は今日この場でいなくなろうと思ったんですよ。でも、いざとなると踏ん切りがつかないもので、ずっとこのホームに座っていました」

 それで、こんな時間までこのホームにいたのか。僕は今更ながら納得をした。そして、彼女がまだ迷っているといるんじゃないかと考えた。

「いざとなるとそんなものだよ。誰だって君みたいな事を考えた事はあるだろうけど、実際にはできないものさ」

「そうですね。私もさっきまでそう思っていました」

 彼女の言いように僕は違和感を覚える。なぜ、過去形なのだろう? それに気づくのが怖くて、気づかないフリをして話を進めた。

「なら、今日はもう家に帰った方がいいよ。それで、温かい物を飲んでもう寝た方がいい。きっと君の両親も心配しているよ」

 僕がそう提案すると彼女は首を縦に振った。

「じゃあ、帰りましょうか。そろそろここも閉まると思うんで」

 そう言って彼女は立ち上がった。膝掛けをベンチに置いたまま。

「膝掛け置きっぱなしだよ?」

「ええ、それはもういいんです。必要ないので」

 僕たちは二人並んで駅のホームを出た。

 音という音のない真夜中。手を伸ばせば届く距離にいるはずの少女がどこか遠い場所にいるように錯覚する。

「あ……」

 別れの言葉を交わすべきか悩んでいると、ふと彼女が呟いた。

「雪……綺麗」

 言われて空を見ると爪先ほどの大きさの雪がはらはらと空に舞っていた。落ちて来るそれにそっと手を差し伸べると一瞬の冷たさとともに蒸発し、雪は姿を消した。

「また、会えるかな?」

 どうしてそんな言葉が出たのか自分でも不思議だが、いつの間にか僕はそんな言葉を口にしていた。同情、心配、罪悪感、単純な興味。そのどれもが言葉が出た理由としては適当だと思う。そんな僕に対して彼女は、

「さくらです、私の名前。覚えていてください、きっともう会う事はありませんけど」

 僕にコーヒーとほんの少しの会話と名前だけを残して雪の降り注ぐ道へと進んで行った。

 僕はそれに、彼女の背をそっと見送る事しかできなかった。


 それからしばらく時間が経った。冬が終わりに近づき、最近では春の息吹が近づいている。

 あれから、彼女と会う事は二度となく、かといって自分から彼女を探し出す気も起きなかった。

 たった一時会話をしただけの少女のことなど何故探す必要があるのだろうか? しかし、そんな風に考える自分の気持ちとは裏腹に、彼女との記憶は時間が経っても少しも消えてくれはせず、むしろ日に日にその記憶の色合いを増していった。

 駅のホームに降りる度、彼女の姿がないか確認するのが癖になっていた。

 終電のホームに行けばまた会えるだろうか? そう考えながらも、終電のホームに僕が訪れる事はなかった。

 そんなある日、テレビのニュースで一人の少女が自宅で亡くなっていたことが報道された。それは事件性もなく、自殺と断定され、本当に一瞬だけ紹介された。

 少女の名前は神谷さくら。高校二年生の少女だった。

 彼女が何を想い、どうしてその道を選んだのかは僕にはわからない。

 だけど、僕はきっとこの出来事を生涯忘れることないだろう。

 あの日、身体に染み込んだ温かさや、静かに一人ベンチの上に座っていた彼女の事を。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

5000hit

 追記より拍手お返事 

 こんにちは、建野海です。

 このたび当ブログが5000hit達成しました! ありがとうございます!

 最近はブログ内の小説を更新できていないのに、足を運んでくれている人が多くて感謝の極みです。

 サウンドノベル、小説大賞への応募など忙しくなっていますが、訪れてくれる人のためにも、月一では必ず更新しようと思います。

 昨日短編の小説の方を更新させていただきましたが、5000hitをしましたので、記念短編を近いうちにまたあげようと思います。

 では、これからもよろしくお願いします。

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テーマ : 日記・雑記
ジャンル : ゲーム

「andante」(水聖さんのバトンより)

 秋が過ぎ、冬が近づいたある日。誰もいない教室を僕は一人で掃除していた。

 授業はもう全て終わっており、そのまま帰宅する生徒もいれば、部活動に向かった生徒もいる。僕は本来前者側で、いつもならこの時間帯には友達と家に帰っている途中だ。

 だけど、今日はちょっと失敗した。授業中に友達と携帯を使ってオンラインゲームを一緒にしていたところを先生に見つかったのだ。案の定僕の携帯は先生に取り上げられ、携帯を返す条件として教室の掃除を一人でする事になった。ちなみに、友達は見つからなかったので何もなかったのは言うまでもない。

 本来みんなでやるはずのことだったのを僕が一人でやる事になったと先生は帰りのSTでみんなに伝えた。それを聞くと、みんなはお礼の言葉や、馬鹿だな~とからかいの言葉を僕に投げかけた。しかし、誰も手伝うよとは言ってくれなかった。――みんな薄情だ。

 そんなわけで、みんなが教室から居なくなってからもうすぐ一時間ほど経つ。黙々と掃除をした結果、あと少しで掃除が終わる。

 それまで動かしていた手を一旦止め、教室の窓際に腰掛ける。窓越しに見えるグラウンドでは陸上部がトラックの周りを規則正しく並んで走り、野球部が声を張り上げて飛んで来る弾を受け止めている。隅の方ではテニス部が素振りの指導をし、サッカー部は一対一で一つのボールを取りあっていた。

 みんながんばっているな~と、どこか冷めた目で見ながらも僕はその光景から目が離せないでいた。

 あまりにもそちらに意識がいっていたせいだろうか、僕は教室の扉を開けて中に人が入って来ていた事に気がつかなかった。

 ガタッ! と机と机がぶつかる音がしてようやく僕は教室に他に人が入っている事に気がついた。

 先生が掃除の確認に来たのだろうと思った僕は慌てて視線を外から中へと戻す。しかし、そこにいたのは先生よりも会いたくない人物だった。

「あ・・・」

 予想外の人物の登場に思わず声が零れ出る。僕から十メートルほど離れた位置に彼女はいた。

「荷物・・・取りに来ただけだから」

「そう・・・」

 そう言われて僕はホッとすると同時に落胆した。なにか話しかけてくれると期待していたのだ。話したくないと思っているはずなのに。

 自分の席に着いて、置いてあるカバンから荷物を黙々と取り出す彼女。夏が過ぎるまでは毎日お互いの毎日を話し合い、くだらない事で笑っていた彼女との距離は今ではこれほど離れてしまった。

 あんなくだらない罰ゲームをしなければ、今でも僕と彼女は笑っていられたのだろうか?

 ――あれは、夏休みが終わって一週間ほど前の事だった。友達数人と遊んでいた僕は王様ゲームの罰ゲームとして誰か一人女の子に告白しなくてはならなくなった。

 この罰ゲームは王様ゲームを始めてから三回目で、僕の前に罰ゲームをやらされた二人はそれなりに仲が良くて、冗談の通じる相手に電話で告白をして「馬鹿じゃないの」と笑って振られていた。それを聞いていた僕たちは、その結果を聞いて割とショックを受けている当人を見て爆笑していた。今思えばなんて趣味の悪い事だろう。

 そして、ついに僕の番が回って来た。僕が電話をする相手は決まっていた。そう、彼女だ。

 春に同じクラスになった彼女は、容姿がよく、明るい性格をしていて男女を問わず人気だった。同性は友達として、異性は恋愛対象として。

 しかし、僕は珍しい事に友達としての彼女を求めたのだった。彼女もそれが気に入ったのか、それともただの気まぐれか、ふとしたきっかけを経て僕と話すようになった。

 最初は少ししかなかった会話も、時間が経って毎日話すようになるうちにその頻度も多く、時間も長くなって行った。

 くだらない冗談もお互いに言い合った。将来どうするかなんていう真剣な話だってした。彼女なら今から行う事も馬鹿な事だって笑って切り捨ててくれるだろう。そう思っていた。

 だからこそ、電話に出た彼女に告白したときに

「え・・・うん。あんたなら・・・べつにいいよ」

 と答えられて僕はうろたえた。

 予想外もいいところだった。本来ならここで振られたよなんて言ってみんなと一緒に笑って終わりのはずだったのに、計画が根底から崩されてしまった。

 黙っている僕を不審に思ったのか、周りにいる友達は「どうなんだよ」と答えを急かした。

 焦っていた僕は電話越しに答えを待つ彼女に、

「ごめん! 今の友達からの罰ゲームなんだ。冗談だから気にしないで!」

 と小さな声で言って通話を切った。

 そして、友達に向かって「うわ~駄目だった!」と言って同情されながらも笑われた。みんなに合わせて僕も笑った。だけど、胸の奥がズキっと痛んだ。

 次の日、学校に向かい、彼女に昨日のことを謝ろうとして話しかけた。彼女はそれに何でもなさそうにして「大丈夫だから、もういいよ」とだけ言った。

 それから、僕たちは徐々に話さなくなっていった。今では用事があるとき以外は話す事はない。

 原因が僕にあることも、そのせいで彼女との距離が離れてしまったとわかってしまっても、僕はどうすることもできなかった。勇気がなかった? その通りだと思う。

 そんなこんなで秋が過ぎて、もう冬が訪れようとしていた。時折帰り道で見る彼女は一人だ。そして、その姿をみて僕の心を痛ませるのは、彼女が以前と同じように、帰り道で自分の隣に一人分のスペースを空けて歩いているのがわかるからだ。

 僕は彼女を裏切った。うぬぼれだと言われようと、あの時の彼女は真剣だったんだろう。なのに、僕は彼女の奥に触れるのが怖くて、冗談にして逃げた。

 わかっていた。わかっていたさ、あの時彼女の声がかすかに震えていたのも、電話越しにでも伝わる想いも、答えを待つ間の張りつめていた空気も、すべて本気だった証拠だ。

 僕は、どうするべきだったか。・・・決まっている。仮に答えがNoだったとしても真剣に彼女と向き合うべきだった。それが、僕の後悔・・・。

 荷物を出し終え、彼女は席を立った。僕はそれを見送るしかなかった。

 彼女は教室の扉に手をかけ、そのまま出て行く・・・と思っていた。しかし、その前。本当に一瞬だけ彼女は僕の方を振り向いた。

 何かを期待するような眼差し。それを見て、僕は彼女がもう一度だけチャンスをくれているのだとわかった。

 サッと駆け出すように彼女は教室を出た。僕は持っていた掃除道具を床に放り投げ、急いで教室を出て彼女の後を追った。

 走る、走る、走る。彼女との距離はまだ縮まらない。帰宅部の運動不足がここにきて負担になっていた。

 廊下を駆け抜け、階段を下り、下駄箱でようやくその手を捕まえた。

「ま、まっ・・・て・・・」

 情けない事にちょっとの距離を走っただけで息が切れた。頭の中はぐちゃぐちゃ。何を言いたいのかもはっきりしない。

「・・・なによ」

 そんな僕を突き放すような冷たい一言。だけど、繋いだその手を振りほどかないでくれている彼女の優しさ。その優しさを裏切らないように、僕は答える。

「今日、一緒に帰らない?」

「・・・」

 悩んでいるのか、彼女は黙った。

 下駄箱を抜けた先から聞こえて来る声は、ものすごく近くにあるはずなのに、やけに遠くから聞こえてきた。その代わり、普段は意識しないと聞こえてこない心臓の音がやたら激しく耳に響いた。

 まだか・・・やっぱり駄目か? あの時彼女はこんな風に緊張して答えを待っていたんだろうか?

 今すぐにでもこの場を離れたくなる気持ちをどうにか抑えて、その場に留まる。今逃げ出したら、きっともう二度と彼女と話すことはできないだろう。

 本当に気の遠くなるような時間を経て、彼女の口が開いた。

「うん・・・。じゃあ、部活が終わったら正門で待ってて」

 そう言うと僕の手をそっとほどいて、彼女はその場を去った。

 僕は胸の奥から溢れ出る言葉にしがたい温かい何かに全身を満たされながら、下駄箱を後にした。浮かれた気分で教室に戻り、扉を開けたところでようやく自分が掃除をさぼってしまっていたことに気がついた。

 教室の中で待っていた先生に怒られて、携帯は没収されたままになった。

 待ち時間になるまで、少し前と同じように窓際からグラウンドを見る。前と違い、今は温かい目で頑張っているみんなを見る事ができた。頑張るみんなの中には彼女の姿もあった。

 時間になり、正門に僕は立つ。時間から三十分ほど過ぎているが、彼女の姿はまだない。

 もしかして騙されたのだろうか? あの時の僕への仕返しとしてこうして待たせて帰ってしまったのだろうか? そんな考えが一瞬頭をよぎるが、すぐさま否定する。きっと、少し遅れているだけだ。

 更に三十分が経った。まだ彼女の姿はない。

 さすがに少し寒くなってきた。それまで立っていて疲れた足を休めようと腰を下ろす。両手を擦り合わせて生じる摩擦で温まる。

 ふと、自分の目の前に影ができた。

 ああ、やっぱり彼女は来た。

「・・・おまたせ」

 待っているとは思わなかったのか、それとも知っていたからなのか、彼女はほんの少し気まずそうな顔をしていた。だから、僕はそんな彼女に気を使わせないように笑って答える。

「うん。じゃあ、帰ろうか」

 久しぶりに一緒に歩く帰り道。互いに何を話せばいいかわからず、その足取りは遅く、重ねる言葉はぎこちない。最初に話をして帰ったときよりもひどいものだ。

 だけど、一度崩れたものをまた積み上げようとしているのだ。最初はこのぐらいでいいのかもしれない。

 ゆるやかに、歩くような早さで、僕たちはまた関係を積み上げて行こう。

 今度はもう崩す事のないように。

 そう決めて、僕は片手をこっそり彼女の手に近づけた・・・
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SHOW CASE

 こんにちは、建野海です。

 最近めっきり冷え込んできて、秋よりも冬に近づいてきましたね……。

 近況報告となるのですが、昨日、一昨日と自分はダンスのSHOWCASEを行ってまいりました。

 いわゆる発表会のようなものなのですが、発表までの一週間近くの練習は毎日深夜(朝方)にまで及び、体は筋肉痛やらだるいやらで散々なものでした。

 練習をいくらしても、うまくなっている実感ができず、発表の前日は緊張でいっぱいでした。もちろん当日も。

 しかし、発表当日、一緒に踊るメンバーの人たちとステージに上がり、大勢の人の前で踊ったら緊張は吹き飛び、どんどん楽しくなって踊っていました。

 他のジャンルの踊りをしている人たちの発表を見ていても、もっと踊っていたかったと思ったり、他の人に負けたくないという思いも生まれて、もっとがんばらなきゃなと思いました。

 そして昨日、SHOWCASEが終わって、ひとまずの休憩が今日になりました。

 一つの目標を終えて、次の目標はまだ決まっていませんが、どんな目標ができてもがんばっていきたいと思っています。

 追伸:小説の方も進んでおります。ダンスのほうがあってペースは遅れていますが、11月中には応募用の小説が書き終わりそうです。
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えんため大賞

 こんばんは、建野海です。

 えんため大賞が先日発表されましたね。なんでも8年ぶりの大賞が出たとか。

 そもそもえんため大賞って何って人への説明に、コピペ

◎えんため大賞とは

えんため大賞は1998年に小説・マンガなどの新人クリエイター発掘を目的として設立されました。すでに多数の受賞者が弊社より刊行されている各誌各レーベルで活躍しています。エンターブレインは各々のジャンルに新風を吹き込むべく、気概ある才能との出会いを待ち望んでいます。ジャンルを代表する作家を目指し、斬新な発想にあふれたあなたの自信作をぜひ送ってください。


 とのことです。ちなみに自分が話しているのはこの小説部門です。

 ライトノベル全盛期に比べて最近は売り上げが落ち込んだかなと思いきや、複数のレーベルが新たに参戦したことによって意外にも盛り上がっているようです。

 特に電撃文庫への応募総数など7千通にも及ぶらしいですよ。いや~すごいですね。

 自分も一度だけ小説賞(ちなみに電撃)に応募したことがあったのですが、今になって思うとなんて無謀なことをしたのかと後悔しています。

 まだ文章構成もろくに知らず、書きたいこと書いて印刷してポストへ投函。

 当時はあれで賞が狙えると本気で思っていたものですから、馬鹿なことを考えていたんだな~と今は思います。ある意味黒歴史の一つですw

 それから一度小説を書くことをぱったりやめ、一年前くらいからまた書き始めました。

 昔に比べて多少なりともマシになったかな? と思ったりもします。

 と、前置きはこれくらいにして、つまり何が言いたいのかというと

 建野海、もう一度小説賞に応募いたします!!

 応募するところはもちろん最初に書いたえんための小説部門です。応募の最終期日は四月ですが、十一月までには書き終えて一度期間をおいて推敲などしたいと思っております。

 ちなみに、こう思ったのが一週間前で、現在応募規定の最低枚数85枚の内46枚まで書きました。上限が165枚までなので、規定枚数を超えることはないと思いますが、なるべくペースを上げて早めに書き上げて友人に意見を聞いて訂正などをして応募したいと考えています。

 というわけでしばらくそっちに集中することになります。

 てめーネットの小説早く完結させろよと待っていただいているかたもいらっしゃると思いますが、時間を見つけて更新したいと思っていますので、そちらもどうぞよろしくお願いします。

 思えばただ趣味として書くことに慣れていて本気で小説を書くということをしばらく忘れていた気がします。
 昔の自分(黒歴史)からどれくらい成長したのかも確かめたいという思いもあるので、読者に楽しんでもらえるような内容かつ評価のもらえる作品を仕上げたいです。

 できれば書き終えたときにこちらで公開、意見がいただければそれを参考に推敲などとしたかったのですが、えんための規定にネットなどに公開されているものは発表済み作品とみなされて受け付けてもらえないので、公表することができません。

 ですので、公表することはできませんが、応援していただけるとありがたいです。

 
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こねこ時計 ver.3

CATS
Sweets

プロフィール

建野海

Author:建野海
扉の中の部品たちへようこそ。

名前:建野海

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好きな食べ物: 和菓子、洋菓子などデザート類。

趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
修羅の門
     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
      僕駐
      インセプションなど。

好きなゲーム:キングダムハーツ
       テイルズ
       ルーンファクトリー
       ゼルダの伝説など

好きなアーティスト:福山雅治
          宇多田ヒカル
          UVERworld
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