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「壁の中より」 第0話 2


 やがて、廃屋が立ち並ぶ道を通り過ぎたころ、鉄格子が付いた窓の隙間から前方に巨大な建造物が見えた。

 否、正確には巨大な壁である。

 その壁こそ、彼らの到着地である『更生都市』であった。

 正式名称、犯罪者更生第二都市である。

 一定以上の犯罪を行った者と、ある理由を持った一部の人間を更生させ、社会に復帰させるための巨大施設として都市を建設し、国内で七ヶ所都市としての形をとった更生施設が存在する。中には、財政難に陥っていた都市を更生施設にするかわりに莫大な補助金を国が出して財政の立て直しを行った場所もある。

 当然、当時住んでいた住人はそのことに猛反対したが、住民の反対を押し切り、当時の都市の責任者が強引に了承した。その結果、住民のほとんどは都市から出て行き、他の地へ移って行った。

しかし、中にはその土地に愛着がある人や、経済的事情から他の地へ移ることができない人々がいた。そうした人々には『更生都市』ができてからもその地に残る代価として補助金があてられることになった。もっとも、その補助金というのはある事情があり、他の地に移る者にとってはあまり役に立たないものなのであるのだが……。

 そして、今犯罪者を乗せてむかっている第二都市こそが、元々一般人が住んでおり、今も一部の一般人と犯罪者が同じ場所に存在する『更生都市』なのであった。

 やがて、巨大な壁の先端が窓から見えなくなるほど近づき、目の前に門が現れた。門の中に入ると、車はスピードを徐々に緩め、やがて停止した。

 車が停止するとともに、饒舌なガードマンが立ち上がり、声を張り上げた。

「いいか! これよりある場所にてきさまたちの手術を行う」

 手術という言葉に誰もが息をのむ。

「怖いか? 臓器でも取られるのかと思ったか? しかし、残念なことにそんな事をするわけではない。レーザーを使ってマークを刻むだけだ」

 犯罪者たちの大きな不安はなくなったが、それでもレーザーでマークを刻むと聞いてどれほどの痛みを伴うのかと別の不安が沸き起こった。

「いいか、これより番号を呼ばれた者から順番に降りてこい」

 彼はそういうと、順番に番号を呼び始めた。

 一人、また一人と車を降りて行き、先程痛めつけられた金髪の男もガードマンにおびえながら降りて行った。
 そして、車内には二人の少年が残った。

 一人は先程金髪の男を蹴り、席へと戻した少年。茶色の髪に引き締まった細身の体。人懐っこそうな顔立ちをしており、さっきまで暴行を働いていたものとは思えない。

 もう一人は車の最後列に座っている黒髪の少年。中性的な顔立ちで、若干女のようにも見える。かといって弱そうに見えるというわけではない。また、彼の周りは張りつめた雰囲気があった。

「三十七番、三十八番。降りろ」

 番号を呼ばれた二人は、黙って車を降りた。そして、ガードマンに連れられてある場所へと連れて行かれた。

 真っ白な部屋。中にはレーザーの機械と思われるものと手術用の椅子、それから小さな机が一つあった。そして、手術用の椅子の横には白衣の女性が立っていた。

「番号順に一人ずつこっちへ来なさい」

 女性に呼ばれ、番号の早い茶色の髪の少年が進む。

「座って。そのまま動かないで」

 少年が椅子に座ると、女性は少年の手足を器具で固定し始め、動けないようにした。

「ちょっと、なにすんですか?」

 まさか、手足を縛りつけられるとは思っていなかった少年は必死にもがく。しかし、一緒に来たガードマンに押さえつけられて、そのまま手足すべてに器具を付けられてしまった。

「大丈夫よ、すぐに済むから。その代わり暴れたりするとマークがうまく刻まれないで何度も痛い思いをすることになるから動かないほうがいいわよ」

 女性はそう言って椅子から離れると机の上に置いてあったノートパソコンに何かの情報を入力した。それに呼応するかのように椅子の近くにある機械が動きだし、少年の左手の甲の上で止まった。

 引きつった笑みを浮かべ、少年は機械を凝視する。

「う、ああああああぁぁぁぁ」

 少年の絶叫が部屋の中に響いた。原因は言うまでもなくレーザーが彼の手の甲にマークを刻んでいるためであった。

 しばらく絶叫が続いていたが、やがてマークを刻み終えた機械が動きを止めるとともに絶叫も止まった。

 やがて、手足を固定していた器具を外されると、奥にある扉から現れた別のガードマンと白衣の男性に彼は連れて行かれた。

「さて、次はあなたの番ね」

 部屋の入り口で立っていた黒髪の少年の方を向き、女性が呼びかける。少年は黙って椅子の方へと進んでいった。

「へえ。あなた、さっきのを見て全く怖気づいていないのね。その年齢でたいしたものだわ」
器具を手足にとりつけながら女性は少年を褒める。しかし、少年は無言のままだ。

「それにしても、あなたの刻むマークって相当珍しいわね。私こんなマークって初めて見たわ。なんでも……」

「いいから早くマークを刻んでください」

 それまで黙っていた少年が女性の言葉を遮るように作業を促した。

「あら? 怒ったのかしら。でも確かに、あなたとあまり話すのはよくないわね。犯罪者なんだから」

 その言葉を聞いた少年は、一瞬女性を睨みつけたが、すぐに元の無関心な表情へと戻った。

「じゃあ、ここからは独り言でも呟くことにするわ」

 女性はノートパソコンの元へと行き、機械を動かすための情報を入力し、再び少年の元へと戻った。

 機械が動き始め、少年の左手の甲の上へ移動し、止まる。

「これから、あなたはあるマークを刻まれるわ。そしてそれを刻み終えたら都市内で義務を負って過ごしていくことになる」

 レーザーが少しずつ少年の甲にマークを刻み始める。少年は歯をくいしばって叫び声が出るのをこらえる。

「中に住んでいる犯罪者以外の人達は、絶対に歓迎なんてしてくれないでしょうから、私が代わりに言ってあげる」

 麻酔なしでの行為に痛みが限界を超え、徐々に少年の意識は遠のき始めた。そして、女性の言葉とともに意識が消えた。

「ようこそ、『更生都市』へ」
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「壁の中より」 第0話

第0話 収容車両にて


辺りに廃屋が立ち並ぶ道を一台の車が走っていた。窓には鉄格子が取り付けられ、車の外装は一部を除いて黒く塗りつぶされている。ワゴン車よりもひとまわり大きいその車内からは叫び声や嘆き声、それから狂喜の声が響いていた。

 車内では手枷をはめられた男性、女性、小さな子供が乗っている。

 ある者は人畜無害にも見え、ある者は薬漬けになってイカレたようにも見える。

 一見何ら規則性のないように思える彼らだが、一部を除いてある共通点があった。

 彼らは『犯罪者』であった。

 中には人を殺した殺人者や、軽犯罪を重ね、簡易更生施設での指導を受けながらも再犯を繰り返したものなど社会不適合者として更生を余儀なくされた人々だ。

 そして、それ以外の理由から、この車内に乗っているものもまた更生を余儀なくされた者である。

 ざわめく車内。中には、彼ら以外に運転手と屈強そうな男のガードマンが二人いる。

「黙れ! 騒ぐんじゃない」

 ガードマンの一人が怒鳴りたてる。

「うるせえよ、国家の犬が! 規則に縛られたてめえこそ黙っていろ!」

 まだ若そうな金髪の男が反論する。ガードマンにガンを飛ばし、顔を近づける。

「犯罪者ごときが調子に乗るな。今すぐ自分の席に戻れ」

「はっ! 偉そうにしやがって。席に戻らなかったらどうするんだ?」

 金髪の男はガードマンを挑発する。彼のほかに先ほどから騒ぎ立てていた者たちもまた、奇声を上げたりするなどしてガードマンを挑発する。

「知っているか? この車に乗った時点で、きさまたちの人権は殆ど剥奪されている。つまりきさまらは既に人ではない。いい例が奴隷だ! だからきさまらに我々がなにをしようとも問題ではないということだ」

 ガードマンの一人がそう言い終わると、それまで黙っていたもう一人のガードマンが立ち上がり、金髪の男の頭を掴んだ。そして、そのまま男を窓に取り付けてある鉄格子へと叩きつけた。

一回、二回、三回。幾度も叩きつけるうち、男の鼻から鼻血が垂れ、次に骨が折れる音が聞こえ、やがて呻き声が聞こえた。

「……ご、め、さ、い」

 歯が折れたのだろうか、男はうまくしゃべれないながらに謝罪の言葉を口にした。

「……ふん。いいか! これが今のきさまらと我々の立場だ。これ以降己の立場をわきまえない者は、この男と同じようになると思っておけ」

 ガードマンの言葉に車内が静まり返る。先ほどのように騒ぎ立てる者はもういなかった。

「わかったら、さっさときさまも席に戻れ!」

 それまで男を痛めつけていたもう一人のガードマンが男を乱暴に蹴飛ばす。当然、弱っている男はそのまま地面へと転がった。そして、そんな彼を誰も助け起こそうとはしなかった。彼に手を貸せば、自分も同じような目にあうのではないかという不安をみな感じていたからである。

「どうした? 席に戻らないということは我々の命令を無視するということか?」

 先程男に暴力をふるっていないガードマンが問いかける。しかし、もはや男には問いかけに答える気力もなかった。

「いかんなぁ。これからきさまは更生をしなければならないというのに。そんな態度ではいつまで経っても更生できる可能性がないではないか」

 饒舌なガードマンは寡黙なガードマンへと視線を移し、無言で促す。

 寡黙なガードマンはゆっくりと男に近づき、再び暴行を加えようとした。だが、ガードマンが暴行を加えるよりも早くにある少年が男を踏みつぶした。

「おらっ! 早く席に戻れっていわれてんだろうが。お前のせいでおれたちに迷惑がかかってんだ。さっさと戻れ!」

 少年はガードマンが男に暴行を加える暇もないほど、男を踏み、蹴りとばした。

「すいません。今すぐこの男を席に戻しますので。おれたちに同じことをするのは勘弁してください」

 媚びへつらうように少年は二人のガードマンに懇願する。

「まあいいだろう。きさまは自分の立場がよくわかっているようだしな。それに、これ以上床をその男の汚い血で汚されてもかなわんからな」

「ありがとうございます」

 少年は笑顔でお礼を告げると、倒れている男の手を掴み、引きずりながら元の席に戻し、その後自分の席へと戻った。

 ほんの数分前の騒々しさは消え、静寂さが訪れた車内で少年は誰にも聞こえないほどの大きさで呟いた。

「くそったれ」
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風邪でダウン。それから……

 二日ほど風邪をひいて寝込みました。

 昔から季節の変わり目には病気にかかっており、今年も例外なく寝込むことに;w;

 熱が下がっても体はだるいので外に出る気は起きず、結果的に暇になったので。

「よし、そろそろオリジナルの小説書こう」

 と、何を思い立ったのか突然小説を書き始めました。

 設定は以前から大分固まっていたのですらすらと書くことができたのですが、書いてる途中に。

「あれ? なんか登場人物の言動や行動がひどい気が……」(差別的な意味で)

 とまあ、まだ書き出しでそんなこと思ってしまったり(-_-;)

 まあ、書いている世界が犯罪者と一般人が同じ場所で暮らしている世界だから、差別とかが起こってもしょうがないんですけどね。

 ひとまず話を四部構成とすると、序章から一章の四分の一くらいまでは書いたので、少しずつ載せながら書きためようと思います。

 普段は忙しいんで、目標は一週間から二週間に一度の更新。

 ちなみに、ハヤテのssも一週間に一度は更新する予定です。……予定にしました。(いつまでも不定期にするのも何なので)

 批評や感想などがありましたら、どんどんおっしゃってください。どんなものでも歓迎です。
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テーマ : 日記
ジャンル : 日記

ハヤテのごとく! ss「黄昏の幻」3

一方ナギはネットでもらったアドバイスを受け、ハヤテが帰ってくるのを再び待とうとした。

しかし、その時間は数秒も必要がなかった。

「あっ!ハヤ太君が帰ってきた」

プールサイドから泉の声が聞こえ、指はナギの後ろを指していた。

ハヤテが帰ってきた。その言葉を聞いた瞬間、ナギの心は安堵に包まれ、心臓は鼓動を早めた。

(よ、よし。ここは笑顔で出迎えて私が余裕なのだということを周りに見せてやろう)

軽く深呼吸をし、笑顔を作るとナギはハヤテの方を振り向いた。

少しずつハヤテの姿が視界に入ってくる。

「ただ今戻りましたお嬢さま」

ハヤテの声も聞こえてきた。ところどころ破れた執事服が見える。そして、黒のドレス。

(――ドレス?)

よく見るとハヤテの横には見知らぬ女性が立っていた。

見るからに育ちの良さそうなお嬢さまであるが、高貴であるというよりはむしろ神々しいという言葉が似合うとナギは思った。

「えっと、ハヤテ。その隣の女は誰なのだ?」

嫌な予感がしつつもナギはハヤテに尋ねた。

「この人が僕の命の恩人で大切な人の天王洲アテネ。それで、こちらが僕の主の三千院ナギお嬢さま」

ハヤテは隣にいるアテネを自分の前に出して紹介した。それにこたえる形でアテネもナギに挨拶をする。

「初めまして、天王洲アテネです。あなたとハヤテのおかげで私は助けてもらえることができました。どうもありがとう」

深く頭を下げお礼を申し上げるアテネにナギはどう応えていいのかわからず、答えを求めてハヤテを見つめる。

ナギの視線に気づいたハヤテはいつものように笑顔を向けた。

「べ、べつにたいしたことはしていない。今回のことはハヤテが望んだことなのだ! ハヤテの一生の願いを主の私が叶えないでどうするのだ」

「でも、私を助けるためにあなたは三千院家の遺産の相続権を失ってしまった」

「む、知っているのか? まあ、確かに三千院の遺産は無くなってしまったが、その代わりにこれからはずっとハヤテが守ってくれると約束をしたからな!」

目を輝かせ、周りに言いふらすように声を響かせるナギ。

「……そう。でも遺産がなくなるということはあなたの住む場所もなくなるのだと思うのだけれど。新しく住む場所のあてはあるのかしら?」

「……う。それはまあ、これから考えるのだ。……主にハヤテが」

「えっ! 僕ですか?」

「そうだ。そもそも今回の件はハヤテが言い出して行ったことなんだから、ハヤテが新しい家も探すのだ。それに私とマリアではあの屋敷以外の家のことはわからん」

「たしかに、お嬢様たちは普通の家について知るはずがありませんよね」

「そうなのだ。だから日本に戻ってからの家探しはハヤテに任せるぞ。私はネットが繋がってさえいれば戦える。繋がる○が私の力だ!」

某有名ゲームのセリフと共にガッツポーズを決めるナギ。

「お嬢さま。それ以上言うと某夢の国の会社の黒服が現れますから、ほどほどに」

「そうだな。つい熱くなりすぎたようだ」

ハヤテとナギの奇妙な掛け合いを見ていたアテネはくすりと笑い、

「ハヤテ、話がそれてるわよ」

ナギの相手をしているハヤテをたしなめた。

「そうだったね」

「えっと、ナギちゃん?」

「ナギでいい」

「じゃあナギ。助けてもらったお礼というには、全然物足りないと思うのだけれど、よかったら私の屋敷で暮さないかしら?」
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今週のサンデー

 こんばんは、建野海です。

 最近忙しかったので、今日ようやくサンデーを読むことができました^^

 ここから先はネタばれの感想になるので、見たくない人はスル―してください。






 以下ネタばれ


ハヤテ

 久々のあずなんたら登場。いや、あまりにも久しぶりすぎて名前を忘れていたとかなんてことはないですよ。

 それにしても、西沢さんがハムスターで向こうはリスか~。相いれないのはきっと同属嫌悪からだと思います。

 プロの漫画家の原稿を見てショックを受けていたナギでしたけれど、自分の作品が全然だめだということに気がつけるようになったなんて、やっぱりナギはハヤテに会って成長したんだな。

 そして、最後のひとコマにはルカの姿が……。

 やっと登場か~って感じです。

 新章に入る際に扉絵でルカの指に絆創膏が張ってあったりしたので、予想としてはまだ絵は未熟だけれど、話の作りはうまい漫画家の卵? かなと考えています。

 あと、ハヤテと同じく借金があるので二人の貧乏ネタがあったり、互いの生きざまに共感して、いい雰囲気になりそうな展開なんかも予想したり……あっ! これはただの妄想か。

 住人が増えていくたびに、ナギと新しい住人たちのハヤテをめぐった修羅場が起こりそうです。(すでに起こったか)

 だけどアーたんが全然出ないな……一番好きなキャラだし、ハヤテとの関わりも見たいから出てほしいな。


 ケンイチ

 アパチャイVSアーガード。

 来週で決着!? らしいです。

 ここ2、3話はケンイチとコーキンの戦いがあまり描かれていないので、早く見たいな。

 気になったのは、今回の話のひとコマでアパチャイが戦ってきた達人らしき人物がシルエットで描かれていたこと。(その一人が長老)
 
 たぶん、修業時代に戦ったマスタークラスの人たちだろうと予想。

 その話もまたいつか描くんだろうか?


 Mixim☆11

 桃子VSアラクネ。

 桃子の勝利という結果に終わったけど、終わりからして再選の予感がする。

 アラクネも以外と人間くさくてなんか憎めないキャラになっちゃった。

 そんななかでも今秋一番思ったのは、

 おやじ動揺しすぎw

 どんだけ子煩悩なんだよ!

 桃子がピンチの時や勝った時の喜びようといったら……

 血はつながっていなくても親子! この人の作品は親子愛がよく描かれてますね。いいことです。

 
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テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

ハヤテのごとく! ss「黄昏の幻」2

アテネ市にある三千院家所有のホテルにて三千院ナギやマリア達はパーティの余韻に浸っていた。

つい先ほどまでの妖怪や霊の類の問題に気が付いていた人たちを除けば、他の人々はホテル側のサービスと受けとっていただけである。中には妖怪に自分の仕事を手伝わせる人までいた。

そして、妖怪が消えた直後に現れた光の雨。幻想的な光景に誰もが目を奪われ、光が消えるとともに、またパーティが再開した。

「そういえば、ハヤテ君はどこに行ったのでしょう?」

ふと、辺りを見渡してハヤテの姿が見当たらないことにマリアが気付いた。

「言われてみれば、たしかにハヤ太君の姿が見えないな」

「ふっ。おおかた夜の街を歩きながらナンパでもしているんだろう。なあ、泉?」

「ふぇっ! ど、どうなんだろうね~?」

話題の張本人がいないのをいいことに、生徒会の3人娘はあれよこれよと想像をしていた。

「ハヤテならちょっと用事があって外に出かけているのだ。なあに、用事がすんだらすぐに私の下に帰ってくると約束をした。だから、もう少ししたら帰ってくるはずだ」

自信満々に胸を張り、周りにハヤテとの約束を自慢するナギ。そして、ナギは自分より少し離れた場所にいる西沢歩(通称ハムスター)をチラリと見た。

「……む。何が言いたいのかな、ナギちゃん?」

「なんだ聞こえなかったのか。ハヤテはここを出て行く前に私の下に帰ってくると約束したのだ。いやぁ~やっぱりハヤテは私にラブラブなんだな」

「それってナギちゃんがハヤテ君の主だからそう言っただけなんじゃないかな? そんな約束だけでラブラブなんて言ってるんだ。それだったら、わ、わたしなんてハヤテ君にキスしちゃったもんね!」

瞬間、周りに衝撃が走った。自信に充ち溢れていたナギは口元が引きつり、泉は驚きふためき、美希と理沙はこの状況をどう煽ろうか考え始め、愛歌は微笑を浮かべて成り行きを見守り、マリアは笑顔のまま固まった。

「な、な、な、なに~! お、お前ついにハヤテのことを食べちゃったのか。この、ハムスターめ!」

「食べたってなによ、食べたって!」

「いったい何時ハヤテにキスをしたのだ! いや、それよりもハヤテは了承していたのか!?」

ナギの問いかけに歩の表情が曇る。

(あれ? 了承はしていないよね? でも、あれくらいの不意打ちはハヤテ君なら避けれただろうし……)

「どうなのだ!?」

「し、してたね! あれはきっと了承してた!」

結局歩は自分に都合のいいようにとらえることにした。

「そ、そんな……」

現場を見ていないナギは歩の言葉にショックを受けていた。地面に座り込んでうなだれ、ピクリとも動く気配がない。

「あ、あれっ? ナギちゃん?」

さすがに罪悪感がわいてきたのか歩はナギを慰めようとした。

「ふ、ふふふ」

歩がナギの肩に手をかけようとしたとき、うなだれているナギから呻き声が聞こえた。

「そ、その程度のことなら私もすでに済ませているからな。べ、べつにハヤテが誰に何しようと気になんてならないぞ。結局ハヤテは私のもとに帰ってくるんだから……さぁてハムスターの相手をするのもつかれたしネットでもしよう」

ナギは、いかにも自分は気にしていないという雰囲気を漂わせて、そのままホテルの中へと戻り、ノートパソコンを開いてネットを始めてしまった。

「あの独占欲が強いナギちゃんが……」

歩はナギのとった行動を見て驚き、茫然と立ちすくんでいた。

「え~っとあれじゃないかな? ナギちゃんもきっと大人になったんだよ」

「本当にそうならいいんですけどね~」

泉の推測を否定するようにマリアは溜息を吐いた。

「それってどういうことですか?」

「う~ん、説明するよりも見た方が早いですよ」

そう言うと、マリアはネットに集中し出したナギの後ろに歩を連れていった。
ノートパソコンの画面にはあるサイトが映し出されていた。


igan 将来を誓い合った男が友人の女とキスしてたんだけど、どう思う?

urataw 浮気報告乙

tama 略奪愛の予感!

igan もうちょっとマジメに答えろ

haru どうにもならん。そんなことより寂しい

igan どいつもこいつも……

oesah マジレスすると気にしないのが一番。本当に将来を誓い合った仲ならきっと戻ってくる。

igan サンクス。とりあえず戻ってくるの待つことにする


(うっわ~ものすごい動揺してるよ。しかも掲示板に書き込んで相談してる……)
(本当に変わらないですねこの子は)

マリアと歩の二人はナギの行動に呆れ、そのまま気づかれないようにその場を去った。
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季節の変わり目


 どうも、建野海です

 ようやく季節が変わり始めましたね。
 
 夏から秋へ、夜は随分と涼しくなりました。

 ほかの地域ではどうなんでしょうか? 少し気になります……

 今年は残暑が厳しく、もしかしたら夏から冬へと一気に変わり、秋がなかったかもしれないと噂されていました。

 地球温暖化とひとまとめにしてしまうのもどうかと思いますが、やはり少しずつ地球も変わってきているのでしょう。

 もしかしたらあと数十年もすれば日本という国からは四季がなくなるのかもしれませんね。(もしかしたら数十年後の人たちも同じことを言っているかもしれませんが(^_^;))

今まで当たり前に存在していたものがなくなってくかもしれないのは何だかさびしい気がしますね。

……なんか年寄りみたいだ

 ま、まだ十代ですよ。まだまだ若いですよ!

 話を戻して、やっぱり時が経てばいろんなものが変わるだろうし、それによって人も変わっていくと思います。なので、気にかかったことや覚えておきたいことは記憶や記録に留めておきたいな~と思いました。

 季節の変わり目の話をするつもりが随分と脱線したな~

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ハヤテのごとく! ss「黄昏の幻」1

※このssの始まりはハヤテのごとく! 25巻の3話からのifの物語です。

「黄昏の幻」


ゴーン、ゴーン、ゴーン。

深夜12時。ほぼ全壊した屋敷の大時計から鐘の音が響く。シンデレラのように魔法にかかった時間は終わりを告げる。

悪夢は去り、残されたのは少年と少女。

「そうね……。これから私に必要なのは……」

覚めない悪夢から目覚めさせてくれた少年、綾崎ハヤテを見つめて天王洲アテネは呟いた。

10年前、互いのすれ違いから離別し、別れた後悔を胸に抱きながら過ごした日々。

風の噂で彼が生きていることはわかったけれども、両親にひどい扱いを受けていることを知った。

いつかきっと、力をつけてハヤテを救ってみせると誓ったはずだった。

しかし10年たった今、ハヤテはアテネではなく別の人物によって救われ、そしてその人物によってアテネもまた救われることになった。

「もうこんなに時間になったんだ」

鐘の音がなったことによって、ようやく今が何時なのかを知ったハヤテは少しだけ心配そうな顔をする。

それを見たアテネは、ハヤテがこれほどまでに心配をするお嬢さまがどんな人物なのかが気になった。

「ねえ、そのお嬢さまってどんな人なの?」

「えっと……。基本的にはいつも怒っているよ」

「えっ! 怒ってる?」

「うん。自分にとって理不尽なことがあると怒って、すぐに拗ねだしたり、なかなか外に出ようとしなくて一日中屋敷にこもってゲームをしている時もあるね」

「……なんだかとても自由なお嬢さまなのね」

「まあ、確かに自由すぎて困ることもちょっとはあるんだけどね。でも、今の僕があるのは全部お嬢様のおかげなんだ。
お嬢さまのおかげでたくさんのことを経験して、たくさんの人と出会って、こうしてアーたんを助けることもできた。
だから、今の僕にとってお嬢さまは……自分の命そのものなんだ」

ハヤテは満面の笑みを浮かべて、断言した。

自分の命そのもの。

ハヤテにとって、そのお嬢さまという存在が他のなにものにも代えがたい存在なのだと。アテネはこの時悟った。

「ハヤテ!」

突然、アテネはハヤテに抱きついた。

状況が飲み込めていないハヤテは戸惑い、どうしたらよいのかわからないようだ。

(ハヤテにとってそのお嬢さまは恩人で、かけがえのない存在で、主だ。
できることならハヤテには私と一緒にずっといてほしい。
そして、もう一度私の執事を……。
でも、そのお嬢さまは私とハヤテのために全財産を投げ捨ててくれた。)

アテネの心は自分の望みとハヤテの主への恩の間で揺れていた。

(ハヤテと別れたくない! でも……)

「アーたん?」

「――ハヤテ、あなたとお嬢さまはこれからどうするの?」

「僕とお嬢さま?」

「そうよ。だって、全財産がなくなったのでしょ? そうしたら住むところもなくなると思うのだけれど」

「どうするのかな? お嬢さまのことだから何か考えているとは思うけれど。もし、考えがなかったとしても僕がどうにかしてみせるよ」

「……そう」

(たぶん、ハヤテのお嬢さまは先のことを考えずに私たちを助けてくれたのよね。だとしたら新しく住む場所なんてまだ考えていないかもしれないかもしれない。)
今回助けてもらった恩をこんなことで返せるとは思わないけど)

「ハヤテ、もしよかったらこの後に私をあなたのお嬢さまに会わせてもらえないかしら?」

「お嬢さまに? いいけれど、どうして?」

「私たちの恩をほんの少しだけ返そうと思ったのよ。さあ、ハヤテ」

アテネは左手でスカートの裾を摘み、右手をそっとハヤテの前に差し出した。

「えっと、アーたん?」

アテネの行動が意図することがわかっていないのかハヤテは瞼を瞬かせていた。

「もう、相変わらず鈍いわね。私をエスコートしなさいと言っているのよ!」
恥ずかしさと照れからアテネの頬は熟れたトマトのように赤く染まっていた。
視線を宙に漂わせながらもチラチラとハヤテのほうを見て答えを待っている。

「……僕で、いいの? だってアーたんにあんなひどいことを言ったのに。
ずっと、ずっと謝りたくて……。でも、会えなくて。こうして助けに来るのも遅れたんだよ? そんな、そんな僕だけどアーたんはいいの?」

今にも泣き出しそうな顔をしながら、ハヤテは尋ねた。

「バカね、そんなこと気にしていないわ。あなたでいいのよ。
……いいえ、あなたがいいのよ。ハヤテ」

アテネの言葉を聞いた瞬間、ハヤテの瞳からはとめどなく涙が溢れだした。服の袖で拭うが、涙はいっこうに止まらない。

「もう、ハヤテは本当に泣き虫ね」

やれやれと呆れたように呟きながらもアテネはポケットからハンカチを取り出し、ハヤテの涙を拭き取った。

数分後、涙の止まったハヤテに右手を差し出しアテネは再び同じ質問をした。

「私をエスコートしてもらえる? ハヤテ?」

「うん! アーたん!」

ハヤテは差し出された手を握り締めた。ハヤテはアテネの半歩前を歩き、自分の主がいるホテルへと向かい始めた。



満天の星空の下、かつて時を止めた黄金の日々が再び時を刻み始める。


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こねこ時計 ver.3

CATS
Sweets

プロフィール

建野海

Author:建野海
扉の中の部品たちへようこそ。

名前:建野海

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好きな食べ物: 和菓子、洋菓子などデザート類。

趣味: 読書、ツーリング、ゲーム、ピアノ、映画鑑賞。

好きなマンガ:
ワールドエンブリオ
修羅の門
     3月のライオン
     エリアの騎士
     フルーツバスケット

好きな小説:ダレンシャン
      白夜行
      スロウハイツの神様
      向日葵の咲かない夏
      白い巨塔など。

好きな映画:プラダを着た悪魔
      ワイルドスピード
      僕駐
      インセプションなど。

好きなゲーム:キングダムハーツ
       テイルズ
       ルーンファクトリー
       ゼルダの伝説など

好きなアーティスト:福山雅治
          宇多田ヒカル
          UVERworld
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